分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
誘導結合プラズマ質量分析法による高純度鉄中の微量高融点金属元素の定量
井出 くに和中村 佳右長谷川 信一山口 仁志
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2003 年 52 巻 10 号 p. 931-937

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抄録

誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)による高純度鉄中の微量高融点金属元素(Ti,V,Zr,Nb,Mo,Ta)の定量について検討した.マトリックス分離法はクペロン共沈分離法の再沈殿操作とその最適条件について検討し,高純度鉄マトリックスから微量高融点金属元素を分離した.更にこの分離条件とICP-MSの測定条件等について検討し,これらを適用して確立した分析法は以下の方法である.高純度鉄1 gに150 cm3の塩酸(1+4)を加え,453 Kのホットプレート上で分解した.試料溶液を室温に冷却した後,アスコルビン酸溶液及びクペロン溶液10 cm3を添加し,ろ別した.ろ紙及び沈殿物を硝酸10 cm3及び過塩素酸10 cm3で分解し,蒸発乾固した.塩を塩酸(1+4)150 cm3で溶解した後,上記の操作を再度行った.塩を硝酸2 cm3で溶解して蒸発乾固し,更にこの操作を3回行った後,塩を硝酸(1+100)で溶解して試料溶液とし,ICP-MSで測定した.
検討した再沈操作の導入により,鉄マトリックス濃度は再沈殿操作の適用前と比べて半減しかつ一定であり,ICP-MS定量に適用できた.また,硝酸処理操作を加えたことにより,質量数90におけるバックグラウンド信号強度が著しく低下し,この位置における測定を可能にした.測定元素の回収率はTi: 99,V: 95,Zr: 98,Nb: 98,Mo: 96,Ta: 96% であった.検出限界は,Ti: 0.08,V: 0.009,Zr: 0.01,Nb: 0.008,Mo: 0.01,Ta: 0.004 ng cm-3であった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2003
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