顔面神経線維が血管によって圧迫, 障害され, 神経細胞の機能不全をおこすと, シナップス結合している介在ニューロンの抑制機能が消失する。筋電図検査により大型の運動単位電位 (motor unit potential : MUP) 及び同じ筋肉内の離れた場所あるいは別の筋肉から同型の運動単位電位が同時に発射することが予測される。
同心型針電極を2本使用し, うち1本は眼輪筋の下眼瞼内側に固定し, もう1本は下眼瞼外側, あるいは上眼瞼, あるいは大頬骨筋と位置をかえてから測定した。痙攣発作のおこっていないときに軽い閉眼をさせ徐々に強く収縮させる。正常の神経細胞が活動を開始する一歩手前の瞬間を狙って測定し, 低い閾値に反応する病的な運動単位電位を検出した。いずれの症例からも高振幅電位 (giant spike) 状の大型運動単位電位が記録された。8例で完全な, 2例に不完全なほぼ同時発射が記録された。この結果より考えてこれまで神経細胞の周囲や同一筋内の離れた場所, さらに別の筋肉や拮抗筋に対して抑制をかけ入力の増大に合わせて秩序ある調整をしていた。しかし介在ニューロンの機能が障害されると, 全ての入力に対し最も低い閾値で, コントロールを失ったすべての正常神経細胞が同時発射する。これが痙攣及び病的共同運動のメカニズムと推測された。
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