日本消化器内視鏡学会雑誌
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非接触レーザー照射法による局所温熱療法の基礎的検討
―ヌードマウス移植腫瘍における温度分布および抗腫瘍効果について―
平井 信二樫村 博正中原 朗福富 久之大菅 俊明崎田 隆夫
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1987 年 29 巻 10 号 p. 2141-2151

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抄録

経内視鏡的非接触レーザー照射法による局所温熱療法の可能性を検討する目的からヌードマウス移植腫瘍を用い,その温度分布および抗腫瘍効果について基礎的検討を行った.レーザーは,Argonレーザー,Argondyeレーザー,Nd-YAGレーザーの3種を使用し,それぞれについて比較検討した.表面温度は赤外線サーモグラフィーで,深部温度はAuメッキサーミスターで測定した.径約1cmに発育した移植腫瘍の温度分布についてみると,レーザー照射時の深部加温効率は,Nd-YAGレーザーが最も優れており,表面中心温度46℃で深部温度を42℃以上に保つことが可能であった.次に,ヌードマウス移植腫瘍に対して,Nd-YAGレーザーによる局所温熱療法を施行し,その抗腫瘍効果を経時的に検討した.まず,温熱療法単独群,MMC単独群,MMC+温熱療法併用群に分け,それぞれを対照群と比較検討した.温熱療法群の腫瘍の表面中心温度は,赤外線サーモグラフィー下で,約46℃に30分間保持した.治療後の平均腫瘍体積は,1週間で最小となり,対照群を100%とすると,MMC単独群58.2%,温熱療法単独群32.1%,MMC+温熱療法併用群13.9%であった.温熱療法後の組織学的変化は,腫瘍の疑固壊死が主体であり,また腫瘍周囲の栄養血管の損傷も著明であった. 以上の基礎的検討から,レーザー局所温熱療法が,消化管の悪性腫瘍に対する有効な治療手段の一つになり得る可能性が示唆された。

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