日本助産学会誌
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巻頭言
総説
  • 椎名 翔子, 竹内 翔子, 篠原 枝里子, 中村 幸代
    2026 年40 巻1 号 p. 3-15
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/02/12
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,産褥期における初産婦の母親役割移行に関する介入研究について文献レビューを行い,介入方法及び内容を整理することで,今後の支援への示唆を得ることである。

    対象と方法

    過去10年間の英語及び日本語文献を対象とし,PubMed,CINAHL,医中誌を用い2024年11月にデータベース検索を行った。選定基準に基づき文献のスクリーニングを行い,採択文献を決定した。文献から介入方法・内容を記述的に抽出した後,介入方法は類似点をまとめた。介入内容は各介入の目的に着目して内容の意味単位を特定した後,類似する内容を介入項目として整理し,さらに上位の概念に基づきカテゴリー化した。全過程は1名の研究者が実施し,各過程で共同研究者と審議することによりデータの信頼性担保に努めた。

    結 果

    10件の文献が採択され,うち8件に介入効果が報告されていた。介入効果を認めた文献には,介入提供者として産後の母子ケアに携わる看護職(4件)が最も多く,介入に継続性があり(7件),介入提供者と対象者間で双方向のやり取りを含む(8件)という介入方法の特徴があった。介入内容を整理したところ,①母親の心身の回復,②育児知識・技術の獲得,③母乳育児確立,④母子相互作用促進,⑤母親の心理的自己変容,⑥家族の協力関係促進,⑦母親のニーズ充足の7つの介入項目に分類され,さらに『基本的な産後の母子ケア』,『母親自身の適応力を向上させる支援』,『母親の適応を促進するソーシャルサポート』の3カテゴリーに分類された。

    結 論

    産褥期における初産婦の母親役割移行を促進する支援において,介入提供者は助産師や産後の母子ケアに携わる看護職が妥当であり,介入に継続性があり,介入提供者と対象者間の双方向のやり取りを含む支援が有用である可能性がある。また『基本的な産後の母子ケア』,『母親自身の適応力を向上させる支援』,『母親の適応を促進するソーシャルサポート』の内容を含む支援プログラムが効果的である可能性が示唆された。

原著
  • 萬歳 優美, 片岡 弥恵子, 根路銘 安仁, 山本 直子, 井上 尚美, 若松 美貴代
    2026 年40 巻1 号 p. 16-26
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

    目 的

    プレコンセプションケアでは,乳がんの教育や予防・早期発見は重要な課題である。本研究の目的は,プレコンセプションケアにおける若年女性への乳がん教育の構成要素を明らかにし,乳がん教育プログラムの示唆を得ることである。

    対象と方法

    スノーボール・サンプリングにより対象者の選定を行い,自由意志による協力の得られた乳がん看護認定看護師とした。データ収集方法は,インタビューガイドを用いて,対面もしくはオンラインにて実施した。インタビュー方法は,半構造化面接法にて個人インタビューを実施し,従来型内容分析にて分析した。本研究は,鹿児島大学桜ヶ丘地区疫学研究等倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号230082疫)。

    結 果

    乳がん認定看護師9名から同意が得られ,平均看護職歴は23年,平均乳がん看護認定看護師歴は8年であった。プレコンセプションケアにおける乳がん教育の構成要素として,【成長発達する乳房とその変化の理解】が明らかになった。この要素の理解を深めるために,【乳がん・検診・診断後の知識】や【がんは人生の一部】という構成要素を基に,【若い時から健康に関心を持つ必要性】や,異常の早期発見のために【相談・受診に繋がる実践】が理解できる教育が必要となる。そのために,正しい情報にアクセスできるよう【eヘルスリテラシーの重要性】も明らかとなった。

    結 論

    本研究で明らかになった6カテゴリを基盤としたプレコンセプションケアにおける乳がんに関する教育は,月経周期と乳房の変化を主軸とし,乳がんに対する知識や態度,実践へのアプローチが必要であり,若者が自分ごととして捉えることができるプログラムを開発する必要がある。

  • 中村 登志子, 椎葉 美千代
    2026 年40 巻1 号 p. 27-39
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は乳幼児を育てる親のソーシャル・キャピタルと育児幸福感の因果構造を明らかにすることである。

