日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
最新号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 佐々木 義之, 尾原 伸作, 錦織 直人
    2024 年 77 巻 8 号 p. 433-436
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    ジャーナル フリー

    【目的】85歳以上の高齢者に対する,人工靭帯であるLeeds-Keio Mesh(以下LKM)を用いたGant-Miwa Thiersch法による直腸脱根治術(以下LKM-GMT)の成績を検討する.【対象と方法】2012年1月から2022年10月まで当院にてLKM-GMTを施行した85歳以上の直腸脱手術症例35例に対して周術期および術後成績について検討した.【結果】年齢の中央値は88歳で全例女性であった.腸管脱出長の中央値は7cmで,手術時間の中央値は35分であった.周術期合併症は認めず,人工靭帯の遅発性感染を1例認めた.再発は2例認めたが,いずれもGMTにLKMの追加挿入で根治した.便失禁は術前から23例認めたが,術後便失禁は11例で消失し,新たな便失禁は認めなかった.便秘は内服薬でコントロール可能で,長期に排便困難となった症例はなかった.【結語】LKM-GMTは超高齢者に対する直腸脱根治手術における選択肢となりうる.

症例報告
  • 南角 哲俊, 眞部 祥一, 今井 健一郎, 小俣 渡, 大石 琢磨, 塩見 明生, 賀川 弘康, 山岡 雄祐, 田中 佑典, 笠井 俊輔, ...
    2024 年 77 巻 8 号 p. 437-444
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    ジャーナル フリー

    症例は58歳男性,血便と肛門痛を主訴に当科を受診した.肛門部皮膚に境界明瞭な紅褐色斑および可動性良好な結節を認めた.生検にてpagetoid spreadを伴う肛門管癌と診断した.画像検査では浸潤癌の所見を認めず,明らかなリンパ節転移・遠隔転移も認めなかった.また,大腸内視鏡検査では生検の結果病変の局在範囲は歯状線から口側1cm程度にとどまっていた.以上より,肛門周囲皮膚の切除と肛門・直腸の粘膜下層での切除で根治切除および肛門機能温存が可能であると判断し,3科合同(大腸外科,内視鏡科,皮膚科)で,内視鏡的粘膜下層剥離術,肛門周囲皮膚切除術,経肛門的局所切除を施行した.経過良好で第7病日に退院し,術後2年現在再発なく経過している.Pagetoid spreadを伴う肛門管癌に対して経肛門的局所切除にて根治切除を得た報告は少なく,比較的まれな症例を経験したため若干の文献的考察を加え報告する.

  • 相原 一紀, 山寺 勝人, 梶原 由規, 岡本 耕一, 田代 恵太, 曽田 悠葵, 川内 隆幸, 菊家 健太, 田代 真優, 廣瀬 裕一, ...
    2024 年 77 巻 8 号 p. 445-450
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    ジャーナル フリー

    症例は75歳女性.便潜血陽性の精査目的で施行された大腸内視鏡検査にてS状結腸癌を指摘された.既往歴である全身性エリテマトーデスに対してステロイドと免疫抑制剤を内服していた.S状結腸癌cT1b cN0 cM0 cStageIの診断にて腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.第6病日にドレーンを抜去後,第7病日に嘔吐し,各種検査より麻痺性イレウスが疑われたため,イレウス管による腸管減圧を開始した.第10病日に左下腹部痛が出現し,CTにて5mmポートサイト直下にRichter型小腸ヘルニアを疑う所見を認め,緊急手術の方針とした.開腹すると,左下腹部5mmポートサイトの腹壁に小腸が嵌頓していた.嵌頓を解除した後,小腸部分切除術を施行した.術後経過良好にて第39病日に退院となった.今回,5mmポートサイトヘルニアを認めた症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 武田 泰裕, 栗原 英明, 岡本 敦子, 阿部 正, 小山 能徹, 中野 貴文, 高野 靖大, 髙田 直樹, 大熊 誠尚, 小菅 誠, 吉永 ...
    2024 年 77 巻 8 号 p. 451-456
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    ジャーナル フリー

