日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳血管障害患者のリハビリテーション訓練における効果阻害因子の検討
特に高齢者と非高齢者との比較において
金谷 潔史勝沼 英宇田幡 雅裕秋庭 保夫馬原 孝彦高崎 優
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1997 年 34 巻 8 号 p. 639-645

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抄録

脳血管障害後遺症患者のリハビリテーション訓練での阻害因子について高齢者, 非高齢者に分けて比較検討した.
対象および方法: リハ訓練を受けた慢性期脳血管障害患者65名 (男43名, 女22名, 平均年齢60歳) を対象とした. 方法は, 阻害因子として脳障害部位, 身体障害部位, 障害程度 (Brunnstrom stage), ADL (Barthel index score), 失語, 半側空間無視の有無, うつ状態 (Zung test), 訓練意欲, 性格 (タイプA) を調べた. 訓練効果は, Barthel index score (満点100) で, 入院時75点未満で25点以上の上昇のあったものを効果あり, 25点未満の場合は効果無しとして, 効果あり群 (E群) と効果無し群 (N群) と阻害因子との関係を65歳以上の高齢者, それ未満の非高齢者とで比較検討した. 検定は t-test, χ2検定, Fisher の直接確率計算法, および多変量解析として, 変数選択-重解析分析 (stepwise regression) で行った. また, 効果の有無とは関係なく, うつ傾向と脳損傷部位および性格との関係を調べ, さらにリハ訓練を行った全症例を対象に高齢者と非高齢者での各因子の比較検討を行った.
結果: 1. 全年齢を対象にした場合, E群は21例, N群は22例であった. 阻害因子の検討では, 年齢, 半側空間無視, 右脳障害, 訓練意欲低下が効果に影響を与えた.
2. 非高齢者では, 年齢, 半側空間無視, 意欲低下が阻害因子と考えられたが, うつの影響は認められなかった.
3. 高齢者の阻害因子は半側空間無視, 意欲低下であり, 有意ではないが, うつの影響も示唆された. しかし, 年齢の影響は認められなかった.
4. 高齢者のうつ発生率は14/27 (52%) であり, 有意ではないが非高齢者の11/38 (29%) に比べて高かった.
5. うつ傾向有りの38例中21例 (64%) は右脳損傷であり, 有意ではないが, 左脳損傷の13例 (34%) に比べて多い傾向を示した.
6. タイプAは, うつ傾向有りの38例中27例 (71%) に認められ, うつ傾向無しの9例 (43%) に比べて有意に多かった.

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