    対象と方法

    対象は5歳以下の子どもを育てる親に対し全国のインターネット調査を通じてデータを収集した。ソーシャル・キャピタルと育児幸福感に関して仮説モデルを構築し,子育て支援者の有無や子育て支援資源利用の有無別に共分散構造分析を実施した。

    結 果

    分析対象は1450名,平均年齢39.02±8.7歳であった。育児幸福感とソーシャル・キャピタルに関して妥当性の高いモデルを構築し,ソーシャル・キャピタルは育児幸福感に直接効果を与えていた。子どもの数が多いことは,ソーシャル・キャピタルを介して育児幸福感に間接効果を与えていた。また,ソーシャル・キャピタルは地域愛着にも直接効果を与えていた(GIF=1.000, AGIF=0.997, CFI=1.000, RMSEA=0.003)。子育て支援資源利用の有無による比較では群間の構造モデルに差は見られなかった(parameter=0.663)。子どもの数の多さがソーシャル・キャピタルを介して間接的に育児幸福感に影響を与えていた。

    結 論

    ソーシャル・キャピタルは地域愛着および育児幸福感に影響を及ぼし,子どもの多さが間接的に育児幸福感に影響する因果関係が存在する可能性が示された。

  • 萩原 柚希, 白石 三恵, 浦西 美空, 堀口 範奈
    2026 年40 巻1 号 p. 40-49
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/02/16
    ジャーナル フリー
    電子付録

    目 的

    乳児期の父親が自身の育児関与を多面的に測定可能な尺度として妥当性・信頼性が検証されている日本語版乳児の父親の育児関与尺度を基に,乳児期の父親の育児関与についての母親の認識を把握するための尺度として,日本語版乳児の父親の育児関与尺度〈母親認識版〉(The Japanese version of Paternal Involvement with Infants Scale for Mothers:PIWIS-J for Mothers)を作成し,その信頼性と妥当性を検証することを目的とした。

    対象と方法

    研究対象者は,関西圏にある病院1施設と妊娠・育児情報を発信するWebサイトにて2023年7-12月に募集した。1歳未満の児を養育する母親を対象とし,オンライン質問紙調査を実施した。また,信頼性検証のために,対象者の一部に対して2週間後にPIWIS-J for Mothersの再検査を行った。信頼性の検証では級内相関係数とCronbach's α係数を算出し,構成概念妥当性の検証では確認的因子分析を行った。基準関連妥当性の検証には,夫婦関係満足度尺度,コペアレンティング関係尺度,短縮版ソーシャルサポート尺度の下位尺度〈家族のサポート〉,母親が認識する父親が担う家事・育児の割合を用い,PIWIS-J for Mothersとの相関係数を算出した。

    結 果

    妥当性の検証は201名,信頼性の検証は100名を分析対象とした。PIWIS-J for Mothers(29項目4因子)の確認的因子分析の結果,χ2=924.68(df=371,p<0.001),Comparative Fit Index=0.843,Root Mean Square Error of Approximation=0.086であった。尺度全体の級内相関係数は0.933,Cronbach's α係数は0.924であった。基準関連妥当性の検証の結果,PIWIS-J for Mothersと各尺度との相関係数は,夫婦関係満足度尺度0.499,コペアレンティング関係尺度0.532,短縮版ソーシャルサポート尺度〈家族のサポート〉0.433,母親が認識する父親が担う家事割合0.435,母親が認識する父親が担う育児割合0.541であった。

    結 論

    乳児を養育する母親を対象としたPIWIS-J for Mothersは,十分な信頼性および妥当性を有することが確認された。本尺度は,母親の視点から乳児期における父親の育児関与を把握し,支援するための研究および臨床実践において,有用な評価ツールとなり得ると考える。

  • 竹内 佳寿子
    2026 年40 巻1 号 p. 50-61
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/10
    ジャーナル フリー

    目 的

    予定帝王切開術の出産は,麻酔により陣痛や産道を通過する感覚を得られず,腹部から娩出されることにより,受け身に感じたり,児を産んだ実感を得にくい体験ととらえやすい傾向にある。本研究は,予定帝王切開術で出産した語りの多面的な分析から女性が主体的に出産に関与した体験を明らかにすることを目的とした。

    対象と方法

    20名の女性から,出産にまつわる体験を,妊娠期から産後の3回聴取した。語りを体験として時期ごとに整理し,女性が主体的に出産に関与したとらえることができる体験を質的記述的研究方法にてコードを抽出した。本研究は,大学ならびに施設の研究倫理審査の承認を得て実施した。

