ESDは,早期消化管癌に対する根治的な低侵襲治療法として確立されている.一方,後出血や遅発穿孔などのESD後有害事象をいかに防ぐかは,臨床上の重要なテーマである.高齢化に伴い抗血栓薬服用例が増加傾向にあり,その後出血率も低くない.有害事象の発生頻度や重症度は臓器毎に異なるため画一的な対策ではなく,臓器特性や患者背景を加味したリスク層別化に基づく個別化戦略が求められる.
近年,ESD後有害事象予防の方策のひとつとして内視鏡的創閉鎖法が注目され,一定の有効性は示されつつある.本稿では,消化管臓器毎のESD後有害事象の発生率とともに,予防的創閉鎖について文献データをもとに概説する.創閉鎖は,Through-The-Scope Clipによる閉鎖,Over-The-Scopeシステム,内視鏡的糸縫合法,被覆法に大区分化したうえで各手技の特徴を紹介する.今後,最適な創閉鎖手技を確立するために臓器別・リスク別の適応および技術的・経済的側面を鑑みたさらなるエビデンスの構築が期待される.
胃癌は世界的にも依然として主要ながん種の一つであり,早期発見・早期治療が予後改善に不可欠である.近年,深層学習を中心としたAI技術の発展により,内視鏡画像を用いた早期胃癌の診断支援システムが数多く開発されている.本総説では,早期胃癌のAI診断に関する主要文献をレビューし,病変検出(CADe),質的診断(CADx),深達度診断,境界診断,前癌病変診断の各領域における現状と課題を概説する.AI診断支援システムは,とくに非専門医の診断支援に有用であり,一部のタスクでは専門医に匹敵する性能が報告されている.検出支援においては,ランダム化比較試験でも見逃し率低下が示されつつある.本邦では2022年に上部消化管AI検出支援システムが薬事承認を取得し,その後2023年には早期胃癌に特化した検出支援AI,2024年には深達度診断支援AIも承認され,臨床導入が進みつつある.一方で,外部検証の不足,費用対効果の未確立,保険収載の課題,説明可能性や責任分担の整理など,社会実装に向けた問題も残されている.
症例は67歳男性.胃体下部大彎の上皮下病変に対して1年ごとに内視鏡で経過観察.経過とともに病変の増大と頂部の陥凹出現を認め,初回の内視鏡検査から7年後にEUS-FNAとボーリング生検を実施したが病理診断がつかなかった.胃局所切除術で高分化腺癌と診断し,追加切除を実施した.2年間以上経過観察された上皮下病変様胃癌の既報26症例につき検討したところ,自験例と同様に経過とともに病変が増大して頂部に陥凹が出現する例が多く,筋層以深に浸潤するものが11例,リンパ節転移を有するものが4例であった.上皮下病変様胃癌はできる限り早めに組織診断をつけるか,病変を摘出することが重要と考えられた.
症例は76歳,女性.多系統萎縮症による嚥下障害のため,PEGが施行された.Introducer原法で造設され,トロカール針を穿刺する際に針先が胃後壁に達してしまった.術直後よりショック状態となり,緊急CTにて後腹膜血腫,腹部大動脈からの造影剤漏出を認めた.緊急腹部大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR:Endovascular Aortic Repair)により止血は成功,患者は救命された.腹部大動脈損傷はPEGの最重症の偶発症として認識しておくべき病態と考える.PEGの際には,胃前面のみならず背面の臓器にも十分に留意すべきである.術前画像などを参考に,個々の症例のリスクに応じた造設法の選択が重要であると考えられた.
52歳,女性.膵頭部多血性腫瘍に対し膵頭十二指腸切除術が実施され,腫瘍はneuroendocrine tumor G1の診断であったが,術中に門脈損傷をきたし門脈切除再建が施行された.術後,門脈血栓が生じ抗凝固療法が開始されたが,胆管空腸吻合部に出血性潰瘍が生じたため抗凝固療法を継続できず,徐々に門脈狭小化が増悪した.術後29カ月,吐血を主訴に救急外来を受診し,造影CTで造影剤漏出所見は認めなかったが門脈海綿状変化による胆管内静脈瘤を認めた.ダブルバルーン内視鏡で胆管空腸吻合部を観察したところ,胆管から血液流出を認め出血源と同定した.しかし,吻合部狭窄があり内視鏡的止血が困難であったため,門脈圧を下げて出血を抑える目的で部分的脾動脈塞栓術を実施したところ,術後は出血なく経過している.
