分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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報文
  • 上本 道久
    原稿種別: 報文
    2019 年 68 巻 7 号 p. 457-464
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    アルミニウムの水平リサイクルに向けて,可搬型(ハンドヘルド型)蛍光X線分析装置によるアルミニウム展伸材合金の分析及び合金種識別について検討した.まずアルミニウム合金の標準物質を用いて装置の能力を評価して,分析値の信頼性向上に向けた装置仕様のアップデートを実施した.次にアルミサッシスクラップを用いて,混在する合金種の相互識別が可能か検討した.更にリサイクル企業のスクラップヤードに出向いて,雑多な展伸材スクラップの識別に本法がどの程度有効か検証した.純アルミニウムに近い組成の合金では誤識別が時折生じたものの,本研究で用いたHXRFはアルミニウム展伸材合金の相互識別に有用であり,現場で使用するためのロバストネスも備えており実際のスクラップに適用可能であることが分かった.今後,試料の不整形状や表面状態ごとの細かな測定条件を検討して識別効率を向上させることにより,破砕やソーティングを伴わない新しいリサイクリングプロセスを提案することが期待できる.

  • 村居 景太, 本多 宏子, 奥村 浩, 岡内 俊太郎
    原稿種別: 報文
    2019 年 68 巻 7 号 p. 465-472
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    市販のシリンジフィルターを前濃縮のための抽出デバイスとして利用する手法を設計し,水試料中の微量ヒ素(III, V) を現場で比色定量する方法を開発した.ヒ素を,チオ硫酸ナトリウム及びピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウムと反応させて疎水性のヒ素(III) 錯体としたのち,手動での加圧ろ過によってシリンジフィルター上に捕集した.これを溶離するため,硫酸酸性で過マンガン酸カリウム,モリブデン(VI) 及び銅(II) を含む少量の溶離液を当該フィルターに通液した.すなわち,捕集されたヒ素がモリブドヒ(V) 酸として溶離したので,溶出液にスズ(II) を添加してモリブデン青を生成させ,目視比色法あるいは吸光光度法で検出した.シリンジフィルターは抽出デバイスとして利便性が高く,現場分析に適していた.フィルターの材質はガラス繊維が最適であり,小さい圧力損失で定量的な回収率が得られた.試料水量を30 mL,溶離液量を1.7 mLに設定し,12分間の全所要時間で環境基準0.01 mg L−1が判定可能であった.本法を土壌浸出水試料に適用し,ICP-AESと比較して良好な結果を得た.

技術論文
  • 森川 剛, 﨤町 美穂, 田村 和季, 守岩 友紀子, 東海林 敦, 岡澤 香津子, 柳田 顕郎
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 68 巻 7 号 p. 473-481
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    医療機関における血中薬物濃度定量に基づく治療薬物モニタリング(TDM)の実施は,投与された薬物の治療効果や副作用を見極めるうえで重要であるが,その定量分析法は薬物ごとに異なり,複雑な前処理や特殊な試薬・機器類が必要な手法も多いため,医療機関内でのTDMの実施は決して容易な業務ではない.今回著者らは,多品目の薬物に対して,ほぼ同一手順の前処理操作と単一装置でのHPLC分析を行う,迅速で実用的な血中濃度定量法を考案した.具体的には,まず薬物ごとに,遠心用スピンカートリッジを用いる前処理(固相抽出)条件と,逆相HPLC/UV検出条件を最適化した.さらに,各薬物添加血清を用いて上述の前処理とHPLCを行い,血清からの薬物回収率を補正したうえで,薬物標準液を用いる絶対検量線法に基づく定量法として最適化した.本法は15品目の薬物の血中濃度定量に適用でき,各薬物の定量下限値は0.1〜1.5 μg mL−1の範囲であった.各薬物の治療有効濃度領域内での定量バリデーションも良好であり,本法は,病院の常勤スタッフ(臨床検査技師や薬剤師)が日常的に実施する院内測定法として有用と考えられる.