    結 果

    抽出されたコードごとに分析し,主体的に出産に関与したととらえることができた体験のコードは,【入院時に手術の説明を受けて,理解できる】【不安や緊張を自分で克服する】【手術に向けた準備を不安が増強することなく行える】【手術室入室時に自分なりに落ち着いてその場にいる】【麻酔時は,医療者と協力して麻酔の姿勢ができ,効果を実感できる】【執刀時,手術が進んでいることを自分なりに把握する】【自分も手術が進むよう自分もできることをしてその場にいる】【児が産まれようとしているところを把握できる】【児が出生したことを把握できる】【閉腹時に自分の身体に起こっていることを察知しようとする】であった。一方,主体的に出産に関与したととらえられない体験のコードは,【麻酔時に不安や恐怖が高く協力できず,自分の感覚をとらえられないことでさらに不安や恐怖が増強する】【進行が把握できず,不安や恐怖が増強する】【児の産まれようとしているところが不確かで把握できない】であった。

    結 論

    予定帝王切開術での出産も主体的に出産に関与したととらえることができる体験をしていたことが明らかとなった。看護職は,女性たちが出産を自分のこととしてとらえ,出産に適切に対処し,自分なりにできたという感覚を持つことができるよう支援する必要がある。

  • 天野 舞子, 山本 武志, 正岡 経子
    2026 年40 巻1 号 p. 62-74
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/04
    ジャーナル フリー

    目 的

    病院・診療所の助産師が行う産後の母子継続支援の役割認識および実践力の実態と関連要因を明らかにする。

    対象と方法

    2024年5月~10月に,北海道の病院・診療所の助産師753名にWeb調査を実施した。退院後の母子支援20項目について,産後1か月以内,産後1~4か月以内,産後5か月~1年以内の期間毎の役割認識と実践力の自己評価を点数化した。分析は反復測定分散分析と関連要因の検討は多元配置分散分析を行い有意水準は5%とした。

    結 果

    有効回答は265名(35.2%)で,退院後の母子支援20項目全てで,役割認識と実践力の自己評価は産後1か月以降平均点が有意に低下した(p<.05)。退院後の母子支援20項目中,役割認識の平均点が高く(4点以上),実践力の自己評価の平均点が低い(3点未満)項目は,産後1か月以内は1項目のみ該当し,産後1~4か月以内は5項目,産後5か月~1年以内は11項目と,産後の期間が経過するほど該当数が増加した。該当した項目は,支援内容により外来における母乳育児支援,児の成長発達に合わせた長期的な子育て支援,ハイリスクな母子に対する支援の3つに分類された。関連要因は,助産師教育機関については,大学院の群が他の教育機関と比較し役割認識の平均点が最も高く,産後1か月以降に有意差があった(p<.05)。助産師経験年数は,0~4年の群が,5~9年の群,10年以上の群よりも実践力の自己評価の平均点が有意に低いが(p<.01),経験年数の違いによる役割認識に差はなかった。施設における退院後母子支援のあり群はなし群に比べ,役割認識と実践力の自己評価の平均点が高く有意差があった(p<.05)。母子支援の研修機会のあり群はなし群に比べ,産後1か月以降の役割認識と実践力の自己評価の平均点が高く有意差があった(p<.05)。

    結 論

    病院・診療所の助産師は産後1か月以降の実践力に課題があり,役割認識が高い重要な支援内容が抽出された。

  • 井下 沙夏, 滝本 綾夢, 白石 三恵, 春名 めぐみ, 松﨑 政代
    2026 年40 巻1 号 p. 75-88
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/10
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    本研究は妊娠中期の就労初産婦・経産婦それぞれの,職業性ストレスやマタニティハラスメントの経験といった具体的な就労実態を含めた,睡眠の質に関連する心理社会的特徴を探索的に明らかにすることを目的とする。

    対象と方法

    大阪府内の産科クリニックにて妊娠中期の就労女性を対象にオンライン調査を実施した。属性,日本語版エジンバラ産後うつ病自己質問票(EPDS),ストレス対処能力,就労状況,職業性ストレス,マタニティハラスメントの経験,ピッツバーグ睡眠質問票日本語版(PSQI-J)のデータを収集した。睡眠の質に関連する心理社会的特徴を明らかにするためにPSQI-J得点をカットオフ値(5/6点)で2群に分類し,属性と就労状況について連続変数にはt検定またはWilcoxonの順位和検定を,カテゴリカル変数にはχ2検定またはFisherの正確確率検定を使用し,初経産別に睡眠の質が悪い群と良い群の間で比較した。

