分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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総合論文
  • 三宅 司郎
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 69 巻 6 号 p. 237-245
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    抗原−抗体反応を用いる分析技術は,医学や生命科学において目覚ましい発展を遂げた.しかし食品中の農薬やカビ毒といった疎水性の低分子化合物については,タンパク質である抗体が有機溶媒の影響を受けやすいため実用化が進まなかった.著者らは,これらの化合物を対象に抗体を作製し,分析技術への応用を試みた.その結果,モノクローナル抗体の一部に有機溶媒耐性を見いだし,残留農薬測定用のELISAやカビ毒クリンアップ用のイムノアフィニティーカラムを開発した.さらに,表面プラズモン共鳴イムノセンサの導入により,ELISAでは困難だった農薬の多成分同時分析法を確立した.その後,このイムノセンサを用いて大腸菌O抗原の検出を試みたが,O抗原がセンサ上の抗体と多点で結合するため信号検出後の菌の除去が困難だった.著者らは,従来法から視点を変えたゲルによる物理的な方法で菌を除去し,抗体の機能を維持したセンサの再生に成功した.この方法は,動物細胞の検出と再生にも応用できた.

  • 山本 保
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 69 巻 6 号 p. 247-256
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    アルゴンなどのプラズマガスを使用しない液体電極プラズマ(LEP)を活用したプラズマ発光分光方式の小型元素分析装置(LEP-AES)を開発した.LEPは,電解質試料溶液を満たした微細流路の両端に高電圧を印加することによりプラズマを発生するもので,このプラズマを励起源として発生した原子発光を小型分光器で分光分析する.LEP-AESは,誘導結合プラズマを用いる従来法では必須のプラズマガス,排気設備,専用電源が不要であり,新規ユーティリティーを追加することなく既存施設に設置可能であるとともに,携行・可搬が可能であるためオンサイト分析に適用可能である.また,小容量の試料溶液で測定が可能であるため,前処理に必要な試薬の量と発生する廃液の低減が可能で,グリーンケミストリーに貢献可能な元素分析装置である.本稿ではLEPの研究及びLEP-AESの開発経緯と機能をまとめ,LEP-AESのオンサイト分析への適用例に関しても併せて報告する.

  • 手嶋 紀雄, 村上 博哉, 酒井 忠雄
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 69 巻 6 号 p. 257-269
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    流れ分析法とは,連続流れ分析(Continuous Flow Analysis, CFA)法に加え,フローインジェクション分析(Flow Injection Analysis, FIA)法とFIAから派生したシーケンシャルインジェクション分析(Sequential Injection Analysis, SIA)法,ストップトインループ流れ分析(Stopped-in-Loop Flow Analysis, SILFA)法,同時注入迅速混合流れ分析(Simultaneous Injection Effective Mixing Flow Analysis, SIEMA)法などの総称である.これらのうちFIA法とCFA法は,2011年にJIS K 0170-1〜9「流れ分析法による水質試験方法」としてアンモニア体窒素,全窒素,フェノール類などの環境指標項目の個別規格に採用され,2014年に改正環境省告示に採用されるに至った.一方JIS K 0126「流れ分析通則」の適用範囲は,FIA法とCFA法に限定されていたが,同通則が2019年に改正・公示され,SIA法が追加規定された.このような一連の標準法化は,流れ分析法が産業を支える分析技術として認識されている証である.本稿では,著者らが最近取り組んできているJIS化・公定法化を指向した排水,飲料水,環境水中の環境指標物質の流れ分析法(FIA,SIA,SILFA,SIEMA)に関する研究成果を紹介する.

  • 梅林 泰宏, 荒井 奈々, 渡辺 日香里
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 69 巻 6 号 p. 271-278
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    リチウムイオン電池の開発に対してノーベル賞が授与されたものの,自動車や再生エネルギーの電力貯蔵に用いるには,さらにエネルギー密度を高めた次世代蓄電池の開発が急務となっている.その一つとしてリチウム─硫黄電池が期待されている.リチウム─硫黄電池の実現には,電解液の開発が行方を握っている.電解液中のリチウムイオンの局所構造や電解液の液体構造は,起電力や充電の速さなど電池性能に直接影響を与える.言い換えると熱力学的にだけでなく,速度論・ダイナミクスの点でも電池性能を支配している.最近,正極不溶性の電解液を用いる新たなリチウム─硫黄電池が提案され,原子・分子レベルで電解液を明らかにすることが重要な役割を持つ.本稿では,正極不溶性の電解液である溶媒和イオン液体について,液体構造やスペシエーション分析,溶媒和イオン液体に特異的な新たなイオン伝導機構について概説する.

報文
  • 土井 崇嗣, 天野 良洋, 海野 晶浩
    原稿種別: 報文
    2020 年 69 巻 6 号 p. 279-290
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    絶縁ワニス中のポリエステルイミドの化学構造の差異が焼付後のエナメル皮膜表面硬さに与える影響を考察した.ワニス作製条件や皮膜焼付条件,従来の機械的特性・熱特性評価で可とう性等の物性が同等であるマグネットワイヤでも,ナノインデンテーション法では皮膜表面硬さが異なることを明らかにできた.また焼付前のポリエステルイミドワニスをアセトニトリルで溶媒抽出し,アセトニトリル可溶分及びアセトニトリル不溶分を液体クロマトグラフ─質量分析計(LC-MS),核磁気共鳴分光分析装置(NMR)で分析した.その結果,アセトニトリル可溶分に含まれる,エステルイミド等の低分子量成分の割合及びアセトニトリル不溶分ポリエステルイミド末端エチレングリコールユニットの割合が,皮膜表面硬さに影響を及ぼしている可能性を見いだした.これらの結果から,表面硬さをコントロールするために,ポリエステルイミドの化学構造の分析が必要であることを示した.

