日本作物学会紀事
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研究論文
栽培
  • 白土 宏之, 伊藤 景子, 今須 宏美, 大平 陽一, 川名 義明
    2020 年 89 巻 3 号 p. 185-194
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    水稲の無コーティング種子代かき同時浅層土中播種栽培に適した播種後水管理を明らかにするために,耐倒伏性の強い水稲品種「萌えみのり」を用いて,播種後水管理が苗立ちや収量等に与える影響を検討した.秋田県にある東北農業研究センター大仙研究拠点圃場において,2013〜2017年に水管理処理として,湛水区,湛水後落水区 (7日湛水後5〜7日落水),短期落水区 (播種後7〜8日落水),長期落水区 (播種後12〜13日落水) の4水準を設け,苗立ちや収量等を調べた.苗立率は長期落水区が湛水区と湛水後落水区より多い傾向が見られた.生育や収量,品質は処理間で大きな違いはなかったが,倒伏程度は湛水区が短期落水区より大きかった.2014〜2016年に秋田県内の現地圃場2箇所で,水管理処理として,湛水後落水区 (8日湛水後3〜12日落水) と落水区 (8〜15日落水) の2水準と,対照として鉄コーティング直播区を設け (2014年を除く),苗立ちや収量等を調べた.同じ白化茎長で比較すると,所内試験と同様に落水区が湛水後落水区より苗立率が高い傾向が見られ,生育,倒伏程度,収量,品質は落水区と湛水後落水区に大きな違いは見られなかった.本栽培法は鉄コーティング直播より初期の葉齢が大きく,苗立率や収量等は同程度であった.以上より,本栽培法では播種後12日間程度落水するのがよいと考えられた.また本栽培法は鉄コーティング直播と同程度の実用性が認められた.

  • 内田 多江子, 高橋 肇, 稲葉 俊二, 吉岡 藤治, 高橋 飛鳥, 杉田 知彦, 荒木 英樹, 水田 圭祐
    2020 年 89 巻 3 号 p. 195-202
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    はだか麦は子実中のβ-グルカンの含有率がもち性品種のほうがうるち性品種よりも高いことで知られている.また,β-グルカン含有率は窒素を穂肥や開花期追肥といった後期重点型で施用することで高まることも知られている.本研究ではもち性品種がうるち性品種に比べてどのようにして子実のβ-グルカン含有率が高まるのか,後期重点型の窒素増施によって登熟期間中にどのようにして高まるのかを明らかにした.窒素施肥に関しては (1) 元肥と分げつ肥を施用した対照区に対して,(2) 元肥と分げつ肥に加えて穂肥を施用した穂肥追肥区と (3) さらに開花期追肥を行った穂肥+開花期追肥区の2つの後期重点型窒素増施区を設けた.もち性品種の「キラリモチ」はうるち性品種の「トヨノカゼ」よりも子実のβ-グルカン含有率が高かった.また,両後期重点型窒素増施区は対照区よりも穂数,子実収量が増加した.β-グルカン含有率は開花期後42日目では「キラリモチ」が「トヨノカゼ」よりも高く,また,「キラリモチ」では後期重点型窒素増施区が対照区よりも高かった.一方で,開花期後28日目では品種間・施肥処理区間に違いはみられなかった.「キラリモチ」では開花期後42日目において対照区は成熟期となったが,後期重点型窒素増施区では成熟に至らない分げつが多かった.

  • 高田 兼則, 谷中 美貴子, 伴 雄介, 加藤 啓太, 大楠 秀樹, 田中 智樹
    2020 年 89 巻 3 号 p. 203-210
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    デュラムコムギ品種 「セトデュール」は, 日本で初めて育成されたデュラムコムギ品種である.デュラムコムギは優れた加工適性のためにパン用コムギと同様に高い子実タンパク質含有率が重要であり,「セトデュール」の栽培においても子実タンパク質含有率を高めるための栽培方法が必要である.そこで,2016/2017年と2017/2018年の2作期に,止葉展開期以降に窒素追肥時期を変えた試験1 ,開花期に窒素追肥量を変えた試験2,分げつ肥を施用せず,穂肥と止葉展開期に増量追肥した試験3を行い,収量や子実タンパク質含有率等の品質への影響を調査した.試験1では窒素追肥時期を止葉展開期,出穂期または開花期にした場合,収量は有意な差はなかったが,子実タンパク質含有率は開花期の施用で止葉展開期より有意に高かった.試験2では収量は開花期の窒素追肥量による有意な差はなかったが,窒素追肥量が増えると子実タンパク質含有率は有意に増加し,窒素追肥1 g m–2あたり約0.4ポイント増加した.試験3では慣行分施に対して収量は穂肥の増量により有意に増加した.また,慣行分施に対して穂肥と止葉展開期の両方を増量すると収量と子実タンパク質含有率の両方が増加した.これらの収穫物を用いて加工適性試験を行うと,開花期の窒素追肥0 g m–2で子実タンパク質含有率が10%未満の 「セトデュール」では製粉時にセモリナ生成率の低下やセモリナ粉砕率の増加など製粉への影響がみられたほか,スパゲッティの官能試験で食感が明らかに低下した.

