EUS-BDは,デバイスの進化に伴い,その安全性・有効性が飛躍的に向上してきた.本稿では,穿刺針,ガイドワイヤ,ダイレーター,ステントに至るまでのEUS-BD手技に使用される各デバイスの構造的特徴と臨床的意義について最新の文献をもとに概説する.なかでも多くの革新的デバイスが日本で開発されており,今後の国際的な普及と展開が期待される.
本邦において罹患率が上昇している逆流性食道炎との関連性が明らかなBarrett食道を発生母地とする食道腺癌は漸増傾向にある.進行した食道腺癌の予後は不良であり,患者予後の改善には内視鏡による早期診断が必要である.われわれが行った全国多施設調査の結果,早期癌(表在癌)の大多数が発赤調を呈し,2/3以上の病変が2°方向を主体に前壁~右側壁に局在しており,過半数が隆起型であった(表在癌3徴).しかし,慢性炎症を伴うBarrett食道を背景に発生する早期癌を通常の白色光内視鏡のみで診断することは容易でない場合も少なくない.2000年代以降,先進的内視鏡画像技術の開発が相次ぎ,Barrett食道腺癌の早期検出における高い診断的有用性が数多く報告されており,その中で特に診断的有用性が高く,本邦において臨床使用可能な内視鏡診断技術(主に画像強調法・酢酸法)に関する報告をまとめた.最新の欧米のガイドラインでは,画像強調法・酢酸法の併用が支持されるようになった.近年開発が進んでいる人工知能を用いた診断システムについて表在癌の検出・深達度診断における有用性が報告されたが,一般臨床に応用可能かは現時点では不明と言わざるを得ない.また,最近明らかとなってきた本邦のBarrett食道の発癌頻度に基づいたサーベイランス法や病理診断を含めた本邦と欧米との相違点についても述べた.日本食道学会から提案された拡大内視鏡分類(JES-BE分類)は国内多施設検討で高い診断精度・一致度が報告され,今後のさらなる普及を期待したい.
症例は52歳女性.心窩部不快感がありEGDを行ったところ,ヘリコバクター・ピロリ菌に未感染と思われる胃粘膜を背景に,胃体上部から穹窿部に5mm大の多発する隆起性病変を認め,胃底腺ポリポーシスと診断した.その中で,胃体上部大彎前壁寄りに,10mm大で周囲粘膜よりやや白色調の亜有茎性の隆起性病変を認めた.表面性状や色調は,胃底腺ポリープとは明らかに異なっていた.生検結果で胃型腺腫が疑われたためにEMRを行い,最終的に胃型腺腫と診断した.詳細な遺伝子診断は施行できなかったが,家族性大腸腺腫症やgastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomachの可能性は低いと思われた.遺伝素因がないピロリ菌未感染患者において,多発する胃底腺ポリープの中に胃型腺腫を認めた症例を報告する.
症例は73歳女性.抗ウイルス療法後C型肝硬変で当院通院.2005年の初診時内視鏡検査で胃穹窿部に孤発性胃静脈瘤を指摘され経過観察を続けていたところ,2022年の内視鏡検査で胃体上部小彎に30mm大の境界明瞭な発赤陥凹性病変を指摘された.生検で高分化型腺癌が認められ,内視鏡所見から分化型粘膜内癌と診断した.内視鏡的切除適応病変と考えられたが,穹窿部の胃静脈瘤の術中損傷が危惧されたため胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性静脈瘤塞栓術を行った.胃癌に対する内視鏡的治療に先行する胃静脈瘤塞栓術は静脈瘤出血の予防に有効であり,塞栓術後に内視鏡治療の障害となる変化も認めず,ESDにて胃癌は完全切除された.
症例は75歳男性.左尿管癌に対し,左腎尿管全摘術施行約1年後,十二指腸周囲の播種再発により十二指腸下十二指腸角部に高度の狭窄を生じ経口摂取不能となったため,ベアステント2本を留置した.化学療法および免疫療法が奏効したが,ステント留置から約9カ月後に腫瘍の縮小に伴いステントが逸脱した.さらにステントを先進部とする小腸閉塞により急性腹症を来し緊急入院となった.イレウスチューブによる減圧を行うも,ステントは下部回腸に滞留しており自然排泄が得られなかったため,経肛門的シングルバルーン内視鏡を施行し,ステントを内反させる形で回収を行った.ステント回収に伴う偶発症はなく,術後8日目に退院となった.
