日本作物学会紀事
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研究論文
栽培
  • 木村 利行, 下野 裕之
    2019 年 88 巻 2 号 p. 89-97
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/10
    ジャーナル フリー

    寒冷地である青森県において,水稲品種「まっしぐら」を供試して2水準の基肥窒素と2水準の栽植密度の4組合せで3カ年の試験を行い,基肥窒素の増肥が疎植栽培の収量,玄米外観品質,食味に及ぼす影響を評価した.気象条件は特に分げつ始期で違いがみられ,2014年と2015年は高温多照であったが,2016年は低温寡照であった.その結果,幼穂形成期頃の茎数は2016年が最も少なかった.標肥条件における慣行栽植に対する疎植の収量比は2014年と2015年が同等で,2016年が94%と少なかった.しかし,2016年における疎植栽培による減収は,基肥窒素の増肥により補償された.玄米外観品質,玄米蛋白質含有率,食味官能には栽植間と施肥間で有意差がなかった.施肥条件と栽植条件の各組み合わせによる経営評価を行った結果,所得は増肥疎植条件が高水準で安定すると試算された.

  • 水田 圭祐, 荒木 英樹, 高橋 肇
    2019 年 88 巻 2 号 p. 98-107
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/10
    ジャーナル フリー

    西南暖地向けパン用コムギ品種「せときらら」は収量が高いものの,子実タンパク質含有率が低くなりやすいという特徴がある.本研究では,「せときらら」の高品質多収化を目的として,基肥や分げつ肥を省略し,穂肥を増肥した穂肥重点施肥が,収量や収量構成要素,子実タンパク質含有率 (GPC) におよぼす影響を検証した.また,穂肥重点施肥をベースとして,基肥や分げつ肥窒素の比率および出穂前総窒素施肥量を増やすことによって,収量やGPCを一層高められるかどうかも検証した.穂肥重点施肥区は,2015/16年および2016/17年作期では収量が11~40%高まった.収量が高まった原因は,穂数が16~23%増加したためであった.穂肥重点施肥区のGPCは,収量が増加したにもかかわらず,いずれの作期も慣行分施区と同程度以上となった.一穂粒数は,いずれの作期でも穂肥重点施肥区で増加しなかったが,千粒重は出穂期から成熟期の積算降水量が少なく,積算日照時間が多い年次では穂肥重点施肥区が慣行分施区に比べて2.3 g重かった.穂肥重点施肥の収量は,基肥や分げつ肥の窒素施肥量,出穂前総窒素施肥量を増やしても,500~550 g m–2までしか高まらなかった.成熟期の地上部窒素蓄積量も,出穂前総窒素施肥量を10~24 g m–2まで増加させても12~16 g m–2を上回らなかった.穂肥重点施肥は,「せときらら」のような多収パン用コムギ品種でも収量を高めつつ,子実タンパク質含有率の低下を防ぐことができたことから,多収パン用品種に有効な施肥方法であると考えられる.

  • 鬼頭 誠
    2019 年 88 巻 2 号 p. 108-116
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/10
    ジャーナル フリー

    沖縄でのソバ前作物としての可能性を明らかにするために,施肥リンがAl型リンで固定される赤玉土とFe型リンで固定される赤色土(国頭マージ)を用いてラッカセイとダイズ,セスバニアの低リン耐性を比較した.また,3種マメ科植物に対する菌根菌の接種効果についても合わせて調査を行った.赤玉土へのリン施肥量の低下により3種マメ科植物の生育量は低下した.しかし,ラッカセイはダイズより低下度合が小さく,セスバニアよりリン無施肥区とリン酸吸収係数の0.1%相当量の少量施肥区で生育が高まっていた.なお,ラッカセイの根粒着生量はダイズと同程度であり,いずれのリン施肥区でもセスバニアより低下した.播種3週間後の生育初期時のダイズとセスバニアの根長はリン欠乏区で著しく低下したが,ラッカセイでは低下せず,種子中のリンを多く含むラッカセイではリン欠乏条件でも初期生育時の根系発達が確保できることが明らかになった.赤色土に菌根菌無接種で栽培したラッカセイはいずれの過リン酸石灰施肥区,リン酸アルミニウムやリン酸鉄施肥区とも地上部生育量,リン吸収量ともダイズと同程度であり,セスバニアより低下した.菌根菌の接種によりラッカセイは生育量とリン吸収量が高まり,セスバニアと同程度以上の上昇が認められ,特に難溶性リンの吸収量と地上部生育量はセスバニアより高まった.これらの結果から,ラッカセイは種子中のリン含有量が高く,初期生育時の根系発達により,低リン肥沃度土壌でリンを吸収する能力が高いが,その後の十分な生育を確保するためには菌根菌の感染が必要であると思われる.