品種・遺伝資源
  • 中込 弘二, 藤本 寛, 神田 則昭, 福嶌 陽, 笹原 英樹, 重宗 明子, 出田 収
    2020 年 89 巻 3 号 p. 211-217
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    SP1遺伝子の変異により極短穂性を示す品種は,牛が消化しにくい籾が少なく,茎葉が多収であるため稲発酵粗飼料用として期待されているが,同様の理由から効率的な種子生産方法の開発が課題となる.現在までに,極短穂性を示す品種の種子生産方法の検討が行われているが,「たちすずか」で有効とされる栽培処理が,必ずしも「たちあやか」では有効ではない.本試験では,極短穂性品種において種子収量への寄与率が高い一穂籾数に着目し,「たちあやか」の一穂籾数に対して影響を及ぼす要因の解明のため,これまでに検討が行われている栽培処理の効果を確認するととともに,標高や緯度の異なる様々な地域で栽培された試料の調査や標高が異なる試験地を要因とした直交表試験を行った.その結果,一穂籾数と出穂30~11日前の日最低気温の平均との間に高い負の相関が認められた.また,出穂29~10日前の20日間に異なる水温の水に「たちあやか」を栽培したポットを浸す処理を行った結果,冷水区で温水区より有意に一穂籾数が多くなった.以上のことから,幼穂分化期から幼穂が伸長する時期の温度が「たちあやか」の一穂籾数に影響を及ぼすことが明らかとなり,この時期の温度が低いほど,一穂籾数が多くなるものと考えられた.

作物生理・細胞工学
  • 岩橋 優, 田中 佑, 本間 香貴, 齊藤 大樹, 奥本 裕, 白岩 立彦
    2020 年 89 巻 3 号 p. 218-223
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    シロイヌナズナにおいて開花を制御する遺伝子Flowering Locus TFT)が気孔の開口を促進することが明らかになっている.本研究では,FTのイネにおけるオーソログである出穂期遺伝子Hd3aの変異体GP2を用い,個葉および群落の蒸散速度を調査した.2012,2013年にポットおよび圃場試験でガス交換測定を行い2013年には熱画像カメラを用いた群落表面温度の測定を7月上旬から下旬にかけて継続的に行った.GP2は野生型銀坊主に比べ気孔コンダクタンスが低かった一方で葉の背軸側の気孔密度に有意差はなかったことから,気孔の開度が低下していると考えられた.群落表面温度は7月下旬の午後に銀坊主に対しGP2の値が高くなった.群落表面温度と微気象データを用いて銀坊主群落に対するGP2群落の蒸散速度比を算出したところ,複数の測定日に GP2において相対的に蒸散速度の低下がみられた.以上よりGP2は幼穂分化期に蒸散速度を低下させ,午後の群落蒸散速度の低下にはHd3aの発現量の日変化が関連している可能性もあった.本研究により出穂期遺伝子Hd3aは個葉および群落の蒸散速度やその日変化に影響を与えることが示された.

研究・技術ノート
  • 杉本 充, 辻 康介, 森 大輔, 蘆田 哲也, 岩川 秀行, 安川 博之
    2020 年 89 巻 3 号 p. 224-235
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    京都府の丹波黒ダイズ系エダマメ品種「紫ずきん3号」について,発芽率が高い種子が多く得られる作型の開発を試みた.播種期が遅いほど精子実重が少ないものの,裂皮粒の減少によって,粗子実に対する精子実重歩留まりが向上し,発芽率は高かった.本研究の結果から,京都府内においては7月5~10日以降が安定して高い発芽率が得られる播種期と考えられた.栽植密度が3.1~6.3株 m–2の範囲では,密植にするほど多収となった.加えて,表面が白色で裏面が黒色の白黒ダブルマルチを敷設すると,精子実百粒重が増加し,さらに収量が増した.これには,土壌水分の保持が影響したものと考えられた.一方,発芽率や収量に対する登熟期間中のCaや尿素の葉面散布処理の効果は,本研究の範囲においては明確ではなかった.

  • 三浦 恒子, 加藤 雅也, 進藤 勇人, 薄井 雄太
    2020 年 89 巻 3 号 p. 236-244
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    水稲栽培においては規模拡大の中で省力化が求められ,移植栽培では特に育苗の省力が求められるが,秋田県においては安定生産の観点から中苗移植栽培が多い.そのため省力と安定生産の両立を目的に2014年~2016年に秋田農試において試験を実施した.水稲品種「あきたこまち」と「めんこいな」を用いて,育苗箱への播種量を乾籾換算で180 gとして育苗用ビニルハウスにおいて無加温で育成した苗は,播種量を100 gとして同様に育成した慣行の中苗と比較すると,葉齢は0.3~0.8少ないものの4.0以上を示し,中苗相当となった.移植に用いた育苗箱枚数は,慣行の中苗の64~77%と少なく,省力化が図られた.水田に移植後の生育は,慣行の中苗と比較して,分げつの発生が1つ上位節までみられ,発生数は多かった.2次分げつの発生数も多く,最高分げつ期の茎数は多くなり,穂数は多くなった.幼穂形成期から成熟期までの生育ステージは0日~3日の遅れで,同程度と考えられた.登熟期間中の葉色は同等から高く維持された.試験した3カ年において穂数が多く総籾数が増加したことから収量は同等から多く,玄米品質である整粒率と精玄米タンパク質含有率は同等で収量増加による品質低下はみられず,省力と安定生産を両立する栽培技術として実証できた.