PEGのIntroducer変法は,感染や癌播種の予防に優れる反面,従来のバンパー型カテーテルでは挿入および抜去時の物理的抵抗や組織損傷が課題であった.本稿では,これらの課題を克服する次世代デバイスを用いた低侵襲な造設・交換手技について詳述する.本デバイスは,バンパーをゼラチンカプセル内に収納してストレート化する挿入機構と,抜去時に形状記憶ワイヤー(NiTiリング)を引き抜くことでバンパーをシリコーンの薄膜状に変化させる機構を有する.造設においては,一期的ダイレーターにより拡張手順を簡略化し,Peel-away構造のシースを介することで胃壁の軸ズレや損傷を防ぎ,カプセル化されたカテーテルを無抵抗で挿入できる.また交換においては,ワイヤーの除去により瘻孔壁を擦過しない愛護的な抜去が可能であり,専用のオブチュレーターとガイドワイヤーを用いた再挿入により誤挿入リスクを低減する.本システムは,挿入から交換に至る全プロセスにおいて瘻孔への侵襲を極小化する.術者の経験値への依存を減らして手技を標準化し,患者の苦痛軽減と医療安全の向上に大きく貢献する画期的な手法である.
膵疾患診断におけるEUSは,空間分解能に優れ,有用な画像診断法である.しかし,通常観察での腫瘤性病変の診断は術者の主観や経験に大きく依存する.本稿では,診断能向上のための客観的評価法として,超音波造影剤を用いた造影EUSとエラストグラフィについて解説する.造影EUSでは,第2世代の超音波造影剤SonazoidⓇを用い,特定の音圧域でマイクロバブルを共振させることで血流を評価する.膵疾患における造影EUSの役割は,(1)血流の有無による存在診断と(2)血流の量や分布による鑑別診断に大別される.具体的応用としては,膵管内乳頭粘液産生腫瘍(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm:IPMN)における腫瘍結節と粘液塊の鑑別,通常観察で認識困難な膵癌の検出,転移性肝腫瘍の診断などが挙げられる.また,膵腫瘍の鑑別診断では,造影パターン(膵癌:hypo-enhancement,腫瘤形成性膵炎:iso-enhancement,神経内分泌腫瘍:hyper-enhancement)が有用である.さらに,EUS-FNAやインターベンションにおいても血流評価により診断能,安全性が向上する.エラストグラフィは組織弾性を非侵襲的に測定する技術で,Strain elastography(SE)とShear wave elastography(SWE)の2種類がある.SEは圧迫によるひずみから硬度を評価し,膵腫瘍の良悪性診断や膵液瘻の予測に有用である.一方,SWEはせん断波速度から硬度を絶対値で測定でき,慢性膵炎や自己免疫性膵炎の診断に優れている.これらの画像強調法は,膵疾患の診断精度向上において相補的な役割を果たしており,臨床現場での適切な使い分けが重要である.
【背景・目的】Sessile serrated lesion(SSL:鋸歯状病変)は大腸癌への進展リスクを有するため,内視鏡切除が推奨されている.しかし,従来のEMRでは10-20mmのSSLに対して完全切除が達成されない症例が少なくない.一方,近年underwater EMR(UEMR:浸水下内視鏡的粘膜切除術)が大腸ポリープに対する切除法として広く普及してきているが,SSLに対する有用性についてはまだ十分な検討がなされていない.そこで本研究では,10-20mmのSSLに対するUEMRの完全切除率を前向きに検証した.
【方法】本研究は2施設による前向き単群観察研究である.内視鏡的に10-20mmと診断されたSSLに対してUEMRを施行し,切除検体の病理学的評価を行った.また,切除後に創部辺縁4点より生検を行い,遺残の有無を評価した.局所再発の評価として1年後にフォローアップ大腸内視鏡検査を実施した.主要評価項目は完全切除率とし,生検にて鋸歯状病変の遺残を認めないこととした.副次評価項目としてR0切除率,一括切除率,再発率,偶発症および手技困難に関連する因子とした.
