目的:閉塞性大腸癌に対する自己拡張型金属ステント(self-expandable metallic stent:SEMS)留置の有用性を検討するため,緊急手術群と比較した後方視的研究を実施した.
方法:2011年4月~2023年3月に当院で手術またはSEMS留置を施行した181例を対象とし,患者背景,術後合併症,長期予後を後方視的に検討した.
結果:BTS(bridge to surgery)群は緊急手術群に比べ,腹腔鏡手術施行率が高く,永久人工肛門造設率が低かった.術後合併症や在院日数に有意差はなかった.3年全生存率および無再発生存率にも有意差を認めなかった.
結語:SEMS留置は待機的手術を可能にし,低侵襲手術の適応拡大に寄与した.一方で長期予後への影響は不明であり,さらなる前向き研究が求められる.
疣状癌は表層の細胞異型が乏しく,良性疣贅様病変との鑑別が困難な高分化型有棘細胞癌であり,肛門部での発生は稀である.今回われわれは,初診時に悪性を疑いながらも生検で確定診断に至らず,診断的治療として局所切除を施行し,術後病理にて肛門管疣状癌と診断された2例を経験した.いずれも腫瘍は肛門外側に限局し,NBI観察では角化のため血管像が不明瞭で,生検では表層異型に乏しく偽陰性であった.本疾患の術前診断は困難であり,深部組織の十分な検体採取が重要である.治療は十分なマージンを確保した局所切除が有効と考えられた.
症例は74歳女性,30歳代で開腹虫垂切除術の既往がある.腎結石の精査で施行した腹部CTで偶発的にS状結腸近傍の腸間膜内に39mm大の腫瘤像を指摘され,GIST疑いで当科紹介となった.下部消化管内視鏡検査で粘膜面に異常所見を認めず,PET/CT検査で腫瘤に一致したFDGの異常集積像を認めていた.術前診断は神経鞘腫やGISTを鑑別として腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.病理結果はforeign body granulomaであった.術前診断に難渋する腹腔内腫瘤のうち,PET/CT検査でFDG異常集積を伴う場合は,foreign body granulomaを鑑別の1つとして考慮すべきであると思われた.
成人腸重積症はまれであり,悪性腫瘍が原因となることが多い.今回,大腸癌による成人腸重積症の3例を経験したので報告する.症例1は84歳女性.他院で高度貧血を指摘され受診し,CTで盲腸腫瘍が上行結腸に嵌入する腸重積を認めた.内視鏡,注腸による整復は困難で腸重積のまま待機的に腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.症例2は50歳女性.腹痛を主訴に受診し,CTで盲腸腫瘍が横行結腸まで嵌入する腸重積を認めた.注腸整復後に待機的腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.症例3は81歳女性.直腸脱を主訴に受診,脱出腸管先進部に腫瘍を認めた.整復不能のため直腸脱状態のまま待機的腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.全例とも術後経過は良好であった.成人腸重積では診断不十分のまま緊急開腹手術となる場合も多いが,今回2例は非整復のまま,1例は非観血的整復後に待機的腹腔鏡下手術を施行し,いずれも良好な経過をえたので報告する.