    結 果

    303名に質問紙を配布し,回答を得た236名のうち採用基準に該当する初産婦61名,経産婦70名を解析対象とした。正規職員は初産婦で75.4%,経産婦で55.7%であった。睡眠の質が悪い者は初産婦で44.3%,経産婦で40.0%であった。二変量解析の結果,初産婦・経産婦ともに,睡眠の質が悪い群は良い群と比較してEPDS得点が有意に高かった(p < 0.001;p = 0.004)。さらに初産婦では,睡眠の質が悪い群は良い群と比較して上司および同僚のサポート得点が有意に低かった(p = 0.007;p = 0.009)。

    結 論

    睡眠の質が悪い就労妊婦の特徴としてうつ症状の程度が強い可能性が示された。さらに初産婦の特徴として上司や同僚からのサポートが少ないことが示された。本研究結果から,睡眠の質が悪い就労妊婦に対して精神状態を考慮した支援の必要性や,初産婦では職場のサポート状況も考慮し支援を検討する必要性が示唆された。

  • 常川 美羽, 白石 三恵, 堀 菜月, 松田 香
    2026 年40 巻1 号 p. 89-98
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/10
    ジャーナル フリー

    目 的

    将来の疾患予防という観点から,妊娠前に肥満である女性は産後の体重管理が重要である。本研究は,妊娠前に肥満であった女性における産後の体重や体型への思いを明らかにすることを目的とした。

    対象と方法

    妊娠前に肥満であった産後2–3か月の女性8名に対し2021年9月–2022年8月に半構造化面接を行った。参加者は,4都府県で行われた前向きコホート研究から募集した。インタビューデータは,質的記述的アプローチを用いて帰納的に分析した。本研究は,東京大学大学院医学系研究科・医学部倫理委員会の承認を得て実施した。

    結 果

    データから28のコード,13のサブカテゴリー,4のカテゴリーが抽出された。妊娠前に肥満であった女性は,産後を減量に適した時期であると認識し,【自身の体重や体型が気になる産後の時期だからこそ痩せたい】という思いを抱いていた。その上で,【痩せたいと思い,効果を実感した日常生活の工夫を続けたい】と考え,食事の工夫や運動を実施していた。一方で,産後特有の状況ゆえに,【痩せたいが,今は自身の健康や授乳のために日常生活を変えるつもりはない】と考え,痩せることを当面の優先事項とはしていないと語る者もいた。また,子ども中心の生活のために痩せるための行動を実施できない,生活の工夫を実施しているものの思うように体重が減らないというように,【痩せたいが,産後という状況や自身の体質のために痩せることは難しい】と感じている者がいることが明らかになった。

    結 論

    妊娠前に肥満であった女性は,痩せたいという強い思いをもつ一方で,授乳や家事,育児という産後に特有の状況の中で減量のための行動を起こすことへの困難感を抱いていることが明らかになった。このような女性に対しては,授乳や自身の健康と減量を両立するための食事指導に加え,食事や運動を調整するための家事・育児のサポート体制構築のための支援,痩せたいという思いや困難感に対する心理的支援が必要であると考える。

  • 橋爪 美幸, 松井 弘美, 村田 美代子, 小林 絵里子, 北島 友香
    2026 年40 巻1 号 p. 99-111
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/10
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    本研究の目的は,周産期母子医療センターにおいて指導助産師が新人助産師の分娩期ケアにおける自立を判断する視点を明らかにすることである。

    対象と方法

    研究デザインは半構造化に基づく質的記述的研究である。X県内の周産期母子医療センター4施設において,新人助産師の分娩期ケアの自立を判断する役割を担っている指導助産師13人を対象とした。データ収集方法は,半構造化面接法を用いてインタビューを実施した。内容は,質的記述的に分析し,コード,サブカテゴリー,カテゴリーを抽出した。

