日本作物学会紀事
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最新号
日本作物学会紀事
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研究論文
栽培
  • 今須 宏美, 白土 宏之, 伊藤 景子, 田渕 研, 古畑 昌巳, 川名 義明
    2022 年 91 巻 3 号 p. 205-214
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    水稲無コーティング種子の代かき同時浅層土中播種法における根出し種子の苗立ちおよび初期生育の向上要因を,2017~2019年に圃場試験により検討した.種子処理として,根出し種子,芽出し種子,催芽種子の3水準を設けて機械播種し,播種深度,播種時の器官折損率,出芽率の推移,苗立率および初期生育を比較した.根出し種子は種子予措時に種子根のみを伸長させた種子,芽出し種子は催芽種子よりも鞘葉を長く伸ばした種子である.機械播種により芽出し種子は25~61%の個体で鞘葉が折損したが,根出し種子では種子根が折損した個体は0~1%とわずかであった.根出し種子の苗立率は74~90%で催芽種子や芽出し種子より有意に高かった.本播種法において播種深度分布は種子処理間で差がなく,全ての種子処理で播種深度が深いほど苗立率が低下したが,いずれの深さにおいても根出し種子の苗立率は催芽種子よりも高かった.根出し種子は催芽種子より出芽揃期が3.4~3.8日早く,葉齢および乾物重が大きく推移したが,葉齢増加速度や同葉齢における乾物重は種子処理間で差はなかった.以上より,本播種法における根出し種子の苗立向上要因として,種子根は鞘葉と異なり機械播種時に折損しにくいため芽出し種子よりも苗立ちが安定すること,催芽種子よりも早期に出芽すること,より深い位置からでも苗立ち可能であることが考えられた.また,出芽揃期が早いために初期生育量を早期に確保できることが示された.

収量予測・情報処理・環境
  • 吉野 早紀, 豊福 恭子, 曽根 千晴, 小川 敦史
    2022 年 91 巻 3 号 p. 215-222
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    地球温暖化に伴い日本のイネ栽培の現場において,出穂期から登熟期にかけての高温が原因となって,高温登熟障害が問題となっている.本研究では,出穂期における収穫時の高温登熟障害程度の予測をめざし,出穂期の近接リモートセンシングによって収穫時の整粒率や未熟粒率が推定できるかを検討した.高温登熟障害耐性の程度の異なる「あきたこまち」と「ふさおとめ」の2品種をポット栽培し,出穂期から登熟期にかけて異なる温度処理を行い,出穂期の近接リモートセンシングによるデータと収穫時の整粒率や未熟粒率を比較した.その結果,出穂期の462.4 nmと469 nmの2波長の分光反射率を用いることで,重回帰分析により収穫時の整粒率との間に有意な相関が得られた.また正規化分光反射指数(Normalized Difference Spectral Index; NDSI)と整粒率との関係においても,488.8 nmと532.8 nm の分光反射率を用いて算出したNDSI488.8 nm, 532.8 nmにおいて最も強い相関が得られた.出穂期の462.4 nm,464.6 nm,730.8 nm,735.2 nm,737.4 nmの5波長の分光反射率を用いることで,重回帰分析により収穫時の未熟粒率との間に有意な相関が得られた.NDSIij と未熟粒率との関係においても,462.4 nmと495.4 nm の分光反射率を用いて算出したNDSI462.4 nm, 495.4 nmにおいて最も強い相関が得られた.これらの結果より,出穂期の近接リモートセンシングによる分光反射率のデータを分析することで,収穫時の高温登熟障害程度の予測が可能であることが明らかになった.

研究・技術ノート
  • 加藤 もも, 多田 光史, 白岩 立彦
    2022 年 91 巻 3 号 p. 223-229
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    ダイズ茎疫病(茎疫病)は一般に排水不良圃場ほど発生しやすいが,土壌水分の感染拡大への寄与の実態は明確でない.栽培現場における茎疫病発生と土壌水分条件および土壌諸特性との関連を圃場間差異・圃場内変異の両面から解析した.2019年および2020年に,丹波篠山市の水田転換畑1筆(ダイズ作初年および2年目,篠山圃場),および綾部市の常畑1筆(ダイズ連作12年目,綾部圃場)の品種丹波黒栽培圃場で調査を行った.両圃場で茎疫病発生が確認され,発病株率は篠山圃場が高かった.土壌を採取し同一水分条件で品種エンレイを栽培したところ,篠山土壌での発病が有意に多かった.一方,篠山圃場(10 m×100 m)を75区画に分割し解析したところ,発病率は土壌含水率の低い区画の方が多かった.土壌水分以外の要因に関して,土壌の伝染源ポテンシャルおよび諸特性値(pH,全窒素,全炭素,交換性塩基,可給態リン酸含量,礫含量)と発病率との関連を調べた.篠山圃場では綾部圃場に比べほとんどの塩基の含量,礫含量および伝染源ポテンシャルが高かった.篠山圃場のみを対象に,諸要因と発病の空間変異を解析したところ,マグネシウム含量および4 mm以上の礫含量の高い箇所で発病が多い傾向があった.伝染源ポテンシャルは土壌全炭素および窒素含量と相関を示した.以上より,茎疫病の発生において土壌水分の過剰は必ずしも支配的ではなく未知の主要因が存在すること,土壌の伝染源ポテンシャルと肥沃度が関連することが示唆された.

