日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
最新号
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目次
総説
  • 竹内 靖博
    2024 年 61 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    高齢者の骨折予防は,個人,家族,社会の何れのレベルにおいても喫緊の課題である.高齢者の骨折の背景には骨粗鬆症が存在しており,その病態と治療についての理解を深めることが大切である.骨折予防には食事,運動および薬物療法のいずれもが重要である.とりわけ,薬物療法に関しては,個々の薬剤の作用機序と臨床的視点からみた特徴や問題点についての理解が大切である.骨粗鬆症を適切に治療することは,高齢者の骨折を減らすことにつながることが実証されており,その幅広い実践が望まれる.

  • ~国内症例の文献レビュー~
    富田 寿彦, 谷藤 信明, 福井 広一, 三輪 洋人, 新崎 信一郎
    2024 年 61 巻 2 号 p. 103-113
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    酸化マグネシウムは日本国内において古くから制酸・緩下剤として使用されており,慢性便秘症治療薬の第一選択薬として位置づけられている.しかし,注意すべき副作用として発現率は低いものの高マグネシウム血症が挙げられる.高マグネシウム血症は高齢者や腎機能低下症例で多く認められる傾向にあるが,腎機能低下を認めない症例も報告されており,その症例の中には腸閉塞や便塞栓等の十分に排便がコントロールされていない症例が散見される.

    そこで本研究では,国内において経口マグネシウム製剤の内服により高マグネシウム血症を来した症例の中で,腸閉塞や便塞栓など十分に排便がコントロールされていないことが原因と推察される症例報告を調査した.その結果,経口マグネシウム製剤による高マグネシウム血症の報告件数は2001~2021年で163症例が該当し,そのうち高度腎機能低下を伴う症例を除いた腸閉塞や便塞栓等を有する症例は59症例であった.これらの症例の多くは,十分な排便がなされていない状態で継続的に経口マグネシウム製剤を服用したことで,腸管内に大量の糞便とともにマグネシウムが停滞し,高マグネシウム血症を来したと推察される.経口マグネシウム製剤の服用者に対しては排便状況をしっかり確認し,事前に十分な排便を促すことにより腸管からのマグネシウムの過度な吸収を防ぐことで高マグネシウム血症の予防につながると推察された.

    酸化マグネシウム服用患者における高マグネシウム血症のリスク因子としてこれまでは腎機能低下が特に注目されてきたが,便塞栓など腸管が閉塞している患者への投与も高マグネシウム血症のリスクと推察され,避けるべきと考える.まず閉塞状態を脱する処置をしたのちに酸化マグネシウム製剤を投与することで,より安全に使用できるものと考えられる.

老年医学の展望
  • 柴 隆広, 沢谷 洋平, 浦野 友彦
    2024 年 61 巻 2 号 p. 114-122
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    本邦では超高齢社会の進行に伴い,要介護高齢者の増加も予測されている.要介護高齢者の増加は医療・介護費の増加や老老介護,介護サービスの人材不足,社会的資源の不足に伴う介護難民など多くの問題の発生が予測されている.そのため,厚生労働省は高齢者の尊厳保持と自立生活支援の目的のもと,可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域の包括的な支援・サービス提供体制である「地域包括ケアシステム」を推進している.

    その一角を担う介護保険サービスとして通所リハビリテーション(通所リハ)が挙げられる.通所リハは医師や理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語聴覚士(ST)をはじめ多くの専門職で要介護高齢者の心身機能や日常生活動作(ADL)の維持・向上を通じて,要介護高齢者に対して「活動」と「参加」への介入が求められている.また,介護者の介護負担の軽減としての機能も果たしている.

    要介護高齢者の心身機能の維持や活動,参加の介入において多職種連携が重要である.通所リハの多職種連携の柱として「リハビリテーション会議(リハ会議)」が挙げられる.リハ会議とはご利用者のニーズや生活目標に対して,関係者全体で問題点の整理や解決法を模索し,リハビリテーションの方針を協議する場である.また,介護予防の実現には「リハビリテーション・機能訓練,口腔,栄養の取組の一体的な推進」が挙げられており,通所リハにおいても管理栄養士や歯科衛生士などを含めた多職種連携による高齢者総合評価が求められている.