  • 鈴木 清一, 山本 喬久, 小林 泰之, 井上 嘉則, 吉川 賢治, 遠山 岳史
    原稿種別: 報文
    2020 年 69 巻 6 号 p. 291-298
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    強酸性陽イオン交換樹脂を充填した中和デバイスを用いるインライン中和─イオンクロマトグラフィーの構築を行い,高濃度水酸化ナトリウム溶液中の陰イオンの定量に応用した.25%w/v水酸化ナトリウム20 μLを注入して求めた中和デバイスにおけるナトリウムイオン除去率は99.99% 以上であった.中和デバイス通過溶液中の陰イオンを濃縮カラムで濃縮後,イオンクロマトグラフィーにより測定した.本法における塩化物イオンの検出限界(S/N=3)は0.19 μg L−1,定量下限(S/N=10)は0.63 μg L−1であった.本法を用いて試薬水酸化ナトリウム溶液(濃度: 48%w/v)を測定したところ,塩化物イオン,塩素酸イオン及び硫酸イオンが検出され,繰返し再現性(RSD, n=3)は3成分とも1% 以下であった.本法を工業用水酸化ナトリウム溶液(濃度: 48%w/v)中の陰イオンの定量に応用したところ,塩化物イオン,塩素酸イオン及び硫酸イオンを繰返し再現性1% 以下,添加回収率は101.1〜102.6% と安定して定量可能であった.

技術論文
  • 安藤 貴洋, 平野 匡章, 石毛 悠, 足立 作一郎
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 6 号 p. 299-304
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    創薬分野,診断分野をはじめとして,分析対象とするサンプル量の微量化が年々進んでいる.血液のような限られた量のサンプルから正確に成分濃度を分析するためには,溶液を精度よく分けて試薬等と混合する技術が求められる.本研究では,高精度ニッケル電鋳パイプを分注チップに用いた定容積式の液体ハンドリング技術を開発し,10 μL程度の血液一滴から多項目の成分濃度分析ができるかどうかを調査した.電鋳パイプの内径精度を製作公差±0.7 μmに抑え,電鋳パイプ端面に対して酸処理によって表面微細構造を形成し液離れ性を向上させたところ,0.1 μL分注時の変動係数は0.70% となり高精度分注を実現した.さらに,動物血清を反応容器に0.2 μLずつ分注し,グルコースとコレステロールの成分濃度を測定したところ,変動係数はそれぞれ2.38% と1.45% と高い分析精度であった.以上から,電鋳パイプを用いた液体ハンドリング技術により,血液一滴からの多項目分析が行える可能性が示された.

  • 鈴木 清一, 山本 喬久, 小林 泰之, 井上 嘉則, 吉川 賢治, 遠山 岳史
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 6 号 p. 305-310
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    重金属イオンを高濃度に含む試料中の微量陰イオンの定量を目的として,陽イオン交換樹脂を充填した金属除去デバイスを結合したイオンクロマトグラフの適用性評価を行った.本システムを用いて,塩化コバルト六水和物及び酢酸亜鉛二水和物中の陰イオンを測定した.試薬塩化コバルト六水和物から臭化物イオン,硝酸イオン及び硫酸イオンが検出され,定量値はそれぞれ14.4 μg L−1,8.35 μg L−1及び20.0 μg L−1であった.定量値の相対標準偏差(RSD,n=5)はそれぞれ1.51%,1.85% 及び1.09% であった.一方,酢酸亜鉛二水和物では残存陰イオン濃度が低いために定量することはできなかったが,添加回収率は良好であった.本システムは,金属塩試薬やめっき液等の重金属イオンを高濃度に含む試料中の陰イオンの定量法として有用である.

  • 村居 景太, 本多 宏子, 岡内 俊太郎
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 6 号 p. 311-316
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    硫酸バリウムの沈殿析出時に液中に過マンガン酸イオンが共存すると,硫酸バリウムと混晶を生じて沈殿が紅色を呈する現象が報告されている.これを応用し,水試料中の硫酸イオンを目視比色法によって現場で簡便に定量する方法を開発した.試料水1.5 mLにあらかじめ過マンガン酸カリウムを添加し,続いて塩酸酸性下で塩化バリウムを添加して硫酸バリウムの着色懸濁物を析出させた.さらに還元剤としてアスコルビン酸を添加して母液中に残存した過剰の過マンガン酸イオンを無色化すると,懸濁物の色調が観測可能となり硫酸イオン濃度に依存して懸濁液が紅色の濃淡変化を呈した.あらかじめ作成した標準色列との目視比色により,現場における1分間以内の操作で硫酸イオン濃度50〜2000 mg L−1の概略値が判定可能であった.本法を生物脱硫装置より採水した実試料に適用し,当該装置の運用管理に資する良好な結果を得た.

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