現成サンゴ礁の堆積構造と地表形態の発達過程を理解するために, 琉球列島与論島の現成サンゴ礁について, 地形学的観察, 潜水調査, 音響測深および多孔浅層ボーリングなどの野外調査と採集試料の堆積学的分析と放射性炭素年代測定を行なった. 現成裾礁は岸から海に向かって, 砂浜または石灰岩の海食崖, 礁池, 礁嶺, 縁溝-縁脚系, 礁斜面の順に配列し, 顕著な地形的帯状構造を示す. 現成サンゴ礁での浅層ボーリングにより採集した試料の堆積物とサンゴ化石の分析により, 現成サンゴ礁の構成物は礁嶺相, 礁舗相, 生物砕屑相, 礁池層の4つに区分される. 礁嶺相と礁舗相は現成サンゴ礁の堅固な枠組みを作り, 未固結の生物砕屑相の上に堆積している. 与論島の礁嶺は完新世中期以降における安定した海面に対応して, 海面下3m付近から海面に向かって5,260年前から3,230年前にかけて形成された. 礁嶺の背後の礁舗はこの時期に礁池に向かって幅を広げた. 3,230年前以降, 礁嶺は縁溝-縁脚系を形成しながら海側にも幅を広げた. これらの結果は与論島の現成裾礁の地形的帯状構造が最近の5,000年間に形成されてきたことを示している.
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