日本作物学会紀事
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直播水稲の耐倒伏性に関与する生理生態的形質 : 第3報 根の土壌中分布特性と耐ころび型倒伏性との関係
寺島 一男秋田 重誠酒井 長雄
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1995 年 64 巻 2 号 p. 243-250

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抄録

水稲における根の土壌中分布特性と耐ころび型倒伏性との関係を明らかにするために, 耐ころび型倒伏性程度の弱い日本の品種とこれの強いアメリカ合衆国の品種を用い, 断根処理, 作土下層への不織布埋設処理が押し倒し抵抗値に及ぼす影響を調査した. また, 土壌の充填密度をかえたポットで同じ材料を栽培し, 根重と押し倒し抵抗の上壌密度に伴う変動を調査した. 5cmの深さまでの浅い層に伸長する根を切断した場合の押し倒し抵抗の低下は比較的小さかったが, 10cmまで切断すると押し倒し抵抗が顕著に低下した. また, 5~10cmの深い部分の根が切断される場合, 単位根重あたりでみた押し倒し抵抗の低下度は, 5cmまでの断根処理に比べて大きい傾向が認められた. さらに, 作土下層に不織布を埋設すると, 押し倒し抵抗が低下する傾向がみられ, とくに心土層への根の分布量の多い品種ほど低下の程度が大きかった. 心土層中の根の単位根重当り押し倒し抵抗値は, いずれの品種においても作土層中の根に比べて大であった. 一方, 高密度で土壌を充填したポット内に生育した株は, 低密度で充填したポットの株より単位根重当りの押し倒し抵抗値が高くなった. 以上から, 水稲の耐ころび型倒伏性の改善には, 土壌密度の高い心土層へ根を多く分布させる特性が重要と判断された.

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