日本助産学会誌
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原著
妊娠先行結婚と妊婦の対児感情・母親役割獲得・夫婦関係との関連
盛山 幸子島田 三惠子
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2008 年 22 巻 2 号 p. 222-232

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抄録

目 的
 妊娠先行結婚をした夫婦の特性を明らかにし,妊娠先行結婚と,妊娠期における母親の対児感情,母親役割獲得,及び夫婦関係との関連を明らかにする。
対象と方法
 調査の同意を得られた妊娠末期の母親198名(有効回答率67.1%)とその夫173名(有効回答率58.6%)を対象とした。妊婦健診に来所した初産婦に調査票を配布し,留置法あるいは郵送法で回収した。調査項目は対象の属性及び背景等,対児感情,母親役割行動,夫婦関係である。
結 果
 妊娠先行群の母親は41名(20.7%),そのうち25歳未満は21名であった。妊娠先行群の母親(p<0.001)とその夫(p<0.01)の年齢は結婚後妊娠群よりも若く,学歴は中学卒業・高校中退者が多かった(p<0.01)。妊娠先行群の母親の結婚の契機は7割が「妊娠したため」,5割が「もともと結婚予定だった」。妊娠先行群の母親の児への接近感情は28.3±8.1点で結婚後妊娠群との差は認められなかった。しかし,25歳未満の妊娠先行群では児への愛着的な感情は有意に低かった(p<0.05)。児への回避感情は妊娠先行群の方が低かった(p<0.05)。母親役割行動の合計得点は結婚後妊娠群との差はなかったが,「規則正しい生活」(p<0.05),「母親学級等への積極的な参加」(p<0.05)は妊娠先行群の方が少なかった。25歳未満の妊娠先行群の母親は「児のことを考えると嬉しい」気持ち(p<0.05)や「児に話しかける」(p<0.01)ことが少なかった。妊娠先行群の夫婦の愛情は結婚後妊娠群との差は認められなかった。しかし,25歳未満の妊娠先行群の母親の夫への愛情は52.7±12.0点で結婚後妊娠群の母親よりも低かった(p<0.05)。
結 論
 妊娠先行群の母親の児への接近感情や母親役割行動は結婚後妊娠群との差がなかった。妊娠先行群の母親の児への回避感情は結婚後妊娠の母親よりも低かった。妊娠先行群の夫婦の愛情は結婚後妊娠群との差がなかった。しかし,25歳未満の妊娠先行群の母親は児への愛着的感情や夫への愛情が低かった。

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© 2008 日本助産学会
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