    コロナ禍における活動自粛は高齢者において大きな健康被害が危惧されている.そのような状況下において,栄養・身体活動・社会参加に対して多職種で介入が可能な介護保険サービスである通所リハは今後の我が国における要支援・要介護高齢者の健康維持と在宅生活の支援において重要な施設となることが期待される.

特集
高齢者心不全治療のアップデート
原著
  • 井田 諭, 今高 加奈子, 森井 将基, 勝木 啓太郎, 村田 和也
    2024 年 61 巻 2 号 p. 145-154
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:高齢糖尿病患者に対する家族のサポート困難感と患者の高次生活機能との関連性を検証すること.方法:対象は伊勢赤十字病院外来通院中の65歳以上の糖尿病患者及びその家族とした.高次生活機能の評価には,自己記入式質問紙によるTokyo Metropolitan Institute of Gerontology Index of Competence(TMIG-IC)を用いた.高齢糖尿病患者に対する家族のサポート困難感の測定には,日本語版Diabetes Caregiver Activity and Support Scale(D-CASS-J)を用いた.従属変数をTMIG-IC得点(サブスケールである手段的ADL,知的能動性,社会参加を含む),説明変数をD-CASS-J得点(D-CASS-J得点3分位の内,最も得点の高いQ1群を基準),及び調整変数とした重回帰分析を用いて,家族が感じるサポート困難感の高次生活機能に関する標準化回帰係数(β)を算出した.結果:429(男性患者254例,女性患者175例)例が本研究の解析対象となった.男性患者において,Q1群を基準とした場合,Q2及びQ3のTMIG-IC得点に関する調整後βはそれぞれ-0.039(P=0.649),-0.352(P<0.001),手段的ADL得点に関する調整後βはそれぞれ-0.064(P=0.455),-0.192(P=0.047),知的能動性得点に関する調整後βはそれぞれ-0.090(P=0.375),-0.360(P=0.002),社会的役割得点に関する調整後βはそれぞれ0.054(P=0.581),-0.261(P=0.019)であった.一方,女性患者における高次生活機能と家族のサポート困難感には関連性は見られなかった.結論:男性高齢糖尿病患者に対する家族のサポート困難感が患者の高次生活機能低下に関連することが明らかとなった.

  • 五十村 萌華, 平敷 安希博, 佐藤 健二, 原 克典, 川村 皓生, 植田 郁恵, 橋本 駿, 伊藤 直樹, 上原 敬尋, 小久保 学, ...
    2024 年 61 巻 2 号 p. 155-162
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19と略す)は,世界的な流行を来した.2020年4月に国内初の緊急事態宣言が発令され,国民は不要不急の外出自粛を余儀なくされた.それに伴い年齢を問わず,自宅での滞在時間が長くなり,座位時間も増え,その結果として身体活動量の低下がみられている.しかしながら,社会的背景も含めた影響は,外来に通院している心血管疾患患者に,年代別の観点でどのような生活変化をもたらしたかについては,まだ明らかではない.したがって本研究の目的は,当院に外来通院している心血管疾患患者のCOVID-19流行前後の身体活動および生活行動の変化を年代別に調査することとした.方法:本施設の循環器外来に通院し,同意が得られた1,156名に対して,2020年秋に,COVID-19の流行前後における身体活動および生活行動の変化に関するアンケート調査を行った.年齢を3群間(65歳未満(n=114):中年者群,65~74歳(n=330):准高齢者群,75歳以上(n=712):高齢者群)に分類し,COVID-19流行前後(2019年と2020年秋)の1日の歩数,座位時間について比較検討した.結果:中年者,准高齢者群に比し,高齢者群では,BNPは有意に高値であり,3群間において左室駆出率は有意差を認めなかった.COVID-19流行前の1日歩数は,高齢者群において有意に少なく,座位時間は有意に延長していた.また,COVID-19流行前後において,全ての年齢層で1日の歩数は有意に減少し,座位時間は有意に増加した.各年齢層間でのCOVID-19流行前後の歩数,座位時間の変化量は有意差を認めなかった.結論:COVID-19の流行下の生活制限によってどの年代も身体活動量が同様に減少した.年代によりライフスタイルが異なるため,各年代に合わせた対策を講じる必要が考えられる.

