日本消化器内視鏡学会雑誌
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最新号
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総説
  • 三浦 義正
    2026 年68 巻8 号 p. 1373-1384
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/20
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    内視鏡スクリーニング検査から複雑化する消化器内視鏡処置まで,様々な臨床場面で鎮静は必要不可欠である.しかしながら,日本では長く臨床で使われてきた鎮静剤は保険適応になっていない.多くは海外からのエビデンスにより鎮静のガイドラインが作成され,実臨床では内視鏡医によって薬剤が投与されているのが現状である.理想の鎮静とは端的にいえば,導入と回復が早く,安全性が高く,患者・医師満足度が高いものといえる.鎮静効果の高いものは循環呼吸抑制作用も強く,鎮痛剤や他の作用を持つ薬剤との併用で薬剤投与量を減らすことが理想になる.将来的には医療経済的な側面も考慮しながらも,循環呼吸抑制自体が少ない超短時間作動型の薬剤へとシフトしていくものと思われる.

  • 山口 純治, 佐々木 誠人, 中村 正直
    2026 年68 巻8 号 p. 1385-1396
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/20
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    潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)において,粘膜治癒(mucosal healing:MH)は長期予後を規定する重要な治療目標として位置づけられている.MHの評価において内視鏡は最も直接的かつ信頼性の高い手段であり,これまでBaron indexやMatts分類から,Mayo endoscopic subscore(MES),Ulcerative Colitis Endoscopic Index of Severity(UCEIS)へと内視鏡的活動性スコアは発展してきた.MESは簡便性に優れる一方,MES 0と1の臨床的差異が問題となり,より精緻な炎症評価を目的としてUCEISが開発されたが,日常診療での運用には一定の制約も残されている.

    近年は,内視鏡的粘膜治癒に加え,組織学的寛解を含めた「深い寛解(deep remission)」が注目されており,単回評価ではなく,内視鏡的・組織学的寛解を時間軸上で維持できているかどうかが再燃予測に重要であることが示されている.このような観点から,UCの治療評価は「点」ではなく「線」として捉える必要がある.

    さらに,高解像度内視鏡や画像強調内視鏡,endocytoscopy,confocal laser endomicroscopyなどの次世代内視鏡技術に加え,AIによる自動スコアリングが進展し,観察者間差の低減やMES 0/1の鑑別支援など,実臨床での応用が現実化しつつある.今後は,AI解析と糞便中カルプロテクチンや血清LRGなどの非侵襲的バイオマーカーを統合したハイブリッド・モニタリングが重要になると考えられる.

    本稿では,UCにおける内視鏡的活動性評価の変遷,粘膜治癒の定義と臨床的意義,組織学的寛解との関係,ならびにAIを含む次世代技術とモニタリング戦略について概説し,今後の個別化医療における内視鏡の役割を展望する.

症例
注目の画像
手技の解説
  • 鷹取 元
    2026 年68 巻8 号 p. 1420-1429
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/20
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    電子付録

    食道静脈瘤に対するEISはその優れた治療効果により,かつて本邦で広く行われていた治療法であるが,手技の煩雑さや,出血など偶発症のリスクから,より簡便なEVL単独での治療法が広く普及している.EISにEVLを組み合わせた内視鏡的硬化療法・結紮術併用療法(endoscopic injection sclerotherapy with ligation:EISL)は,EISの治療効果を高め,かつ術者の負担も軽減できる,優れた治療法である.本稿ではEIS前後のEUSでの評価を含め,EISLを実践できるよう詳細に解説する.

  • 野本 佳恵, 山田 優紀, 三浦 義正
    2026 年68 巻8 号 p. 1430-1438
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/20
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    ESDは,消化管腫瘍に対する確実な一括切除をもたらす低侵襲治療手技として確立しているが,大腸ESDにおいてはいくつかの特有の難しさが存在する.このような困難性を克服するための治療戦略の一つがpocket-creation method(PCM)である.PCMは1)局注液の無駄な漏出の防止,2)フード先端により作り出される強いトラクションとカウンタートラクション,3)筋層に対峙する場面での容易な接線方向へのアプローチ,4)内視鏡先端の安定性という4つの特長に集約される.PCMは筋層牽引を伴う大腸の亜有茎性腫瘍に対するESDの克服法として最初に紹介されたが,その後大腸ESDのみならず胃や十二指腸での有用性も報告されている.ESGEのtechnical reviewにも記されているように,PCM自体はトラクション法の一種であるという認識を持つとその利点の理解が得やすい.一方,管腔内を生理食塩水で満たして治療を行うUnderwater治療手技が報告され,十二指腸や大腸ではUnderwater EMR without injectionがすでに主流となっている.Underwaterの利点は粘膜の収縮,浮力による自然なトラクション,視認性の改善である.特に閉鎖腔であるポケットで剝離を進めていくPocket-creation methodとUnderwaterは視野確保のためには相性が良く,ポケットで得られていたトラクションは徐々に失われていくポケットの開放時にも,浮力のようなnatural tractionを持続的に得ることができるため併用することで相乗効果を得られる.本稿では,PCMの背景と実際の手技を概説するとともに,Underwater techniqueとの融合および新規機器の応用について,最新の知見を踏まえて解説する.

