日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
結核性子宮留膿症と結核性胸膜炎を併発した高齢者の1例
橋田 英俊花山 宜久本田 俊雄相原 泰
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キーワード: 不明熱, 子宮留膿症, 結核
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2004 年 41 巻 1 号 p. 117-120

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抄録
症例は84歳女性. 2002年6月19日より軽度の倦怠感と37℃台の発熱が出現した. クラリスロマイシン3日間の内服で解熱せず, 倦怠感が増強したため当院内科に入院した. 炎症所見は認めるが血液, 画像検査 (胸腹部CT等) 上原因は確定されなかった. ツベルクリン反応は陽性であったが肺結核を示唆する症状はなかった. セフォチアム, イミペネムシラスタチンナトリウムの投与は無効であった. 婦人科にて子宮留膿症と診断され, 排膿後に連日の子宮腔洗浄を施行し, さらに貯留物の培養の結果 (同定はできなかったが少量のグラム陰性球菌が検出された) よりセブピロムを投与したところ徐々に解熱したが, 軽度の炎症所見は残存した. 7月24日に退院後も貯留物が増加するため, 排液と洗浄を繰り返していたが軽度の炎症所見が持続し, その後9月17日より発熱したため再入院した. 入院後フロモキセフナトリウムの投与を開始したが改善傾向を認めなかった. 9月30日に施行した胸部CT検査にて少量の左側胸水が新たに出現しており, 胸腔穿刺にて淡血性やや濁の滲出液を採取した. 胸水の結核菌塗抹, 結核菌DNA/PCRは陰性であったが胸水中のアデノシンデアミナーゼが87.4U/lと高値を示したため, 結核性胸膜炎と診断した. また子宮貯留物の結核菌DNA/PCRが陽性であり, 抗結核薬の投与にて再貯留しなくなったことから結核性子宮留膿症の合併と診断した. 特に高齢者の場合, 婦人科的症状がなくても不明熱の原因として子宮留膿症を鑑別に入れること, また原因菌として結核菌も考慮することが重要であると思われる.
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