日本消化器内視鏡学会雑誌
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理事長就任挨拶
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総説
  • 菊池 大輔, 鈴木 悠悟, 布袋屋 修
    2026 年68 巻7 号 p. 1277-1288
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/21
    ジャーナル 認証あり HTML

    咽頭の内視鏡観察はハイリスク症例を重点的に観察するべきである.咽頭領域は舌や喉頭などにより複雑な形態であり,一視野で全体を観察することは難しい.決められた部位を毎回撮影する定点的観察法を行うことが重要である.観察のための手技も他の臓器とは異なり,発声やバルサルバ法などを駆使して,粘膜面をくまなく観察することが必要である.内視鏡像は表在食道癌と類似しており,画像強調内視鏡と拡大内視鏡で診断をすることができる.

    内視鏡治療の際に全身麻酔をかけると筋肉が弛緩し視野が取れなくなる.直達喉頭鏡や開口器などのデバイスを用いて内視鏡視野を確保する.ESDなどの様々な内視鏡治療が開発され,高い一括切除率と安全性が報告されている.

    内視鏡治療後は,リンパ節転移と異時発癌のリスクの両面を考えてサーベイランスを行うことで極めて良好な治療成績が期待できる.本稿では咽頭領域の内視鏡診断と治療の現状について解説する.

  • 卜部 祐司, 岡 志郎
    2026 年68 巻7 号 p. 1289-1296
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/21
    ジャーナル 認証あり HTML

    Serrated polyposis syndrome(SPS)は鋸歯状病変を多発する症候群であり,大腸癌の高リスク群として国際的に注目されている.診断基準は2010年にWHOで初めて明文化され,2019年改訂により小型病変や直腸主体例の除外,家族歴基準の削除などが行われ,臨床的妥当性が高まった.SPSの病因はring finger protein 43変異などの遺伝学的背景,CpG island methylator phenotypeを介したエピジェネティクス異常,腸内細菌叢や生活習慣因子などが複雑に関与する多因子性と考えられる.臨床的には高率に大腸癌を合併し,径5mm以上の病変切除と1〜3年毎のサーベイランスが推奨される.発癌経路にはserrated pathwayに加えadenoma-carcinoma sequenceの関与も指摘される.今後は大腸以外の悪性腫瘍リスク,家族性発症の実態,遺伝学的背景の解明とともに,本邦独自のサーベイランス体系の確立と国際的診療指針の調和が課題である.

症例
  • 榎本 祥吾, 林 大樹朗, 塩沢 昌大, 安部 太智, 山田 政伸, 牧野 成彦, 長谷川 一成, 竹内 真実子
    2026 年68 巻7 号 p. 1297-1304
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/21
    ジャーナル 認証あり HTML

    糞線虫症はStrongyloides stercoralisによる消化管寄生虫感染症である.通常は無症状であるが,ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)重複感染患者や免疫抑制状態の患者では,播種性糞線虫症と呼ばれる病態となる.症例は63歳男性,肺癌に対し化学放射線療法を施行されていた.脱力を主訴に救急搬送され,敗血症性ショックとして抗菌薬治療を開始した.経過中に黒色便を認めたため,上部消化管内視鏡検査を施行した.十二指腸に浮腫状粘膜を認め生検を施行したところ糞線虫体を認めた.HTLV-1の重複感染や,抗癌剤の使用に伴う免疫抑制状態により糞線虫の過剰感染状態となっていると考えられた.播種性糞線虫症の診断でIvermectinの投与を開始後に状態が改善し,生存退院となった.

  • 堀内 英和, 奥本 和夫, 花谷 拓海, 秋葉 昭多郎, 八戸 茂美
    2026 年68 巻7 号 p. 1305-1310
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/21
    ジャーナル 認証あり HTML

    症例は80歳男性.突然の血便を主訴に救急搬送された.造影CTでは消化管に出血源を認めず,出血性直腸潰瘍を疑い前処置後に大腸内視鏡検査を行ったが出血源を特定できなかった.第8病日に再度血便によるショック状態となり再度大腸内視鏡検査を施行し,肛門歯状線直上の直腸Rbに拍動性露出血管を認めHSE局注とクリップで止血した.Dieulafoy型急性出血性直腸潰瘍は出血性ショックによる血圧低下時や止血状態では発見が難しいことがあり,内視鏡観察時の良好な視野確保や止血方法の選択に工夫と注意を要する.

  • 林 大智, 村田 淳, 荻山 秀治, 福嶌 裕子, 島越 洋美, 天野 孝広, 古田 訓丸, 小来田 幸世, 石田 永, 尾下 正秀
    2026 年68 巻7 号 p. 1311-1316
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/21
    ジャーナル 認証あり HTML
    電子付録

    82歳男性.6カ月前に他院で内視鏡的採石歴あり.発熱と肝酵素上昇にて当院紹介後,胆管炎の再燃と診断し入院となった.CT,MRIおよび腹部超音波検査でびまん性かつ均一な総胆管壁の肥厚を認めた.IDUSでは,胆管内腔に同心円状で高輝度エコー像を呈する構造物を認めた.胆管壁からの擦過細胞診は陰性,生検組織診では間質へのリンパ球浸潤がみられるのみで悪性所見はなかった.後日の再検でも同様であり,採石用バルーンを用いて排出を試みたところ生存虫体が摘出された.虫体は23mm大で褐色調・木の葉様形態を呈し,虫体の鑑識および血清学的検査で肝蛭虫体と診断した.IDUS像が特徴的で内視鏡的に虫体摘出を行った症例の報告は少なく貴重である.