  • 井田 諭, 今高 加奈子, 森井 将基, 村田 和也
    2024 年 61 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:高齢糖尿病患者における食欲低下と認知機能との関連性を検証すること.方法:対象は伊勢赤十字病院外来通院中の60歳以上の糖尿病患者とした.認知機能は,自記式認知症チェックリストを用いて評価した.食欲低下の測定には日本語版Simplified Nutritional Appetite Questionnaire(SNAQ)を用いた.従属変数を認知機能低下,説明変数を食欲低下及び調整変数としたロジスティック回帰分析を用いて,食欲低下の認知機能低下に関するオッズ比を算出した.結果:480例が本研究の解析対象となった.食欲低下ありは17%,認知機能低下は21%であった.食欲低下なしを基準とした場合,食欲低下ありの認知機能低下に関する調整前及び調整後オッズ比はそれぞれ,2.78(95% confidence interval(CI),1.66~4.65;P<0.001),2.26(95% CI,1.16~4.37;P=0.015)であった.結論:高齢糖尿病患者における食欲低下は認知機能低下に関連性が認められた.

  • 徳永 智史, 辻 大士, 藤井 啓介, 井上 大樹, 寺岡 かおり, 立岡 光臨, 庄子 拓良, 大藏 倫博
    2024 年 61 巻 2 号 p. 169-178
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:地域在住高齢者における身体活動量と1年後のアパシーの関連性を明らかにする.方法:2018年と2019年の「かさま長寿健診」に2年連続で参加した地域在住高齢者200名(平均年齢:74.3±5.0歳,女性:52.5%)を対象とした.アパシーはやる気スコア(0~42点,高いほど意欲が低い),身体活動量はPhysical Activity Scale for the Elderly(PASE),抑うつはGeriatric Depression Scale-15(GDS)で評価した.2018年のPASEは3分位にて低活動量群,中活動量群,高活動量群に群分けした.2019年のやる気スコアを従属変数,2018年のPASEを独立変数とし,性,年齢,教育年数,経済状況,肥満度(Body Mass Index:BMI),慢性疾患の有無,喫煙歴の有無,飲酒習慣の有無,身体機能,認知機能,GDS,2018年のやる気スコアを調整変数とした重回帰分析を行った.PASEの下位項目別(余暇活動,家庭内活動,仕事関連活動)でも同様に検討を行った.結果:2019年のやる気スコアの平均は低活動量群で14.0±6.2点,中活動量群で12.8±6.0点,高活動量群で10.1±5.9点であり,高活動量群は低活動量群と中活動量群に比べ有意に2019年のやる気スコアが低値であった.身体活動量とやる気スコアの関連性を検討した重回帰分析の結果では,高活動量群は1年後のやる気スコアと有意な負の関連を示した(B=-1.56,95% CI=-2.91 to -0.21, p=0.023).PASEの下位項目別では,どの活動においても有意な関連はみられなかった.結語:地域在住高齢者において,高い身体活動量はアパシーの予防に繋がる可能性がある.

  • 井田 諭, 今高 加奈子, 森井 将基, 村田 和也
    2024 年 61 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:高齢糖尿病患における社会参加の種類・参加数と認知機能との関連性を検証すること.方法:対象は伊勢赤十字病院外来通院中の60歳以上の糖尿病患者とした.軽度認知機能障害(MCI)及び認知症の評価には自記式認知症チェックリストを用いて評価した.6種類の社会参加活動,及び参加数について調査した.従属変数をMCI及び認知症,説明変数を社会参加,及び調整変数としたロジスティック回帰分析を用いて,社会参加のMCI及び認知症に関するオッズ比を算出した.結果:352例が本研究の解析対象となった.ボランティア活動(P=0.012),趣味活動(P=0.006),特技や経験を伝える活動(P=0.026),仕事(P=0.003)は認知症に有意に関連していた.社会参加数と認知症との関連性に関しては,社会参加数が2個の場合に認知症リスクの低下がみられた.一方,社会参加はMCIとは有意な関連性は認めなかった.結論:高齢糖尿病患者において,認知症リスク低下に関連する社会参加の種類及び参加数が明らかとなった.