資料
  • 髙橋 孝輔, 安田 一朗, 圓谷 俊貴, 元尾 伊織, 林 伸彦, 安藤 孝将, 藤浪 斗, 田尻 和人, 井村 穣二, 平林 健一, 小澤 ...
    2026 年68 巻8 号 p. 1439-1449
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/20
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    【緒言】画像診断上,5mm以上に拡張した主膵管を有する膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)は,混合型IPMN(mixed-type IPMN:MX-IPMN)と定義されている.しかし,MX-IPMNにおいて実際に主膵管内に腫瘍浸潤を認める頻度は明らかではない.本研究の目的は,MX-IPMNにおいて病理学的に主膵管内へ腫瘍が浸潤している頻度を明らかにするとともに,経口膵管鏡検査(peroral pancreatoscopy:POPS)による病変の主膵管内進展診断の有用性を検討することである.

    【対象・方法】2018年7月から2021年12月までに,画像診断上MX-IPMNと診断され,POPS施行後に外科的切除を受けた症例を対象とした後ろ向きコホート研究を行った.切除標本に基づき,腫瘍の主膵管内進展を含む病理学的特徴を解析した.さらに,腫瘍の主膵管内進展検出におけるPOPS,CT,MRI,EUSの診断性能を比較検討した.

    【結果】対象15例中10例(67%)で,病理学的に腫瘍の主膵管内進展が確認された.主膵管内進展を認めた症例の多くでは,原発病変は高度異形成(60%)または浸潤癌(10%)であった.一方,主膵管内進展を認めなかった症例では,主病変は低度異形成が大半を占めていた(軽度異形成80%,高度異形成20%,浸潤癌0%).生検施行の有無にかかわらず,POPSの診断精度,感度,特異度はそれぞれ93.3%,90.0%,100%であった.POPSはCT,磁気共鳴胆管膵管造影(magnetic resonance cholangiopancreatography:MRCP),EUSと比較して,より高い診断精度および感度を示した(診断精度:93.3%,40%,60%,80%;感度:93.3%,10%,40%,70%).

    【結論】画像診断上MX-IPMNと診断された症例の約3分の2において,病理学的に腫瘍の主膵管内進展が確認された.腫瘍の主膵管内進展は悪性を強く示唆する所見であり,POPSは主膵管内進展の評価に有用な診断手段となる可能性が示された.

ガイドライン
  • 矢野 智則, 井上 健, 江﨑 幹宏, 大森 鉄平, 高林 馨, 壷井 章克, 仲瀬 裕志, 中村 正直, 馬場 重樹, 平井 郁仁, 堀田 ...
    2026 年68 巻8 号 p. 1451-1483
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/20
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    日本消化器内視鏡学会は,EBMに基づいた「小腸内視鏡診療ガイドライン(第2版)」を作成した.カプセル内視鏡により全小腸の内視鏡観察が低侵襲に可能となり,バルーン内視鏡により観察のみならず生検・治療まで可能となった.両者の登場から20年以上が経過して小腸疾患の診療は大きく進歩してきたが,さらなる早期診断・治療をめざして適応判断と手技の標準化を進める必要がある.執筆はCQ(clinical question)形式とし,必要に応じてBQ(background question)・FRQ(future research question)を設けた.なお,一部のCQにおいては,レベルの高いエビデンスが少ないため,専門家のコンセンサスを重視せざるを得なかった.本ガイドラインは,適応,診断アルゴリズム,運用,治療の4項目を柱に構築し,現時点での指針とした.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 中村 正直
    2026 年68 巻8 号 p. 1491
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/20
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    【背景】デンマークでは,大腸憩室炎発症後に悪性疾患を除外する目的で退院後の大腸内視鏡検査が標準的に行われている.一方,大腸カプセル内視鏡(colon capsule endoscopy:CCE)は低侵襲な代替検査として注目されている.本研究は,大腸憩室炎後のフォローアップ検査としてCCEと通常大腸内視鏡検査を比較し,患者報告アウトカム(patient-reported outcomes)を評価した.

    【方法】オーデンセ大学病院において,CTで大腸憩室炎と診断された患者を対象とした無作為化比較試験を実施した.患者を退院4~6週後にCCE群または大腸内視鏡群へ無作為に割り付けた.主要評価項目は検査に伴う患者自身の身体的・精神的不快感とした.副次評価項目は検査前に予想した不快感,将来の検査選好,検査完遂率,およびポリープ・大腸癌の検出率であった.

    【結果】159例が無作為化され,148例が割り付けられた検査を受けた.アンケート回収可能は83例であった.背景因子は両群で概ね均衡しており,検査関連有害事象は認めなかった.患者は検査前には大腸内視鏡に対してより強い身体的・精神的負担を予想していたが,実際に経験した不快感には両群間で有意差を認めなかった.将来再度検査を受ける場合の希望としては,CCEが49%,大腸内視鏡が13%,判断保留が38%であった.検査完遂率はCCE 84%,大腸内視鏡92%であった.両群とも悪性腫瘍は検出されなかった.

    【結語】大腸憩室炎後のフォローアップ検査としてCCEは安全に実施可能であった.実際に経験した不快感は大腸内視鏡と同等であったものの,患者の将来的な検査選好はCCEに傾いていた.検査完遂率の改善は課題として残るが,CCEは患者受容性に優れた低侵襲な代替手段として,憩室炎後フォローアップ戦略の新たな選択肢となる可能性が示された.

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