抄録
密植は単位面積当たり穎花数を確保する上で重要な栽培技術であり,しかも1次技梗に着生する穎花数の割合(1次枝梗着生穎花率)が向上するので,登熟にも有利であると考えられてきた.この実験では栽植密度と穎花数の関係を1次枝梗着生穎花率に着目しながら行った.穂数と1穂穎花数の関係を明確に出すために,分げつ力の高い品種日本晴を用いた.4つの栽植密度(11.1~44.4株m-2)に,1穂穎花数を効果的に増加させる穂首分化期の窒素追肥(0~7.5gm-2)を4段階組み合わせた処理を行った.その結果,単位面積当たり分化穎花数と現存穎花数は密植ほと増加した.密植の効果は,窒素追肥が多いはど゛顕著に現れた.密植によって,穂数が増加したが,1穂分化1次枝便数は減少し,分化1次技梗当たり分化2次枝便数,穎花退化率はほとんど影響されなかった6予想に反して,密植によって1次技梗着生穎花率はほとんど増えなかった.この理由は分化1次枝梗当たり分化2次枝便数が栽植密度の影響を受けなかったことと,1次技梗に分化した穎花の退化率が高いことの2つである.分化1次枝梗当たり分化2次枝梗数は穂首分化期から穎花分化始期までのシュート窒素含有率の増分と高い相関関係にあった.以上のことから密植で穎花数を確保するときに必ずしも1次枝梗着生穎花率を高く維持できるとは限らないこととが示唆された.