    結 果

    全施設が分娩期ケアの自立を判断する目安に分娩介助例数を設けており,5例または10例であった。しかしそれ以外の明確な基準はなかった。インタビューの結果より,指導助産師が新人助産師の分娩期ケアにおける自立を判断する視点については,426コード,49サブカテゴリー,8カテゴリーが抽出された。8カテゴリーは【分娩進行状態をアセスメントするための観察と情報収集】【根拠に基づく産婦の正常・逸脱アセスメント】【分娩期の診断】【分娩介助技術】【産婦の状態に合わせた助産ケア】【チームメンバーへの報告と情報共有】【優先順位の考慮】【新人助産師に求める資質】であった。中でもコード数が最も多かったのは,【分娩期の診断】であり,入院の判断から帰室の判断まで,全ての時期の判断ができることを自立の視点としていた。

    結 論

    周産期母子医療センターにおいて,指導助産師が新人助産師の分娩期ケアの自立を判断する視点は,助産師の責務の範囲でできる正常と正常からの逸脱を視野に入れた分娩期ケアが安全に遂行できる能力と助産師という専門職として必要な能力の視点であるといえる。

  • 坂口 華, 篠原 枝里子, 竹内 翔子, 中村 幸代
    2026 年40 巻1 号 p. 112-121
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/14
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    産後1か月健診時にメンタルヘルス不調のある褥婦への支援に対する助産師の困難感の実態と共感特性との関連を明らかにする。

    対象と方法

    分娩を取り扱う病院,診療所に勤務し,現在産後1か月健診の業務に携わっている助産師128名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。主な質問内容は,産後1か月健診時にメンタルヘルス不調のある褥婦への支援の困難感と日本語版対人反応性指標とした。分析は記述統計量を算出し,助産師の共感特性とメンタルヘルス支援の困難感の関連を調査するために,Mann-WhitneyのU検定を行った。本研究は,横浜市立大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:一般2024-031)。

    結 果

    有効回答が得られた100名を分析対象とした(回収率79.8%,有効回答率99.0%)。産後1か月健診時にメンタルヘルス不調のある褥婦への支援に対する助産師の困難感では,支援を求めていない褥婦に支援の必要性を説明することに半数以上の助産師が困難感を抱いており,健診場面での心理面のアセスメントや信頼関係の構築へも4割以上が困難感を抱いていた。また,共感特性との関連では,視点取得の高い助産師では話の展開を考えながら話を聴くことやメンタルヘルススクリーニング検査の結果と印象が異なる場合に心理的状態をアセスメントすることへの困難感が有意に低かった。一方で,個人的苦痛が高い助産師は,感情移入しないことやメンタルヘルスに関する情報収集の実施に対する困難感が高かった。

    結 論

    産後1か月健診の限られた時間において助産師が抱く褥婦へのメンタルヘルス支援の困難感を軽減するために,視点取得を高めた共感的支援の実践力向上が重要であり,そのための助産師への教育機会の充実が必要であることが示唆された。

資料
  • 稲田 千晴, 井村 真澄
    2026 年40 巻1 号 p. 122-130
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/10/21
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は,レセプトデータを用いて乳腺炎重症化予防ケア・指導料の算定実態を明らかにし,その課題を検討することを目的とする。

    方 法

    2019年10月~2020年9月のレセプトデータを用い,ICD-10コード[N61](乳房の炎症性障害)と診断された乳腺炎患者の,乳腺炎重症化予防ケア・指導料の算定状況,診療実日数,乳腺膿瘍切開術の算定状況を分析した。統計解析にはt検定とχ2検定を用いた。

    結 果

    総数は12,976人,平均年齢33.8(SD 7.1)歳であった。乳腺炎重症化予防ケア・指導料の初回算定は28.5%(3,698人)で,そのうち,29.6%に2回目以降の算定があった。診療実日数の平均は乳腺炎重症化予防ケア・指導料算定群が2.6(SD 2.4)日,非算定群が3.6(SD 5.4)日であり,算定群の方が有意に短かった(t(12,974)=−13.62,p<.001,d=−0.21,95%CI[−1.07, −0.80])。乳腺膿瘍切開術算定群(227人)の診療実日数の平均は,13.0(SD 12.1)日で,非算定群の平均3.1(SD 4.1)日より有意に長かった(t(12,974)=−12.2,p<.001,d=2.3,95%CL[−11.4, −8.2])。また,乳腺炎重症化予防ケア・指導料の初回算定群は,非算定群に比べて乳腺膿瘍切開術の算定が有意に少なかった(χ2=43.95,p<.01)。