EUSは,消化管内視鏡の中で,消化管壁を断層的に評価できる唯一のモダリティであり,白色光・拡大観察からは得る事ができない重要な情報をもたらす.深達度診断やリンパ節転移診断など,食道癌・胃癌診療の様々な場面で使用されているが,通常の内視鏡検査に加えて,多少の時間を追加で要するため,EUSを実施すべき病変については,白色光・拡大観察で選択する必要がある.第三者に客観的に理解してもらいやすい画像を残す工夫も重要である.EUSはその開発から40年以上の歴史があるが,消化管癌の内視鏡切除の適応決定の観点からもその位置付けが再考されている.
胃石は胃内で異物が凝集して形成される塊状物であり,構成成分により植物胃石,毛髪胃石,薬剤胃石,乳胃石などがある.本邦では植物性成分からなる植物胃石が最も多くを占める.中でも柿胃石が有名である.柿に含まれるカキタンニンは胃酸と反応してタンパク質と結合し,食物残渣と凝集して硬化する.小さな胃石は自然排泄されることもあるが大きくなった場合には腹部膨満,嘔吐,閉塞などの症状を呈し,治療介入が必要となる.かつては外科的摘出が行われていたが,内視鏡治療の進歩やコカ・コーラⓇの飲用による溶解療法の発見により,非侵襲的な破砕・除去が可能となった.本稿では,鉗子・スネアによる摘出,高エネルギーデバイスによる破砕や焼灼,コカ・コーラⓇによる溶解療法についてわれわれが経験した症例を通してその実際,工夫について解説する.
【目的】膵液体貯留(pancreatic fluid collection:PFC)に対するEUSガイド下治療の成功には,適切な全身マネジメントが不可欠である.しかし,併存疾患の状態がこの治療の臨床アウトカムとどのように関連するかは,十分に検討されていない.
【方法】2010年から2020年にEUSガイド下でPFCの治療を受けた406人の患者を含む多施設共同コホートを用いて,チャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index:CCI)と入院中死亡率およびその他の臨床アウトカムとの関連を検討した.潜在的な交絡因子を調整した多変量ロジスティック回帰分析を実施して各アウトカムのオッズ比を算出した.さらに2010年から2020年に486病院で治療を受けた4,053人の患者を含む日本の全国入院患者データベースを用いて結果の検証を行った.
【結果】多施設共同コホートにおいて,CCIは入院中死亡リスクと正の関連を示した(P trend値<0.001).CCI=0の患者と比較して,CCIが1-2,3-5,および6以上の患者の調整オッズ比(95%信頼区間)は,それぞれ0.76(0.22-2.54),5.39(1.74-16.7),および8.77(2.36-32.6)であった.全国の検証コホートでも同様の正の関連が観察され,対応するオッズ比(95%信頼区間)は,それぞれ1.21(0.90-1.64),1.52(0.92-2.49),および4.84(2.63-8.88)であった(P trend値<0.001).また,CCIが高いほど入院期間が長くなる関連は全国コホートで認められた(P trend値<0.001)が,臨床コホートでは認められなかった(P trend値=0.18).CCIは手技関連の有害事象のリスクとは関連していなかった.
【結論】CCIが高いほど,EUSガイド下でPFCの治療を受けた患者の入院中死亡リスクが高くなることが示され,CCIが治療前死亡リスクの層別化に有用である可能性が示唆された.
【背景】潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis, UC)の病勢評価には内視鏡が必須だが,侵襲的で頻回実施が困難である.そこで,患者自身が撮影した便写真を用いた深層学習モデル(DL model using stool photographs of patients with UC, DLSUC)によって内視鏡的炎症を予測できるかを検討した.
【方法】韓国の6施設による前向き多施設共同研究.内視鏡検査予定のUC患者に,検査前1週間以内の便をスマートフォンで撮影してもらい,計306例(2,161画像)で学習,126例(1,047画像)で検証を行った.内視鏡的活動性はUC Endoscopic Index of Severity(UCEIS)で判定し,DLSUCの予測能を便カルプロテクチン(Fcal)と比較した.
【結果】DLSUCの内視鏡的活動性予測におけるAUCは0.801(95%CI 0.717-0.873)で,Fcalの0.837と同等であった(P=0.458).直腸に炎症を認めない症例を除くとAUCは0.849に上昇した.感度0.662,特異度0.877,精度0.746であり,複数画像を組み合わせた判定により精度が向上した.さらに,DLSUCで「活動性」と分類された患者は8カ月の追跡で再燃リスクが有意に高かった(P=0.002).
【結語】便写真を用いた深層学習モデルは,Fcalと同等の精度で内視鏡的活動性を予測し,再燃リスク評価にも有用であった.非侵襲的で患者負担が少ない新しいモニタリングツールとして期待される.