内視鏡冷凍アブレーション治療は,海外では主に異形成を伴うバレット食道の発がん予防目的の治療や食事の通過障害を有する進行食道癌患者に対する症状緩和目的の治療として用いられている.内視鏡治療としての冷凍アブレーション治療に用いる医療機器は,冷凍ガスを広範に直接スプレー状に病変に対して噴霧するSpray Cryotherapyと拡張したバルーン内で病変局所に噴霧して治療するCryoballoon Ablation System(CBAS)がある.わが国では,増加する食道癌内視鏡切除後瘢痕に出来た遺残再発や異時性表在癌に対する新たな治療デバイスとして,CBASが期待され,その有効性と安全性が医師主導治験で評価された.治験では,高い安全性と優れた治療効果が示され,2024年6月に薬事承認された.今後,内視鏡切除後の辺縁遺残や瘢痕上または近傍の再発で,内視鏡切除が困難である食道表在癌に対する新しい治療として保険診療として実施されることが期待される.
膵石は慢性膵炎の進行に伴って形成され,膵液流出障害による疼痛を引き起こすだけでなく,仮性囊胞や膵液漏を併発するなどし,病態が複雑化することも少なくない.膵石症はCT,MRI,EUSなどにより診断し,原則疼痛のある主膵管内膵石が治療適応とされ,内視鏡治療,体外衝撃波結石破砕術,電気水圧衝撃波/レーザー,外科的手術などの治療法を適切に組み合わせた多角的な戦略が求められる.治療により疼痛の改善が得られたとしても,膵機能の評価,画像による膵癌スクリーニング,生活習慣の是正を含めた包括的なフォローアップが重要であり,再発予防および予後改善の鍵となる.今後は,各種治療の適応選択や長期成績に関するエビデンスのさらなる集積が期待される.
胃前庭部毛細血管拡張(gastric antral vascular ectasia: GAVE)は,胃前庭部に放射状またはびまん性の毛細血管拡張を認める疾患である.今回われわれは,上部消化管内視鏡検査では活動性出血を認めなかったが,小腸カプセル内視鏡検査(video capsule endoscopy: VCE)施行時に,胃内撮影画像においてGAVEからの活動性出血を確認し,出血源と判断した2例を経験した.GAVEに対し,アルゴンプラズマ凝固法を施行し,症状の改善を認めた.貧血や消化管出血,肝性脳症を呈する症例において,EGDでGAVEからの活動性出血を確認できず止血術の適応に悩む場合,小腸病変の評価も含めてVCEを施行することで,小腸外病変としてGAVEからの活動性出血を確認できる場合がある.
症例は55歳,男性.主訴は嘔吐,下痢,体重減少.腹部造影CT検査では下行結腸に空腸と一塊となった腫瘤を認めた.CSでは下行結腸に2型腫瘍を認め,アミドトリゾ酸造影で空腸への造影剤の漏出を呈し,下行結腸癌,空腸浸潤,空腸結腸瘻と診断した.経口摂取により腸閉塞となったため,手術加療を推奨するも,拒否されたため腫瘍部にカバーステントを留置した.その後外来で化学療法を行っていたが,ステントの瘻孔への逸脱を認めた.内視鏡での抜去は困難であり,手術となった.大腸悪性腫瘍による瘻孔に対しては,後治療を視野に入れた治療選択を行う必要がある.
症例は90歳男性.2023年4月に血便を主訴に受診し,回腸末端の憩室から噴出性の出血を認め,クリップ法で止血を行った.回腸はワーキングスペースが狭く,処置に難渋したが,最終的に止血が得られ退院した.しかし,その後も再出血を繰り返し,その都度精査をしたが,出血源を指摘できなかった.再度血便があり,2024年1月に4回目の入院となったが,初回に止血した回腸憩室と同部位からの噴出性の出血を認め,Over-The-Scope-Clip(OTSC)を用いて止血した.OTSCは回腸の様なワーキングスペースを十分に確保できない部位でも,比較的処置が容易であった.処置時の動画とともに報告する.
本稿では,胆管挿管における2つの全く新しいPrecutテクニック,Opening Window Fistulotomy(OWF)とNeedle Puncture Fistulotomy(NPF)について解説した.この2つの手技は,いずれも口側隆起を切開し,乳頭開口部に触れることなく胆管挿管を行うため,ERCP後膵炎の発症を極限まで軽減できる可能性があると考えている.OWFは,口側隆起の粘膜を大きく観音開きにし,粘膜下組織を目視したあとに,さらに追加で深部に切開を加えて,胆管を露出させて胆管挿管を行う方法である.粘膜下組織を広い視野で展開することができるため,切開深度を把握しやすく,安全性の向上と高い挿管成功率が期待できる.一方,NPFは,ESD用の針状ナイフを用いて,口側隆起に瘻孔を形成し,その瘻孔を介して胆管に挿管する手技であり,小乳頭にも適用可能な汎用性の高い手技である.NPFの一番の目的は,挿管成功率の向上ではなく,ERCP後膵炎を防止することが主目的である.小さい乳頭は,挿管困難になることは少ないが,ERCP後膵炎のリスクが懸念される.そのような状況下でこそ,Primary NPFを行う利点があると考えている.本稿で紹介した2つの手技は,ERCP後膵炎が軽減できる臨床的有用性が高い手技であると考えているが,手技を安全かつ確実に施行しなければ,期待通りの結果にはならない.そのためには,基本技術の習得と訓練が重要であることは言うまでもない.