  • 島崎 由美, 関 昌子
    2020 年 89 巻 3 号 p. 245-251
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    硝子質粒は精麦用オオムギの品質を低下させる重要な要因であるが,止葉抽出から開花期頃の生育後半の窒素追肥により増えやすい.また,もち性オオムギはうるち性オオムギよりも硝子率が高まりにくい.そのため,もち性オオムギでは後期重点施肥や多肥栽培を行っても,硝子率を低く維持しながら増収することが期待できる.そこで本研究では,新潟県においてもち性オオムギ品種「はねうまもち」とその原品種である「ファイバースノウ」を後期重点施肥法により栽培し,その収量と品質に及ぼす影響について検討した.施肥処理区を基肥重点の施肥法である「標準区」,後期重点施肥法として基肥を減らし追肥割合を増やした「追肥重点区」,さらに追肥重点区から追肥量を増やした「追肥増量区」の3水準設けた.追肥重点区は,標準区に比べて穂数,全重,1穂整粒数が多くなった結果,収量が多かった.後期重点施肥では小穂数が決定する越冬前や越冬後の植物体中の窒素濃度が高まった結果,全小穂数が増えたと推察された.また,追肥重点区では止葉抽出期追肥によって下部不稔率が減少した結果,1穂整粒数が多くなった.硝子率は後期重点施肥にすると高く,施肥量が多いと高くなったが,「はねうまもち」が「ファイバースノウ」よりも明らかに低かった.以上の結果から,「はねうまもち」は,後期重点施肥を取り入れた多肥栽培で品質を損なわずに増収することを確認した.

速 報
  • 提箸 祥幸, 林 怜史, 保田 浩
    2020 年 89 巻 3 号 p. 252-253
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    北海道の水稲品種「おぼろづき」と「きたあおば」 の移植直前の苗への低温処理が収量に与える影響について調査した.2016年,2017年の調査では,温室で育苗した苗に低温処理を行った処理区で,個体あたりの玄米重が両品種ともに無処理区と比べて増加した.2018年の調査では,硬化処理を行ったハウス育苗の苗を対照として低温処理の効果を調べたところ,「おぼろづき」では低温処理により収量が増加した.本調査結果は,移植直前の苗の低温処理が安定した収量を確保するために重要である可能性を示した.

  • 澤田 寛子, 松﨑 守夫
    2020 年 89 巻 3 号 p. 254-255
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    水田転換畑での冬作コムギ作付けの有無が,後作ダイズの生育に及ぼす影響を解明するため,ダイズの根粒着生に着目して解析した.ダイズの根粒着生量は,冬季休閑区と比較して冬季にコムギを栽培した区で高く,前作コムギの作付けがダイズの根粒着生を促進することが示された.一方,地上部生育には前作の有無による差はほとんど見られなかった.根粒着生量の差異にもかかわらず同等の乾物生産が得られたことから,冬季休閑体系のダイズは地力窒素をより多く収奪している可能性が示唆された.

  • 千葉 雅大
    2020 年 89 巻 3 号 p. 256-257
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    水稲は,出穂直後のフェーンにより,穂が白化して白穂となり,収量と品質が低下する.フェーンに対する新たな対策技術の開発を目指して,パラフィン入肥料を出穂直後の穂に散布した.その結果,試験を行ったパラフィン濃度0.6~0.03%の範囲で,フェーンによる穂の白化が抑制された.この効果は,パラフィンの濃度が高いほど大きく,実用上は0.15%が最適濃度と判断された.また,パラフィン入肥料のパラフィン成分や肥料成分の違いによる白化抑制効果の差異は認められなかった.

  • 森田 茂紀, 髙槗 拓真, 石島 雄大, 長谷川 文生, 芋生 憲司, 金井 一成
    2020 年 89 巻 3 号 p. 258-259
    発行日: 2020/07/05
    公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    石油枯渇対策や地球温暖化対策の一つとして,バイオマスエネルギーが注目されており,著者らは,不良環境下でも高バイオマス生産性を示すエリアンサスに着目し,栽培研究を進めている.高バイオマス生産性の背景となる大型の葉群構造を支えるメカニズムを検討する一貫として茎の組織構造について走査型電子顕微鏡観察を行った.その結果,維管束の分布や厚壁細胞の分布に特徴があり,このことが茎の機械的強度に貢献していると考えられた.同時に,刈取り後の再生が旺盛であるメカニズムを解明するため観察を行ったところ,根に蓄積するデンプン粒に類似した顆粒が維管束周辺に認められ,ヨウ素ヨウ化カリウム反応からデンプンと確認できた.このデンプン粒は,根のデンプン粒とともに,株の再生に関与していると考えられる.

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