  • 井田 諭, 今高 加奈子, 東 謙太郎, 大久保 薫, 森井 将基, 村田 和也
    2024 年 61 巻 2 号 p. 186-193
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:高齢糖尿病患者における野菜ファーストの食習慣と認知機能との関連性を検証すること.方法:対象は伊勢赤十字病院外来通院中の60歳以上の糖尿病患者とした.軽度認知障害及び認知症の評価には,自記式認知症チェックリストを使用した.対象者に野菜ファーストの食習慣に関する調査票に回答してもらい,野菜ファーストの食習慣が一日に0回,1回,2回,3回の4群に分類した.従属変数を軽度認知障害及び認知症,説明変数を野菜ファーストの食習慣(0回をreference)としたロジスティック回帰分析を用いて,野菜ファーストの食習慣の軽度認知障害及び認知症に関するオッズ比を算出した.結果:358例が本研究の解析対象となった.野菜ファーストの回数は,0回が153人(42.7%),1回が48人(13.4%),2回が46人(12.8%),3回が111人(31.1%)であった.野菜ファースト0回をreferenceとした場合の1回,2回,及び3回の軽度認知障害に関する調整後オッズ比は,それぞれ0.83(95% confidence interval(CI),0.35~1.94;P=0.680),0.81(95% CI,0.32~2.00;P=0.653),0.37(95% CI,0.17~0.81;P=0.014)であった.一方,野菜ファーストの食習慣と認知症には有意な関連性を認めなかった.結論:高齢糖尿病患者において,毎食の野菜ファーストの食習慣が軽度認知障害リスク低下と関連することが明らかとなった.

  • 谷 佳成恵, 津田 彰, 村田 伸
    2024 年 61 巻 2 号 p. 194-203
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:住宅型有料老人ホーム入居高齢者24名を対象に,抑うつ傾向と口腔機能の指標の一つであるオーラルディアドコキネシス(ODK)との間の関連性を検討した.方法:抑うつ傾向は高齢者抑うつ尺度Geriatric Depression Scale 5によって評価され,2点以上を抑うつ傾向ありとした.ODKは4つの音節課題(/pa/,/ta/,/ka/,/pataka/)によって測定され,変動係数(CV)で評価した.CVは低い値であるほど状態が良好であるとした.抑うつの交絡要因は,認知機能,主観的な睡眠状態を,ODKの交絡要因はBody Mass Index,手段的日常生活動作及び身体機能を検討した.結果:抑うつ傾向は5名(20.8%)に認められた.抑うつ傾向の有無による有意差がODK/ta/,有意傾向が/ka/に認められた.本研究のODK/ta/及び/ka/は,抑うつ有群が抑うつなし群よりも高値であった.ODK/pa/及び/pataka/に有意差は認められなかった.結論:住宅型有料老人ホーム入居高齢者において,抑うつ傾向とODK/ta/及び/ka/の不良との間に関連性を認めることが明らかとなった.抑うつ傾向によるODK/ta/及び/ka/の不良は,認知機能低下や不眠,低栄養や身体機能低下に先んじて生じることが示唆された.抑うつ傾向を発見することは,口腔機能低下の早期発見に有用であることが期待できる.