注目の画像
手技の解説
  • 壷井 章克, 岡 志郎
    2026 年68 巻7 号 p. 1319-1329
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/21
    ジャーナル 認証あり HTML

    小腸カプセル内視鏡(capsule endoscopy:CE)はカプセル型の内視鏡を嚥下するだけで小腸粘膜の観察が可能であり,侵襲性の低さと診断精度の高さから,小腸出血疑い(suspected small bowel bleeding:SSBB)に対して広く施行されている.2021年1月にカプセル内部に4台のカメラを有し,視野角が360°である全周視野CEであるCapsoCam Plusが本邦で使用可能となり,CEの選択肢が広がった.広範囲の視野角に加えて,CE内部にフラッシュメモリを有し,画像の送受信を必要としないため,従来のCEと比較し長時間の駆動が可能であることが特徴である.ただし,CE内部のフラッシュメモリにすべて画像が保存されるため,画像の読影にはCEの回収が必要不可欠である.現在使用可能なCEの使い分けについては,今後さらなる症例の集積が必要である.

  • 港 洋平, 大圃 研
    2026 年68 巻7 号 p. 1330-1338
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/21
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    電子付録

    近年,ESD後粘膜欠損部閉鎖にはクリップを用いた縫縮だけでなく,様々な創閉鎖・縫縮技術が報告されているが,未だ標準的な方法は確立していない.特に大きな粘膜欠損や,胃のような壁の厚い臓器では粘膜下ポケットの形成により不完全な閉鎖となることも少なくない.より強固な閉鎖を目指して,ナイロン糸を使用した閉鎖法も種々報告されており,われわれは特に糸の締め上げと確実な固定をすることに重きを置いた.「CLiPS(Clip with Line Pulley Securing)」法を報告した.CLiPS法は,ナイロン糸とクリップ,ならびに留置スネアなどを用いた固定具を組み合わせた方法であり,粘膜欠損の辺縁をクリップで把持し,糸を滑車状に牽引することで欠損縁を強固に接近させ,さらに固定具を使用することで確実に固定をさせる方法で,シングルチャンネルでかつスコープの出し入れなく行えるシンプルかつ効率的な手法である.本稿では,CLiPS法の手順やコツを解説する.

資料
  • 中原 一有, 小林 慎二郎, 森本 毅, 五十嵐 洋介, 関根 章裕, 薩田 祐輔, 丹羽 はるか, 佐藤 純也, 野呂瀬 朋子, 大池 信 ...
    2026 年68 巻7 号 p. 1339-1349
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/21
    ジャーナル 認証あり HTML

    【目的】壊疽性胆囊炎(gangrenous cholecystitis:GC)に対する治療は,一般には手術が第一選択であるが,併存疾患などにより手術が困難な症例も存在する.本研究では,手術困難なGCに対する内視鏡的経乳頭胆囊ドレナージ(endoscopic transpapillary gallbladder drainage:ETGBD)の実行可能性について評価した.

    【方法】急性胆囊炎(acute cholecystitis:AC)に対するETGBDの治療成績について,後方視的にGC合併の有無で比較検討した.2019年1月から2023年7月の間に,単一の三次医療機関においてACに対しETGBDを施行した136例のうち,ETGBD前に造影CTが撮像されていた91人を解析対象とした.

    【結果】患者は,CT所見に基づいてGC群(n=29)と非GC群(n=62)に割り付けられた.GC群と非GC群のETGBDの手技成功率,ACの臨床的成功率,早期有害事象発生率は,それぞれ86.2% vs. 91.9%(P=0.63),79.3% vs. 91.9%(P=0.17),27.6% vs. 16.1%(P=0.32)であった.GC群にて,手技成功率と臨床的成功率がやや低く,早期有害事象発生率が高かったが,両群間で有意差はなかった.後期有害事象発生率は,GC群で15.8%,非GC群で17.9%であり,差はなかった(P=0.87).GC群では待機的胆囊摘出術の施行頻度が有意に低かった(P=0.023).

    【結論】ETGBDは手術困難なGCに対する実行可能な治療選択肢となりえる.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 吉井 新二
    2026 年68 巻7 号 p. 1358
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/21
    ジャーナル 認証あり HTML

    【背景】内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)は,一括切除が可能で,詳細な病理評価ができるが,T1大腸癌に対するESD後の長期成績を前向きに検討した報告は限られている.本研究では,ESD後のT1大腸癌を日本の大腸癌治療ガイドライン 2)に基づき,低リスク群と高リスク群に分類し長期成績を比較した.

    【方法】広島県内で大腸ESDを実施する11施設において,2014年から2018年に大腸ESDを受けた連続症例を登録した多施設前向き観察研究である.病理学的にT1大腸癌と診断された383例を解析対象とし,低リスク群と高リスク群に分類した.高リスク群は,追加手術群と経過観察群に分けて解析した.主要評価項目は5年累積再発率であった.

    【結果】383例のうち,低リスク群は102例,高リスク群は281例であり,高リスク群のうち74例は経過観察,207例は追加手術を受けた.低リスク群では再発および大腸癌関連死亡を認めなかった.一方,高リスク群では10例(3.6%)に再発,5例(1.8%)に大腸癌関連死亡を認めた.高リスク群において,5年累積局所再発率は経過観察群で6.8%,追加手術群で0%であり,追加手術群で有意に低かった.一方,遠隔再発率は2.7%対1.9%,疾患特異的生存率は98.4%対98.5%であり,両群間に有意差を認めなかった.

    【結語】低リスク群では,治癒切除後のESD単独で良好な長期成績が得られた.高リスク群では,追加手術により局所再発は抑制される可能性があるが,遠隔転移および疾患特異的生存への寄与は明らかではなかった.

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