日本救急医学会雑誌
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原著論文
本邦における熱中症の実態-Heatstroke STUDY2008最終報告-
三宅 康史有賀 徹井上 健一郎奥寺 敬北原 孝雄島崎 修次鶴田 良介横田 裕行
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2010 年 21 巻 5 号 p. 230-244

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抄録

目的:2006年調査に続き,さらに大規模な熱中症に関する全国調査を行い,本邦における熱中症の実態につきより詳細に検討した。方法:日本救急医学会熱中症検討特別委員会(現 熱中症に関する委員会)から,全国の救命救急センター,指導医指定施設,大学病院および市中病院の救急部または救急科(ER)宛てに,2008年用として新規に作成した調査用紙を配布し,2008年6~9月に各施設に来院し熱中症と診断された患者の,年齢,性別,発症状況,発症日時,主訴,バイタルサイン,日常生活動作,現場と来院時の重症度,来院時の採血結果,採血結果の最悪化日とその数値,既往歴,外来/入院の別,入院日数,合併症,予後などについての記載を要請し,返送された症例データを分析した。結果:82施設より913例の症例が収集された。平均年齢44.6歳,男性:女性は670:236,I度:II度:III度は437:203:198,スポーツ:労働:日常生活は236:347:244,外来帰宅:入院は544:332で,高齢者でとくに日常生活中の発症例に重症が多かった。スポーツ群では,陸上競技,ジョギング,サイクリングに,労働群では農林作業や土木作業に重症例が多くみられた。日常生活群では,エアコン/扇風機の不使用例,活動制限のある場合に重症例がみられた。ただ,重症度にかかわらず入院日数は2日間が多く,採血結果についても初日~2日目までに最も悪化する症例が大多数であった。後遺症は21例(2.3%)にみられ,中枢神経障害が主であった。熱中症を原因とする死亡は15例(1.6%)で,2例を除き4日以内に死亡した。考察:2006年調査とほぼ同様の傾向であったが,重症例の割合が増加し,活動制限のある日常生活中の老人がその標的となっていた。最重症例は集中治療によっても死亡は免れず,熱中症では早期発見と早期治療がとくに重要であるということができる。

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