    患者は55歳,男性,主訴は下腹部痛と排尿時痛.腹部CTで臍から膀胱頂部に連続する低吸収域を認め,同低吸収域はS状結腸との連続も認めた.また気尿・糞尿所見より,S状結腸膀胱瘻または尿膜管瘻の診断で手術の方針とした.術中所見では尿膜管とS状結腸憩室部に連続を認め,瘻孔切除を含めた腹腔鏡下S状結腸切除術および尿膜管摘出術を施行した.病理組織学検査よりS状結腸憩室・尿膜管憩室瘻と診断した.腸管と瘻孔を形成する尿膜管遺残は非常にまれである.今回,腹腔鏡下に切除しえたS状結腸憩室尿膜管瘻の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

臨床研究
  • 木村 聖路
    2024 年 77 巻 8 号 p. 457-468
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    ジャーナル フリー

    過去5年未満に検査された内視鏡後発見癌(PCCRC)38例は通常発見癌928例に比べて右側に局在し(p<0.005),著しく小さく(p<0.0001),2型以外の形態が多く(p<0.001),深達度は浅く(p<0.005),臨床病期の早い見逃しやすい浸潤癌であった.PCCRC患者38例の前回内視鏡所見では35例(92.1%)に腫瘍性病変が既存した.微小腺腫放置11例,6mm以上の腺腫,粘膜内癌切除13例の合計24例71病変(63.2%)にて16例56病変66.7%は右側局在,20例67病変83.3%は多発病変,16例66.7%はPCCRCの発生部位と同区域に既存した.未切除病変患者12例中2例16.7%はPCCRCに進展した.前回浸潤癌切除11例11病変(28.9%)中45.5%は右側,63.6%は30mm未満,36.4%は2型以外,45.5%はT1,T2でPCCRCに類似していた.

  • 荒木 吉朗, 渡部 晃大, 花田 圭太, 加川 隆三郎
    2024 年 77 巻 8 号 p. 469-475
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    ジャーナル フリー

    解剖学において広義の会陰は前方の尿生殖三角と後方の肛門三角に分けられる.2年間の痔瘻根治手術症例122例を尿生殖三角領域の痔瘻と肛門三角領域の痔瘻に分類,検討した.男性の陰嚢進展型痔瘻12例と,女性の浅会陰横筋経路痔瘻2例ならびに球海綿体筋経路痔瘻1例が,尿生殖三角領域の痔瘻に該当した.尿生殖三角領域の痔瘻は前方原発のII型深めもしくは浅外肛門括約筋レベルのIII型痔瘻であった.前方原発の痔瘻が尿生殖三角領域に進展するとは限らず,前方原発痔瘻のうち,尿生殖三角領域の痔瘻は1/3,肛門三角領域の痔瘻は2/3であった.ほとんどの痔瘻は肛門三角領域に分類されるため,従来の隅越分類による分類は臨床的には妥当である.尿生殖三角領域の痔瘻は少数ではあるが,隅越分類による記載のみでは不十分で,性差やその特徴的な解剖を念頭に置いた記載や手術を行う必要がある.

  • 谷村 修, 荒木 靖三, 別府 理智子, 平瀬 りさこ
    2024 年 77 巻 8 号 p. 476-482
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/25
    ジャーナル フリー

    本邦では痔瘻の手術は開放術(Lay open),括約筋温存痔瘻根治術,Seton術など様々な術式が広く行われている.肛門機能温存と根治性の両立が理想であるが,程度の差はあれ術後の機能障害や再発症例も日常臨床にてしばし遭遇する.これまで考案された数々の痔瘻の術式は肛門機能とその根治性の両立を追い求めた歴史でもある.

    われわれが行っている痔瘻手術は痔瘻部位およびその痔瘻の型に左右されず,膿瘍期の原発巣の開放を含めたドレナージルートを作成した後,内肛門括約筋内で1次瘻管を結紮離断しさらに粘膜下を剥離し1次口を有する陰窩の離断を行う(2段階離断法).

    2019年5月~2024年2月まで当院での痔瘻根治手術はTotal 360例である.そのうち1次瘻管結紮離断術症例は182例(再発9例)であり,1次瘻管結紮離断術に加えて陰窩離断を追加した2段階離断法を施行したものは59例(再発1例)であった.

    術後の機能障害も軽度であり根治性を得られており,この方法はあらゆる痔瘻に対して有効な手技の1つであると考えている.

第48回日本大腸肛門病学会九州地方会
第28回大腸肛門機能障害研究会
編集後記
feedback
Top