    結 論

    乳腺炎患者の診療実日数の平均は4日以内であり,現行4回の乳腺炎重症化予防ケア・指導料の算定回数は妥当と考えられた。また,本診療報酬の算定により,診療実日数の有意な短縮が確認され,重症化予防に寄与する可能性が示唆された。一方,診療報酬算定基準や助産所が保険医療機関でないことが乳腺炎重症化予防ケア・指導料の算定につながっていない可能性がある。さらに,乳腺膿瘍切開が必要となるような重症症例への対応は,診療実日数平均が13.0日ということから現行の診療報酬では不十分であることが示唆された。

  • 佐々木 美果, 小林 康江, 中本 和典
    2026 年40 巻1 号 p. 131-141
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/01/21
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は助産師が察知する「気になる妊婦」の特徴と,アドバンス助産師認証の有無や助産師経験年数別における気になる妊婦の捉え方の違いを明らかにすることである。

    対象と方法

    病院および診療所に勤務する助産師を対象に2021年10月~2022年3月に質問紙調査を実施した。調査内容は助産師の属性,気になる妊婦に遭遇した経験の有無,遭遇した経験のある助産師には108項目の妊婦の様子についてどの程度気になる妊婦と察知するかを尋ねた。108項目を13の視点に整理した上で,助産師全体及びアドバンス助産師認証の有無や経験年数別に各視点の得点を算出した。また総得点についてはKruskal-Wallis検定後,多重比較(Dunn-Bonferroni法)で分析した。

    結 果

    290施設の1,425人から回答を得られ(回収率53.5%),気になる妊婦に遭遇した経験のある1,389人の助産師を分析した。助産師が特に気になる視点は,【妊娠経過に影響する身体所見がある】【妊娠に対するネガティブな発言がある】【妊婦と子どもの様子に違和感がある】であった。またアドバンス助産師認証の有無や経験年数別で13の視点の得点を比較したところ,全ての群の助産師は【妊娠経過に影響する身体所見がある】に注目していた。アドバンス助産師認証のない20年以上の助産師とアドバンス助産師はこの視点に加え,【妊娠に対するネガティブな発言がある】に注目していた。さらにアドバンス助産師認証のある助産師は2つの視点に加え,【妊婦と子どもの様子に違和感がある】【妊婦と夫の様子に違和感がある】にも注目していた。総得点を比較したところ,アドバンス助産師認証の有無や経験年数の違いにより差が認められた。

    結 論

    助産師が察知する気になる妊婦の視点は,アドバンス助産師認証の有無や経験年数により異なることが明らかとなった。今回抽出された13の視点とその具体的な妊婦の様子を示すリストは,助産師が実践の中で活用できるチェックリストになり得る可能性がある。

  • 山本 真実, 小黒 道子, 常田 裕子, 遠藤 亜貴子, 江藤 宏美, 神徳 備子, 渡邊 浩子, 松﨑 政代, 橋本 麻由美, 嶋澤 恭子 ...
    2026 年40 巻1 号 p. 142-150
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/04
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    本報告では,助産師による避妊教育・カウンセリングを受けた女性の認識と女性がカウンセリングで得たものについて明らかにする。

    方 法

    本研究の対象者は,介入直後に質問票に回答した介入群63名の女性であり,その内訳は医療系(医療関係者や医療系学部学生)32名,非医療系31名であった。対象者の平均年齢は23.1歳であった。データ収集内容は,助産師による避妊教育・カウンセリングの標準化プログラムに対する満足度,カウンセリングを受けた女性の認識,女性がカウンセリングで得たものであった。データは介入直後に質問票を用いて収集した。満足度は,度数を算出した。カウンセリングを受けた女性の認識と女性がカウンセリングで得たものについては,自由記述で回答してもらい,質的帰納的に分析した。

    結 果

    女性のカウンセリングに対する満足度は,満足している45名(71.4%),どちらかといえば満足している17名(27.0%),どちらかといえば不満である1名(1.6%)であった。カウンセリングは【個別性に応じたカウンセリング環境】下において,助産師の【優しく寄り添う対応】のもとに行われ,女性にとって【専門職である助産師に相談する機会】,【内省し行動する契機】となり,女性は避妊に関する【知識の獲得】をしていた。