  • 今井 康貴, 服部 誠, 東 聡志, 土田 徹, 古川 勇一郎, 南雲 芳文
    2022 年 91 巻 3 号 p. 230-238
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    新潟県産コシヒカリの一等米比率は,2013~2018年まで75%以上で推移していたが,2019年は過去二番目に低い25.0%となった.2019年の気象は,7月下旬から8月中旬の気温が平年より1.4~4.0℃高く,特に8月14~15日に発生したフェーンの影響で最高気温が40℃を超えるなど,記録的な高温となった.格落ち理由の多くは乳白粒の多発であったが,籾数過剰が主要因ではないと推察された.また,新潟農総研や県内各地域における出穂期の異なるコシヒカリで,玄米横断面の白濁タイプの割合を調べた結果,出穂11~17日後にフェーンに遭遇したサンプルにおいて複合型の白濁の発生が確認された.それらのサンプルでは背側の白濁も増加しており,整粒比率が低かった.新潟県産コシヒカリの出穂最盛期は8月3日であり,大部分の地域で高温感受性の高い登熟前半において,フェーンによる著しい高温に遭遇したことにより品質が低下したことが示唆された.

  • 渋川 洋, 島崎 由美, 細野 達夫, 関 正裕
    2022 年 91 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    新潟市砂丘地ではパン用コムギ品種「ゆきちから」の子実灰分が高くなりやすいことが問題になっている.そこで,同地において「ゆきちから」が作付された生産者の圃場を4作期にわたり調査し,生産現場における子実灰分の実態と子実灰分が高くなる条件について検討した.一般に子実灰分との関連が認められることの多い土壌中の可給態リン酸含量は,新潟市砂丘地では子実灰分に寄与しなかった.2018年産では,子実タンパク質含有率と子実灰分の間に相関は認めなかったが,他の3作期では,両者の間に高い正の相関を認めた.これは,2018年産では開花期窒素追肥による千粒重の増加は子実灰分量の増加と相対的に同等で,残りの3作期では子実灰分量に比して相対的に小さかったことに起因した.登熟期における水ポテンシャルは,2018年産では–100 kPaまで低下したのに対し,残りの3作期では–1000 kPaまで低下し,土壌水分は著しく欠乏していた.このことから,登熟期の土壌水分の欠乏は,開花期窒素追肥による千粒重増加を抑制し,子実灰分の増加に寄与することが示唆された.

情報
速報
  • 大角 壮弘, 松﨑 守夫, 篠遠 善哉
    2022 年 91 巻 3 号 p. 251-252
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    トウモロコシ栽培において倒伏対策は重要な課題であり,疎植や中耕培土による耐倒伏性の改善効果を明らかにしようとした.絹糸抽出期前の台風接近時には,虫害の影響により回復できない植物体の折損が発生したが処理間差はなかった.絹糸抽出期28日後の調査では,疎植により引き倒し力が増加する傾向が見られたが,地上部モーメントが増加するため,耐倒伏性の向上は認められなかった.中耕培土区では土壌体積含水率が低いものの,潅水処理によらず引き倒し力が他より有意に低かった.また,挫折強度に関連する稈の形態特性にも中耕培土は好影響を及ぼさなかった.

  • 鈴木 悠斗, 石川 往洋, 岩崎 敬介, 上地 由朗
    2022 年 91 巻 3 号 p. 253-254
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    ソーラーシェアリング水田におけるイネの生産性低下が課題となっていることから,生育時期別日射制限が乾物生産に及ぼす影響を明らかにし,ソーラーシェアリング水田におけるイネを乾物生産,収量および玄米品質の面から検討した.生育時期別の日射制限が乾物生産に及ぼす影響は強く,それにともなって収量および品質面でも影響が表れた.ソーラーパネル下では散乱光は有効利用されているが,パネル角度の可動化や設置間隔の調整などの日射環境の改善により,早期に導入費用の回収が可能であることが示唆された.

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