日本大腸肛門病学会雑誌
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Trichloroethylenの使用中に発生したPneumatosis Cystoides Coliの1例
大多和 史絵森脇 稔重松 恭祐吉井 克己落合 匠鈴木 隆文岩淵 正之結束 敬基岡野 匡雄
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1994 年 47 巻 6 号 p. 492-497

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抄録

今回,れわれはtrichloroethylenの使用中に発生したpneumatosis cystoides coliを経験したので報告する.症例は55歳,男性,健康診断にて便潜血陽性を指摘され精査目的で当院を受診した.職業は金属メッキ業でtrichloroethylen(以下TCE)を使用していた.腹部X線にて円形蜂窩状のガス像を,注腸造影ではS状結腸から下行結腸に多発性の小隆起生病変を認めた.またCTにて結腸壁内に空気と同様のCT値を有する多発性隆起性病変を認めた。大腸内視鏡においても粘膜面正常の嚢胞様隆起が多発していた.生検組織所見は粘膜筋板に接して嚢胞形成が見られ,内腔側は多核巨細胞に覆われていた.以上よりpneumatosis cystoides coli(以下PCC)と診断した.PCの発生機序には細菌説,機械説などが唱えられているが,近年では有機溶剤TCEも注目されている.自験例においてもTCEの関与が強く疑われた.

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