  • 鈴木 みずえ, 金盛 琢也, 内藤 智義, 稲垣 圭吾, 吉村 浩美, 御室 総一郎, 酒井 郁子, 澤木 圭介, 松下 君代, 佐々木 菜 ...
    2024 年 61 巻 2 号 p. 204-217
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:本研究の目的は急性期病院の看護師を対象に多施設ランダム化比較試験によるパーソン・センタード・ケアのプログラム(介入群)と認知症の種類別プログラム(コントロール群)のそれぞれの有効性を明らかにすることである.方法:A県内の7病院をランダムに介入群,コントロール群の2群に割り付け,2021年7月から2022年1月にe-learningにて,研究を行った.結果:本研究の対象者はコントロール群58名,介入群100名の合計158名であった.介入群,コントロール群ともに受講直後,3カ月後,6カ月後の評価値の比較では,「認知症看護に関する専門知識」「認知症に関する医学的専門知識」「認知症高齢者の看護の自信」がすべてに有意に高かった.介入群の「認知症に関する知識」,倫理的感受性尺度の「尊厳の意識」においては,ベースラインと比較した受講直後,3カ月後,6カ月後に有意な改善が認められ,さらに変化量においてコントロール群と比較しても有意に大きかった.コントロール群の「認知機能と本人に合わせた独自性のあるケア」においては,ベースラインと比較した受講直後,3カ月後,6カ月後の評価値は有意に改善し,さらに介入群と比較して変化量においても有意に大きかった.結論:看護師に対するパーソン・センタード・ケアのプログラムでは,認知症に関する知識や倫理的感受性の尊厳の意識の改善が示唆された.また,認知症の種類別プログラムでは,医学的な知識や認知機能と本人に合わせた独自性のあるケアに対して有意な効果が示唆された.今後,看護実践におけるケアの質としての身体拘束率のアウトカム評価が必要である.

  • 伊藤 真紀, 伊香賀 俊治, 小熊 祐子, 齋藤 義信, 藤野 善久, 安藤 真太朗, 村上 周三, スマートウェルネス住宅調査グループ
    2024 年 61 巻 2 号 p. 218-227
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:高齢者の転倒予防は公衆衛生上の重要な課題である.高齢者の転倒は冬季に増加し,約半数が屋内で発生するなどの報告もあるため,本研究は地域在住高齢者における冬季の室温と住宅内の年間の転倒の関連を検討することを目的とした.方法:本研究は地域在住高齢者を対象とした横断研究である.全国の住宅事業者を通して対象者を募集し,964名が参加した.冬季2週間の居間床近傍室温を測定し,覚醒在宅時間帯の平均値から,寒冷群(12℃未満),準寒冷群(12℃以上18℃未満),温暖群(18℃以上)に分類した.過去1年間の転倒経験(つまずき含む)は自記式質問票から把握した.冬季の室温と住宅内の年間の転倒の関連を,ロジスティック回帰分析を用いて検討した.目的変数は年1回以上の転倒有無,説明変数は覚醒在宅時間帯の平均居間床近傍室温とし,年齢,性別,BMI,世帯年収,心身の健康状態,身体活動,住宅環境,地域などを共変量とした.また,年2回以上の転倒有無を目的変数とした副次解析も実施した.結果:転倒と室温に欠損のない907名(平均年齢72.0±6.3歳)を解析対象とした.寒冷群は265名,準寒冷群は553名,温暖群は89名であった.年1回以上の転倒経験者は325名(35.8%)で,そのうち148名(16.3%)が年2回以上の転倒経験者であった.多変量解析の結果,温暖群は寒冷群に比べて年1回以上の転倒のオッズ比は0.49(95%信頼区間:0.26~0.94)と有意に低く,年2回以上の転倒のオッズ比も0.34(95%信頼区間:0.12~0.93)と有意に低かった.結論:冬季の居間の床近傍室温が高い住宅に居住する高齢者は,住宅内で1年間に転倒するオッズ比が有意に低かった.住宅内で長時間を過ごす高齢者にとって,冬季に良好な温熱環境を保つことは,住宅内の転倒予防に寄与する可能性がある.

