抄録
液体イオン化(LI)質量分析法による先天性代謝異常症患者の尿の分析で,試料に硝酸を添加して測定する方法が,尿中有機酸の検出に有効であることを明らかにした.例えば,メチルマロン酸血症の場合では,メチルマロン酸ピークの検出感度が,前処理なしの直接測定に比べて10倍以上向上した.高乳酸血症の場合,直接測定では乳酸のアンモニウム付加イオンが生成するが,硝酸添加により乳酸のプロトン化分子が明りょうに観測できるようになった.フェニルケトン尿症では,病気由来のフェニルアラニンとその代謝産生物のフェニル酢酸が同時に観測された.試料に硝酸を添加するだけで,有機酸やアミノ酸を同時に分析できるので,LI法は,先天性代謝異常症のスクリーニングや診断に有用と考えられる.