日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
沖縄,奄美,九州および東シナ海におけるトビイロウンカ,セジロウンカの飛来の同時性
岸本 良一平尾 重太郎平原 洋司田中 章
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 26 巻 2 号 p. 112-118

詳細
抄録
梅雨期にみられる東シナ海中央部から日本列島方向へのウンカ類を主とする小型昆虫の長距離移動の実態を更に明らかにするため,東シナ海定点(31°N, 126°E),那覇市,名瀬市,筑後市において同型の大型ネットトラップを用いて採集調査を行った。名瀬では1978年のみであった。
1977年には6月初めから7月上旬にかけて5つの飛来波が見出されたが,その中初めの4波は前線との明瞭な関係がみとめられ,筑後と那覇(南西-東北方向に約760km,緯度で約7°の差)の間では有意な同時性は見られなかった。
1978年には5月末から7月上旬にかけて6波が見出されたが,その中初めの3波は前線との関連は明瞭で,筑後と那覇との同時性は見られなかった。第4波はやや不規則な低滞前線が見られ,不明瞭ながら同時性が見られた。一方,名瀬は那覇との間(南南西-北北東方向に320km,緯度差約2°10′)には3回,筑後と名瀬の間(南北に500km,緯度差4°50′)には3回の同時性が見られた。
両年の飛来末期には明瞭な前線は見られず大陸からのゆっくりした気塊の東進がみられ,これに伴う飛来波が各1つずつ見出されたが,この場合は,筑後,名瀬,それに不明瞭ながら那覇にも同時性がみられた。
東シナ海定点では1977年に3回(内はじめの1回は28°20′Nまで南下した),1978年には4回,それぞれの年の後半にあたる飛来波を見出したが,それぞれの最初の飛来波は那覇と,後のは筑後および名瀬と同時性を示した。
飛来虫の密度は東シナ海が最も高く,筑後,名瀬がこれにつぎ,那覇では低かった。那覇はこの時期の南西方面からの飛来の主要経路からややはずれているものと考えられた。
これらのことから,梅雨期日本列島で見られるウンカ類の飛来源は中国大陸南部方面である可能性が高いと考えられる。
著者関連情報
© 日本応用動物昆虫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top