  • 磯部 勝, 杉山 剛, 片桐 基, 石塚 千紘, 田村 優実, 肥後 昌男, 藤田 佳克
    2019 年 88 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/10
    ジャーナル フリー

    立枯れはキノアの生育や収量に最も影響を与える障害のひとつである.キノアの立枯れに関する研究はキノア栽培が盛んな南米のアンデス地域では行われているが,環境の大きく異なる我が国においては過去に研究事例はない.そこで本研究では生育初期におけるキノアの立枯れの発生原因とその抑制法について検討した.立枯れ率は播種時期によって大きく異なったが,いずれの播種時期でも出芽直後から第4葉期まで立枯れが発生し,その後はほとんど発生しなかった.播種時期の違いによって立枯れ率に違いが生じた原因は気温や日照時間より降水量の違いによる影響が大きいことが明らかにされた.そして,立枯れ率は土壌水分が低いと低下することが明らかになった.このことから,キノアの立枯れを抑制させるには生育初期において土壌水分が過剰にならないようにすることが重要と考えられた.さらに,供試したキノア12品種の間には立枯れ率に明確な違いはなかった.立枯れた個体からはRhizocotnia属菌やFusarium属菌が見出され,立枯れの発生にはこれらの菌が関与している可能性が示唆された.薬剤散布で立枯れの発生が抑制できるか検討した結果,播種時にダコレート水和剤を1m2当たり2 g以上を土壌の表面に散布すれば立枯れ率を抑制することができることが明らかになった.

  • 秀島 好知, 有馬 進, 鈴木 章弘, 清田 梨華
    2019 年 88 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/10
    ジャーナル フリー

    北部九州の米麦二毛作における麦収穫後のわらが,水田雑草の初期発生に及ぼす影響を明らかにする一環として,わらの状態の違いが検定植物の発芽に及ぼす作用機構の解明を試みた.アレロパシー活性が強いとされるオオムギについて,生わらおよびその焼却灰の浸漬水を用いてコマツナ種子の発芽への影響を調査したところ,生わらは顕著に発芽を抑制し,わらの焼却灰ではその効果が生わらの場合と比較して劣ることが明らかとなった.この傾向は,浸漬水を作成する際の土壌添加の有無に係わらず同様に見られたことから,発芽抑制作用は土壌微生物による麦わらの分解代謝産物ではなく生わらあるいはその焼却灰から直接水中に浸出した物質の関与が考えられた.そこで,LC/TOF-MSを用いてオオムギ生わらおよびその焼却灰の浸漬水中に含まれるフェノール性物質の特定を試みたところ,5種類の物質の関与が特定できた.その中で特に (±)-2-フェニルプロピオン酸の関与が示唆されたことから,実際にコマツナを用いて発芽試験を行ったが,2 ppmの濃度でコマツナの発芽は顕著に阻害された.

収量予測・情報処理・環境
  • 望月 篤, 鶴岡 康夫, 中川 博視
    2019 年 88 巻 2 号 p. 132-142
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/10
    ジャーナル フリー

    水稲栽培において幼穂形成期(幼穂長1 mm)から出穂期までの窒素追肥は,収量を増加させる重要な栽培技術であるが,稈の伸長を促し,倒伏を助長させ,減収を招く場合がある.このため,追肥を標準施用した場合の稈長を予測し,予測した稈長に応じて追肥を施用することで,増収を図りながら倒伏を回避する生育診断技術が開発されている.従来の診断技術は追肥前の生育量のみを指標に診断しており,診断に従って施肥しても稈が予測以上に長くなり,倒伏を招く一因となっていた.そこで,本研究では追肥前の生育量と幾つかの気象条件を用いて,追肥を標準施用した場合の「コシヒカリ」における稈長の簡易推定モデルの作成を試みた.千葉県の水田圃場(千葉市・壌土)で追肥を標準施用(幼穂長10 mm時に窒素成分で3 g m–2)して栽培した12年間の作期移動試験データ(n=55)を解析し,出穂前50~4日の最低気温,出穂前44~36日の全天日射量,幼穂形成期の草丈,葉色及び茎数×葉色を説明変数とする稈長の簡易推定モデルを作成した(二乗平均平方根誤差(RMSE)=3.01 cm).本モデルの検証を,別試験のデータセットで行ったところ,RMSEは2.68~2.76 cmであった.また,本モデルを用いて,稈長が90 cm以下(倒伏防止のための千葉県の目標値)となるかを推定したところ,その正答率は77~91%であり,従来の追肥前の生育量のみを指標とした生育診断技術を用いた場合より高かった.このことは,生育量のみに基づく生育診断に,気象条件も考慮することにより,稈長の推定精度が高まり,より的確な追肥判断ができることを示唆している.

研究・技術ノート
  • 中元 朋実
    2019 年 88 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2019/04/05
    公開日: 2019/05/10
    ジャーナル フリー

    播種期の違いが油料アマの収量と収量構成要素に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,品種Lirina を2015年と2016年の2月から12月までの間ほぼ1週間おきに播種した.播種から開花までには40日以上の日数と約600度・日の有効積算温度(基準温度5℃)が必要であった.春播き(2月中旬から6月中旬),夏播き(7月下旬から9月中旬),秋播き(10月中旬から12月下旬)によって種子の収穫が可能であった.春播きと夏播きでは,それそれの期間内において,播種が遅いほど,単位面積あたりの蒴数,蒴あたりの種子数,および種子一粒重が減少し,収量が低くなった.秋播き(越冬ののち翌春に収穫)ではこれとは逆の傾向にあり,播種が遅いほど収量構成要素のいずれもが増加し,収量が高かった.春播きでは開花期以降の高温が,夏播きでは逆に開花期以降の低温が,蒴や種子の形成や発達を妨げる要因になっていたと考えられた.いっぽう,秋播きでは,播種が遅いほど越冬した個体の倒伏程度が軽微であったことが高収量の主な原因であった. 2月中旬から4月中旬まで(春播き),7月下旬から8月上旬まで(夏播き),および10月中旬から11月下旬まで(秋播き)がこの品種の播種適期と判断された.

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