    結 論

    研究に参加した女性の約9割以上が,助産師が行った避妊教育・カウンセリングについて満足していた。今後,助産師は女性とパートナーが当事者意識を持てるようにかかわっていくことやカウンセリングスキルについて自己研鑽を進めていくことが必要である。

  • 堀内 成子, 宍戸 恵理, 瀬戸屋 希, 石井 慶子, 蛭田 明子, 射場 典子, 千葉 真希, 瀬戸山 陽子
    2026 年40 巻1 号 p. 151-161
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/14
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    周産期喪失を体験した両親の悲嘆は,長く辛い作業である。本調査は,自然死産を体験した母親や父親が,グリーフワーク中に閲覧したWeb資源の種類と閲覧時期・頻度・内容を調査し,閲覧後の気持ちを探索することを目的とする。

    対象と方法

    記述的研究デザインを用い,対象は自然死産(妊娠12週以降)を体験し,体験後6か月以上経過し,死産に関連するWeb資源の閲覧経験がある母親または父親とした。リクルートは便宜的抽出法およびスノーボール・サンプリング法を用いて行った。Googleフォームを用いた無記名質問紙により,Web資源の種類,閲覧時期と頻度,内容,閲覧後の気持ちを収集した。聖路加国際大学の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。

    結 果

    母親55人,父親10人の合計65人が回答した。Web資源は,周産期喪失の体験者が作成したホームページやブログが26%,Instagramが21.4%であった。閲覧時期別に頻度を見ると,「毎日見ていた」という人が喪失後『1週間以内』一番多く41人(63.1%),次いで『喪失1ヶ月後』32人(49.2%)であり,その1年後までに閲覧頻度は,減少していた。退院後から死産後1年間の閲覧内容は「悲しみへの対処」「気分の落ち込み」「次子妊娠」「供養・納骨」「身体的不調」「職場復帰」が多かった。閲覧後の気持ちは,『同じような体験や悩んでいる人の体験を閲覧して力づけられた』『自分だけではないと思った』と回答し,8割の人が『閲覧後に,その情報にコメントして自分の気持ちを共有したい』と思っていた。

    結 論

    周産期喪失を体験した両親は,喪失後1週間以内から1年間に渡り,体験者が作成したホームページやブログを閲覧していた。閲覧内容は,時間経過とともに変化し広がっていた。閲覧後には,同じ体験者の思いを知り,ゆるやかなつながりを感じ,気持ちの共有体験につながっていた。

  • 伊藤 七海, 疋田 直子, 松藤 尋幹, 佐藤 洋子, 末次 美子, 菊地 君与, 諸隈 誠一
    2026 年40 巻1 号 p. 162-174
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/14
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は,国際協力に携わるために海外赴任をしている女性が,ライフイベント(結婚・妊娠・出産・育児)の実現におけるどのような悩みを抱えているのか,その実態と課題を明らかにすることを目的とする。本研究を実施することで,国際協力のために海外赴任を希望する女性のキャリアとライフイベント実現のための示唆を得ることができる。

    対象と方法

    研究デザインは質的記述的研究である。国際協力に携わるために海外赴任をしている日本人女性10名にインタビューガイドを用いた半構造化面接をオンラインにて行った。インタビュー内容の逐語録を作成し,本研究の目的に対応する箇所を抽出して各コードやカテゴリーの関係性を検討した。

    結 果

    未婚の対象者が海外赴任前に悩んだことは,【ライフイベント(結婚,妊娠,出産)の悩み】,【ライフイベントがキャリアに影響する悩み】,【悩みはない】の3カテゴリーに分類された。既婚の対象者が赴任前に悩んだこととして,【キャリアと妊娠・出産のバランスの悩み】,【夫の帯同・仕事についての悩み】,【子どもの帯同についての悩み】,【キャリアとライフイベントの両立の悩み】の4カテゴリーに分類された。また,キャリアとライフイベントを実現するための課題は,【会社や組織,国の制度の充実,使える環境の整備】,【赴任国や期間,体制などへの配慮】,【家族帯同が可能な給与や福利厚生の整備】など7カテゴリーに分類された。

    結 論

    国際協力で海外赴任をしている女性の,キャリアとライフイベント(結婚・妊娠・出産・育児)の実現における様々な悩みや課題が明らかになった。家族帯同が可能な額の給与や福利厚生を提供することや,会社や国の制度を充実させることで,女性がキャリアとライフイベントの両方を実現することができるようになるかもしれない。

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