膵癌の予後改善には,可能な限りStage 0やStage Ⅰの段階で診断・治療を行うことが望ましいとされており,その実現に向けた早期診断例の集積および知見の蓄積が近年進んでいる.EUSはCTやMRIで腫瘤の描出が困難な症例においても高い検出率を示し,膵管狭窄部周囲の低エコー領域の評価や膵癌高危険群へのスクリーニングに有用である.一方,EUS-FNAが困難あるいは偽陰性となるStage 0や小さな浸潤癌では,ERCPによる膵液細胞診が診断に寄与する.特に,内視鏡的経鼻膵管ドレナージカテーテルを用いて複数回の膵液細胞診を行うserial pancreatic juice aspiration cytologic examination(SPACE)は,高い診断能を有する.単回細胞診や擦過細胞診との併用も有用であり,EUSとERCPを組み合わせた多面的アプローチが,早期の膵癌の診断と治療方針決定において重要である.
【背景】抗血栓薬(antithrombotic agent:ATA)を継続内服している患者において,胃ESDにおける後出血リスクは高い.後出血高リスク患者を対象に,胃ESD後出血に対する内視鏡的手縫い縫合法(endoscopic hand suturing:EHS)の有効性を検討した.
【方法】胃ESDを施行し,周術期ATAを継続した2cm以下の上皮性胃腫瘍の患者を多施設共同第Ⅱ相試験に登録した.病変を切除後,粘膜欠損部をEHSで閉鎖した.主要評価項目として術後3~4週間の術後出血率を評価し,併せてEHSの実行可能性と有害事象も評価した.後出血率の期待値を10%,閾値を25%とし,48例の組み入れを目標とした.
【結果】合計49例が登録され,最終的に43例がper-protocol setとして登録された.後出血率は7.0%(3/43例;片側95%信頼区間[confidence interval:CI]の上限値17.1%,97.5%信頼区間19.1%)であり,CIの上限は閾値(25%)を下回り,術後出血率は期待値(10%)を下回った.EHS成功率は100%,術後3日目の閉鎖維持率は83%,微小後出血率は2%であった.EHSに関連した重篤な有害事象は観察されなかった.
【結論】EHSはATA継続投与中の胃ESD患者において術後出血を予防する可能性がある(UMIN000038140).
【背景】大腸ポリープに対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)の予防的クリップ閉鎖は,大きい病変や近位結腸の病変において後出血率の減少に寄与するとされる.しかし,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)における有効性に関するエビデンスは不足している.
【目的】腫瘍径20-50mmの無茎性平坦型ポリープに対し,ESD後にクリップ閉鎖を行った症例の重症後出血の発症率について,コントロールと比較した.
【デザイン】本邦4施設における多施設共同無作為比較試験であり,患者は閉鎖群と非閉鎖群に無作為に割り付けられて比較した.臨床的後出血は,重症例(内視鏡的止血術,ヘモグロビン値<70g/ℓにて輸血の施行,または,出血性ショック)とそれ以外の軽症例に分類された.
【結果】閉鎖群と非閉鎖群の対象例は,intention-to-treat(ITT)では,それぞれ150と149例,per-protocol(PP)では,それぞれ142と141例での解析となった.クリップ閉鎖完遂率は,88.7%(ITT)と93.0%(PP)であった.ITT解析による両群での後出血率は,ぞれぞれ,6.7%と20.1%(オッズ比:0.28;95%信頼区間:0.13-0.60;p<0.001;絶対リスク比(ARD):13.5%;95%信頼区間:5.6%-20.9%)となり,さらに,重度出血発症率は1.3%と8.7%(オッズ比:0.14;95%信頼区間:0.03-0.64;p=0.003;ARD:7.4%;95%信頼区間:2.2%-12.4%)であった.これらはPP解析でも同様の結果であった.遅発性穿孔の発症はなく,ESD後凝固症候群の発症率も両群間で有意差は認められなかった.多変量ロジスティック解析では,予防的クリップ閉鎖が臨床的後出血率(オッズ比:0.22;95%信頼区間:0.08-0.50;p<0.001)および,重症後出血率(オッズ比:0.22;95%信頼区間:0.05-0.76;p=0.015)となり,共に有意な独立した予防因子となった.
【結語】予防的クリップ閉鎖は約90%の症例で完遂し,20-50mmの大腸ポリープ切除後の遅発性出血率を減少させた.
試験登録番号 UMIN 000043675