【結果】103症例133病変のうち27例30病変が除外され,最終的に76症例103病変が登録された.切除後病変径の中央値は12(8-23)mm,R0切除率は61%,一括切除率は91%であった.完全切除率は97%(95%信頼区間:91.8-99.0%)であった.フォローアップ大腸内視鏡検査は87病変に対して行われ,いずれの症例においても再発は認められなかった.偶発症は遅発性出血を1例(1%)に認めたのみであった.スネアの固定困難が分割切除に有意に関連する因子として抽出された.
【結論】10-20mmのSSLに対するUEMRの完全切除率は良好であり,UEMRは本病変に対する標準治療の1つになりうることが示唆された.
筆者は2025年度の国際会議において海外のオピニオンリーダーと対談し,日本の役割と世界への貢献について意見を収集した.主な論点は,日本の内視鏡医療の国際的貢献と10年後の展望である.各専門家の見解には共通点があり,内視鏡AIやRobotics,臓器間治療など革新的分野の急速な進展,日本が有する高度な技術力・教育力・研究力に基づく国際的リーダーシップの維持強化の必要性が指摘された.また,日本発のエビデンス発信の重要性や,アジア諸国からの教育・研究・医療機器開発への強い期待も明らかとなった.世界の内視鏡医学は今,かつてない速度で進展している.こうした状況において日本が引き続き中心的役割を担い,国際医療の発展に寄与し続けるためには,長年受け継がれてきた伝統を礎としつつ,革新への不断の挑戦を続け,より広いグローバルな視野に立った戦略的取り組みが不可欠である.
日本消化器内視鏡学会は,内視鏡診療ガイドライン作成作業の一環として,消化器内視鏡の洗浄消毒標準化にむけたガイドラインを作成した.内視鏡の適切な洗浄消毒は,内視鏡診療において非常に重要であり,被検者間感染の防止・医療従事者の感染予防において欠くべからずプロセスである.今回の改訂では,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0」に従い,EBMに基づいた「ガイドライン」を作成した.文献的裏付けがあるものについてはステートメントを作成し,エビデンスレベルと推奨度を記載した.第1版発行後,新たなエビデンスの集積がみられるものの,本邦からの論文が少ないのも特徴であり,本邦からのエビデンスの創出に今後も期待したい.
【目的】消化器内視鏡における鎮静の重要性は年々高まっている.レミマゾラムは超短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤であり,ミダゾラムと比較して薬物動態学的半減期が短い.本研究の目的は,日本人患者においてレミマゾラムが優れた内視鏡鎮静を提供できるかを検証することである.
【方法】本研究は前向き多機関共同ランダム化単盲検比較試験であり,鎮静下上部消化管内視鏡検査を予定した成人(18~80歳)を対象とした.被験者はレミマゾラム群とミダゾラム群に無作為に割り付けられた.主要評価項目は,内視鏡終了5分後に歩行可能であった患者の割合とした.副次評価項目は,検査前鎮静の成功率(Modified Observer’s Assessment of Alertness/Sedation[MOAA/S]スコア≦4),鎮静達成に必要な薬剤投与量,歩行可能となるまでの時間,有害事象とした.
【結果】2024年10月から2025年1月までに40例が登録された.2例を除外し,38例(レミマゾラム群20例,ミダゾラム群18例)が解析対象となった.内視鏡終了5分後に歩行可能であった割合は,レミマゾラム群85.0%(17/20),ミダゾラム群0%(0/18)であった(p<0.0001).検査終了から歩行可能となるまでの平均時間は,レミマゾラム群4.25分(0~10),ミダゾラム群35.56分(10~60)であった(p<0.0001).検査前鎮静(MOAA/S≦4)の成功率は両群とも100%であった.鎮静達成に必要な平均投与量は,レミマゾラム4.30mg(3.0~7.0),ミダゾラム3.11mg(2.0~5.0)であった(p=0.003).低酸素血症の発生率は,レミマゾラム群5.0%,ミダゾラム群33.3%であった(p=0.038).
【結論】上部消化管内視鏡検査において,レミマゾラムはミダゾラムと比較して著しく速やかな覚醒・回復をもたらし,低酸素血症の発生率も低かった.一方,目標とする鎮静レベルの達成率は両群で同等であった.これらの結果から,レミマゾラムは日本人患者に対する内視鏡鎮静において,有効であり,かつより安全性の高い鎮静薬となる可能性が示された.