  • 竹井 千香子, 吉沢 賢一, 中村 清香, FOUQUET Thierry, 佐藤 浩昭
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 68 巻 7 号 p. 483-490
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    潤滑油は基油と種々の添加剤で構成され,組成分析には複雑な前処理が不可欠なため膨大な労力と時間を要する.昇温加熱デバイスを備えたDirect Analysis in Real Time (DART)-MSを用いて劣化潤滑油を分析したところ,前処理をせずに潤滑油中の添加剤と基油を検出できた.低温側(340℃ 以下)では,粘度調整剤や酸化防止剤と思われる添加剤成分が検出された.それらの残存量を指標とすることで潤滑油の劣化を簡易に評価することができた.高温側(380℃ 以上)では主に基油が観測されたが,そのマススペクトルは非常に複雑であった.そこで,基油の組成変化をKendrick mass defect(KMD)プロットにより二次元マップで表現した.KMDプロットによりエチレンオキシド系化合物も検出され,エンジンルーム内からの汚染が考えられた.このように,昇温加熱デバイスを備えたDART-MSによる測定は,潤滑油の迅速劣化評価に有効な手段であることが示された.

  • 古山 彰一, 藤島 政樹, 竹内 克輝, 永井 孝, 奥村 浩
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 68 巻 7 号 p. 491-496
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    比色法を用いた水質調査をより簡便にするために,スマートフォンなどのスマートデバイスのアプリケーションを含めた人工知能による濃度判定を行うシステム開発を行った.色の同定,濃度算出に人工知能技術を利用することで,外光などを遮断するための冶具と色彩—濃度検量線の作成を不要とした.また,個々のスマートデバイス上で濃度測定を行うのではなく,ネットワーク上に構築した人工知能サーバによって濃度判定を行うこととした.このことで個々のデバイスにインストールされるアプリケーションの機能を最小限とし機種依存性を極力排除することを試みた.さらに観測位置情報も同時に取得・保存することで,広域環境調査に有効な水質測定システムになりうる可能性を示した.

  • 山本 和子, 坂元 秀之, 白崎 俊浩
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 68 巻 7 号 p. 497-504
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    キレート樹脂固相抽出(キレート樹脂SPE)法を用い,ばいじん溶出液中の3価クロム{Cr(III)}と6価クロム{Cr(VI)}を分別し,原子吸光分析により定量する方法を検討した.キレート樹脂を充填したSPEカラムであるNOBIAS Chelate-PA1を硝酸鉄(III) 溶液で処理し,これにばいじん溶出液を通液した.ばいじん溶出液中のCr(III)はSPEカラム中に捕捉され,Cr(VI)はSPEカラムを通過することにより,Cr(III)とCr(VI)の定量的な分別が可能となった.本前処理法を用いると,ばいじん溶出液をキレート樹脂SPEカラムに通液するだけで,簡便かつ短時間に前処理を完結することができた.Cr(VI)の測定方法として広く用いられているジフェニルカルバジド(DPC)吸光光度法において,発色阻害があり測定が困難なばいじん試料についても,溶出液のpHを10.7以上に調整することにより本法を適用できた.

  • 田村 耕平
    原稿種別: 技術論文
    2019 年 68 巻 7 号 p. 505-512
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    赤外(Infrared, IR)分光法やラマン(Raman)分光法といった振動分光学的手法は,これまで定性・定量分析に幅広く用いられているが,分析は専ら据え置き式の装置によって研究室や分析室などのラボレベルで行われてきた.しかし,近年では分析ニーズが多様化し,工場内や屋外といった現場においても試料を高精度に測定できることが求められるようになってきた.著者らはこうしたニーズに応えるべく,据え置き式の装置と同程度の性能を維持しつつも,システムの小型化・ブロック化によって拡張性を向上させたフーリエ変換赤外分光光度計(Fourier Transform Infrared Spectrometer, FT-IR)及びラマン分光光度計を開発した.これにより,現場測定や目的別専用システムを容易に構築・提供可能となった.本論文では,現場測定に対応したFT-IR及びラマン分光光度計の概要を報告するとともに,実際に分析を行った事例についても報告する.

