【目的】pStageII大腸癌の再発に関連する因子で予後予測モデルの作成をする.【対象と方法】2010年1月-2020年3月に根治術後のpStageII大腸腺癌を2:1に開発,検証コホートに割り付けた.開発コホートの再発の多変量解析からスコアを作成し,ROC曲線のカットオフ値を境に2群に分けた.検証コホートで両群の再発率,長期成績と術後補助化学療法の関連の検討をした.【結果】開発コホートの解析から男性1点,直腸病変1点,CEA≧5ng/ml 2点,静脈侵襲陽性1点,神経侵襲陽性3点とし,0-4点をLR群,5-8点をHR群とした.検証コホートのLR/HR群で再発率は5.7/23.1%(p<0.01)と有意な差を認め,RFSはHR群で有意に不良(p<0.01)だった.HR群で術後補助化学療法でRFSの改善がみられた.【結語】本モデルはpStageII大腸癌再発高リスク群予測に有用と考えられた.
目的
脾弯曲部結腸癌におけるリンパ節転移の分布および長期成績を検討し報告する.
対象・方法
2008年4月から2022年12月までに脾弯曲部結腸癌(横行結腸遠位1/3から下行結腸近位1/3)にD2/D3郭清を伴う鏡視下手術を行った88例を対象とした.
結果
腫瘍占居部位は横行結腸38例,下行結腸50例.pStageIII症例のうち222-ltに1例,232に3例転移を認め,aMCA領域リンパ節(222acc)と223,253は転移を認めなかった.StageII/IIIでリンパ節再発を2例認めた.T4b症例の小腸間膜リンパ節再発と副中結腸動脈が術前に認識されず未郭清症例の222accのリンパ節再発であった.
結語
脾弯曲部結腸癌の手術において副中結腸動脈の有無を認識し,これが腫瘍の支配動脈となっている場合には222accの郭清が重要である.
症例1:80歳代男性.右下腹部痛を主訴に来院し,腹部CT検査で虫垂腫大を認め,急性虫垂炎と診断し,虫垂切除術を行った.術後病理組織検査では,虫垂内腔は線維性成分と小型の類円形核を有する細胞で閉塞しており,免疫組織学的検査では同細胞はS100,CD56陽性であり,虫垂神経腫と診断された.
症例2:80歳代男性.右下腹部違和感に対する腹部CT検査で虫垂粘液腫と診断し,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.術後病理組織検査では,症例1と同様の所見であり,虫垂神経腫の診断となった.
虫垂を原発とする神経腫は特徴的な検査所見がなく術前に診断に苦慮することが多く,正確な術前・術中診断法の開発が今後の課題となる.
【背景】本研究は,潰瘍性大腸炎(UC)に対して腹腔鏡下大腸全摘術もしくは大腸亜全摘術を施行した症例の短期成績と,栄養指数·大腰筋断面積との関連を後方視的に検討した.
【方法】2012年1月から2023年3月までにUCに対して腹腔鏡手術を受けた30例のうち,潰瘍性大腸炎関連腫瘍8例を除いた22例を本研究の対象とした.栄養状態の評価には小野寺のPNI,サルコペニアの評価には大腰筋断面積を用いて,低栄養およびサルコペニアが手術成績に及ぼす影響を解析した.
【結果】低栄養群とサルコペニア群では,術後合併症が多く,入院期間が長くなる傾向がみられた.しかし,手術時間や術中出血量には両群間に有意差は認められなかった.
【結論】低栄養やサルコペニアのUC患者への腹腔鏡下手術は許容されるが,周術期の管理には十分な注意が必要であると考えられた.