1998 年 51 巻 4 号 p. 248-253
症例は69歳,男性.下痢,粘血便を主訴に来院.大腸内視鏡検査では,直腸からS状結腸に平盤状,タコイボ状ないし芋虫状の多発隆起性病変を認めた。病変の表面は発赤が強く一部には粘液の付着が見られたが,介在粘膜は正常であった.当初は分類不能型大腸炎や粘膜脱症候群(MPS)診断したが,難治性のため組織所見を再検討したところ,陰窩の延長と粘膜表面に帽子状の炎症性肉芽組織(いわゆるcap)の付着がみられ,最終的にCap polyposisと診断した.組織所見や直腸肛門機能検査所見,metronidazolの有効性より,病因としては下部大腸の運動機能異常や免疫学的異常の関与が疑われた.
本症はMPSの類縁疾患と考えられているが詳細は不明であり,自験例は下部大腸の機能異常を捉えた貴重な症例と考えられた.