ノート
  • 伊藤 秀和, 阪中 達幸
    原稿種別: ノート
    2019 年 68 巻 7 号 p. 513-517
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    When the lycopene content in tomatoes and related products was evaluated rapidly, the samples had been crushed with water, and we had measured the visible spectra. In addition, the crushed tomatoes and related products have been treated separately. In this paper, to develop a rapid determination method of lycopene in tomatoes and related products, tomatoes are crushed using a mixer (tomato products without crushing) and the visible spectra measured without dilution; both samples were treated together for data analysis. Then, a calibration sample set (n = 29 (tomatoes = 19, tomato products = 10)) gave a coefficient of determination of 0.97 with two independent variables, absorbance at 594 and 740 nm. When the calibration was applied to unknown samples, a prediction sample set (n = 41 (tomatoes = 38, tomato products = 3)), it gave a root mean square (RMS) value of 1.05 mg 100 g−1. Therefore, crushed tomatoes and related products can be used to determine the lycopene content rapidly without dilution and each grouping.

アナリティカルレポート
  • 赤城 沙紀, 阿部 善也, 和泉 亜理沙, 平山 愛里, 村串 まどか, 中井 泉, 下山 進
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2019 年 68 巻 7 号 p. 519-525
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    A portable spectrometer capable of measuring both an ultraviolet-visible absorption (UV-vis) and a fluorescence emission spectrum was developed with the aim of nondestructive onsite analysis of be the cultural heritage and artwork. To demonstrate the availability of the spectrometer, we brought it to Hokusai Museum to carry out the analysis of original drawings by Katsushika Hokusai (1760-1849), a Japanese Ukiyo-e painter and printmaker of the Edo period. His two drawings, “Waves” and “Chrysanthemums”, were investigated by means of the UV-vis/fluorescence spectrometer together with portable instruments of other analytical techniques (X-ray fluorescence spectrometry, X-ray powder diffractometry, and micro Raman spectroscopy), in the nondestructive manner. As the results, UV-vis and fluorescence emission spectra revealed that Hokusai had used several kinds of organic pigments and dyes in these two paintings. Generally, it is difficult to identify these organic painting materials by X-ray analytical techniques. Our analytical results demonstrated that Hokusai had created beautiful and deep colors in drawings by a mixing or a recoating of various pigments and dyes such as indigo, laccaic acid, safflower.

  • 古川 浩司, 橋本 真, 萩尾 珠世, 本澤 大生, 大谷 美怜, 三枝 景子, 浅井 智紀, 船倉 洋, 佐々野 僚一, 金子 聡
    原稿種別: アナリティカルレポート
    2019 年 68 巻 7 号 p. 527-536
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル フリー

    A fully automated system has been developed by our research group for the solid-phase extraction, desorption and GC/MS measurement of water samples. In the present work, the validity for the determination of simazin and thiobencarb in environmental water samples using a fully automated online SPE-GC/MS system was investigated. Calibration curves of simazin and thiobencarb demonstrated good linearity in the range of 0.30–5.0 μg L−1. The repeatability in the case of the on–line coupling system of automatic SPE with GC/MS was studied, and the relative standard deviations (RSDs) in the case of aqueous solutions of simazine and thiobencarb solutions (0.3 μg L−1) were 4.4 % and 4.5 % for seven measurements. The method was applied to the determination of simazine and thiobencarb in river and sea waters. Environmental water samples were spiked with 1.0 μg L−1 for evaluating the recovery. The recovery for the spiked amount was in the range of 96.2–107 %. The present system was considered to be satisfactorily for the determination of simazine and thiobencarb in environmental water samples.

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