  • 河口 謙二郎, 塩谷 竜之介, 近藤 克則
    2024 年 61 巻 2 号 p. 228-235
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:本研究は,介護福祉専門職のアドバンス・ケア・プランニング(ACP)ファシリテーターがACPを実践する上で感じる阻害要因を明らかにすることを目的とした.方法:2021年12月から2022年1月にかけてGoogleフォームを用いたオンラインアンケート調査を実施した.2020年度広島県ACP普及推進員養成研修修了者82人及び広島県福山市ACP推進協力員登録者138人,計220人を対象とした.調査内容は,対象者の属性等に加え,ACPの阻害要因に関する質問37項目についてそれぞれの重要度を7件法で尋ねた.看護師,医師(「看護師・医師」)と,それ以外の医療職及び介護福祉職(「介護福祉職ほか」)の2群に分けて比較した.結果:67人から回答を得た(有効回答率34.4%).介護福祉職ほかのACPの阻害要因として,1)ACPの知識不足,2)ACPの実施に関して自分よりも他職種が適しているという考え,3)制度・環境面から意向の実現が困難,が明らかになった.看護師・医師は,時間不足を重要な阻害要因として感じていた.1)職種に応じたACPへの関わり方の明確化,2)職種に応じた教育機会の拡充,3)ACPの意思決定プロセスを支援するツールの活用,4)情報共有システムの基盤構築といった対策が,介護福祉専門職のACPファシリテーターによるACPの実施促進に有効と考えられる.結論:本研究で明らかになった阻害要因に対する対策を講じることで,介護福祉専門職のACPファシリテーターによるACPの実践が促進され,地域においてACPは普及していくと期待される.

症例報告
  • 梅川 康弘, 大橋 啓司
    2024 年 61 巻 2 号 p. 236-241
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    患者は87歳の女性で,全身倦怠感,食思不振,前胸部痛や悪心が見られるようになったため近医を受診し,検査や投薬を受けたが,改善が認められないため,当科を紹介され入院した.精査の結果,たこつぼ型心筋症と吻合部潰瘍が認められた.入院時血液検査で血清Clが118 mmol/Lと高値であったが,血清Naは139 mmol/Lで,アニオンギャップは-3.3 mmol/Lと負の値を呈していた.偽性高クロール血症と考え,改めて病歴を聴取したところ,頭痛のためブロムワレリル尿素を含む市販解熱鎮痛薬を常用していることが判明した.

    入院11日目に血中臭素濃度を測定したところ331.2 mg/Lと高値であった.当該市販薬内服を禁止し,いったんは全身状態が改善し,血清Clも低下したが,慢性頭痛のため内服を再開したため,血清Clが再上昇を繰り返し,退院後1年半を過ぎたころから倦怠感,呼吸困難感,食思不振が出現したため第2回入院となった.この時の血中臭素濃度は431.5 mg/Lと著増していた.当該市販薬を飲まないように指導はしていたが,血清Clが基準値内で推移し,血中臭素濃度が十分低下するまでには2年以上を要した.市販薬の中にも依存性を持つブロムワレリル尿素を含むものがあり,薬物濫用に関して十分注意しておく必要がある.また,原因のはっきりしない倦怠感などの非特異的症状があり,高Cl血症が認められる場合は臭素中毒を念頭に詳細な病歴聴取が肝要である.

短報
  • 富樫 千代美, 鈴木 みずえ, 原田 あけみ, 丸谷 宏
    2024 年 61 巻 2 号 p. 242-244
    発行日: 2024/04/25
    公開日: 2024/06/04
    ジャーナル 認証あり

    目的:本研究の目的はミトン装着している認知症患者に対して認知症マフ(マフ)の活用によるミトン装着解除の実態とその関連要因を明らかにすることである.方法:2021年12月~2022年12月の12カ月間にA病院の認知症日常生活自立度判定III以上のミトン装着またはミトン装着の使用を検討中の認知症患者76名にマフを活用した.結果:ミトン装着解除は47名(61.8%)であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,ミトン装着解除を有意に促進するのは,強制把握(あり),マフ導入開始病日(短い),Clinical Dementia Rating(CDR)(重度)であることが明らかになった.結論:マフを活用することで,ミトン装着解除できることが示唆された.

講座紹介
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