日本助産学会誌
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最新号
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巻頭言
総説
  • 古野 真優子, 疋田 直子
    2025 年 39 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2024/11/12
    ジャーナル フリー

    目 的

    近年のExcessive Crying(EC)に関する研究結果から,ECに関連する要因とECが母子に及ぼす影響を明らかにし,今後必要な研究の示唆を得る。

    対象と方法

    2013–2023年に発表され日本語もしくは英語で書かれた文献を対象とした。PubMedでは「(Excessive Crying OR Infant Colic)AND related factor」で検索し,医中誌では日本語にECに該当するキーワードがないことから,乳児の泣きに関連するキーワードで検索をした。分析対象となった文献は17件であり,文献より,ECに関連する要因とECが母親と児それぞれに及ぼす影響を抽出した。

    結 果

    ECの定義と測定方法は文献によって違いが見られた。日本で実施された研究はなかった。ECに関連する要因として,ECのリスクを上げるものには,妊娠前から妊娠中にかけての母親の不安障害,周産期のgender-based household maltreatment,早産,乳児の気難しさ,新生児期の抗生剤の使用などが報告されていた。反対にECのリスクを下げるものには,妊娠期から産後にかけての社会的サポートや人間関係の幸福度が高いこと,育児へのパートナーの関与が高いことが報告されていた。また,ECが母子に及ぼす影響として,母親の不安や産後うつ,育児ストレスの上昇が報告されていた。乳児期にECがあった児は,幼児期にも行動や気分に問題を抱えるリスクが高いことが報告されていた。

    結 論

    ECに関連する要因やECが母子に及ぼす影響と考えられるものが明らかとなった。今後はECの有無に有意差があった要因について,因果関係を調査すること,抑うつや不安とECの関係についてどちらが原因であるかを明らかにすることが必要である。また日本でのECの実態を調査し,日本の実態に沿った介入を検討することが必要である。

原著
  • 音村 有美, 村上 明美, 浅見 恵梨子, 島谷 康司, 島 圭介, 藤井 宏子
    2025 年 39 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2024/11/12
    ジャーナル フリー

    目 的

    児頭後頭結節滑脱の助産師の判断指標を明らかにし,実践的には児頭後頭結節滑脱に関する教育に,学術的には助産師の技能に貢献することを目的とした。

    対象と方法

    対象はアドバンス助産師またはそれに準ずる経験年数かつ分娩介助件数を有する助産師14名とし,機縁法で研究協力の依頼をした。研究対象者に2つのシミュレーターを用いて分娩介助を実施してもらい,児頭後頭結節滑脱の再現性が高い方を選定してもらった。その後半構造化面接法を用いて選定理由と児頭後頭結節滑脱の判断指標を,同意を得てICレコーダーに録音しながら聞き取った。その後逐語録を作成し,児頭後頭結節滑脱の判断指標に関する内容を抽出,意味内容の類似性に従いカテゴリ化した。本研究は,岡山大学医療系部局臨床研究審査専門委員会の承諾を得て実施した。

    結 果

    対象者全員が,再現性が高い方はthe Sophie and Sophie's Mum Birth Simulator 4.0.(MODEL-med®)と回答した。児頭後頭結節滑脱の判断指標に関する逐語録を娩出時期にも留意し分析を行った結果,11の判断指標が抽出された。判断指標は「後頭結節滑脱前」「後頭結節滑脱時」「後頭結節滑脱後」に分類され,後頭結節滑脱前は【児頭の丸みを感じる】【強い児の反屈圧を触知する】【会陰は後頭結節滑脱まで伸展できる余裕がある】,後頭結節滑脱時は【児頭を介助者の手掌全体で把持可能になる】【介助者の手指関節に児頭の形状や児の娩出圧の変化を感じる】【児の額が確認できる】【介助者の加圧と児の反屈圧の均衡が変化する】【会陰の変化は限界に近づく】,後頭結節滑脱後は【児頭の丸みは触知不能になる】【児頭娩出方向が水平から垂直に変わる】【会陰が復古する】が該当した。

    結 論

    児頭後頭結節滑脱の判断指標として11のカテゴリが抽出され,児頭後頭結節滑脱の機序に沿って分類した結果,児頭後頭結節滑脱前から滑脱後にかけての判断指標が示された。

  • 岡田 麻代, 松井 弘美, 西村 香織, 三加 るり子, 北島 友香
    2025 年 39 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2024/12/04
    ジャーナル フリー

    目 的

    育児を行っている父親が妊娠期から育児期までどのような状況に困難を感じているかを明らかにすることを目的とした。

    対象と方法

    0~6歳の乳幼児の育児を行っている父親にグループ・インタビューを実施した。内容は質的記述的に分析し,コード,サブカテゴリー,カテゴリーを抽出した。

    結 果

    研究参加者は,乳幼児の育児を行う父親9名であった。妊娠期では【妊娠による身体的変化およびその対処が理解できない】中,【妻の妊娠に伴う生活の変化が負担となる】と感じ,【妻の変動する気持ちに対応しようと,自分の気持ちを抑えて過ごす】現状や【家庭を優先できない社会への不満がある】ことが明らかとなった。分娩期では,【無事に児が生まれてくるまで不安がある】や【妻が求める夫の役割にこたえようと模索する】,【妻の分娩に向け,家事と仕事の調整をする】状況があった。育児期では,【苦手な育児を行う】や【家事や育児を行うが裏目に出る】,【仕事と家庭の両立は負担もある】【生活が変化し,家族関係の変化への対応や気遣いが増える】状況があった。

    結 論

    現在,育児を行っている9名の父親は,妊娠期において妊娠による身体的変化や対処が理解できない中,妊娠に伴う生活の変化に負担を感じ,妻の変動する気持ちに対し,父親自身の気持ちを抑えて過ごしていた。分娩期,育児期に関しては先行研究と同様であり,分娩期では,児が生まれてくるまで不安や妻が求める役割に模索しており,戸惑いや無力感などを感じながら分娩に立ち会っていた。育児期は,生活や家族関係の変化に対応し,苦手な育児に向き合い,妻の感情を気遣うなどの状況があった。

  • 松浦 志保, 清水 嘉子, 北山 秋雄
    2025 年 39 巻 1 号 p. 37-53
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2024/12/26
    ジャーナル フリー

    目 的

    医学的なハイリスク妊娠で長期入院を要する初妊婦と夫の妊娠期における親準備性の構成要素から概念を明らかにし,支援の方向性を見出すこと。

    対象と方法

    母体側を要因とする医学的なハイリスク妊娠と診断され,入院加療を要す妊娠22週以降34週未満で20歳以上40歳以下の初妊婦とその夫に半構成的面接を実施した。データは,Steps for Coding and Theorization(SCAT)を用いた質的分析手法で対象の親準備性のテーマ・構成概念を抽出し,さらに階層化することで,対象の親準備性の概念化を行った。

    結 果

    対象は,全てが主訴に切迫早産の診断がある初妊婦と夫6組12名と妊婦のみ同意の5名,合計17名だった。対象のテーマ・構成概念は,階層化により初妊婦34,夫29の要素として抽出された。さらに,要素を階層化した結果,初妊婦から【親となる基盤をなす妊娠の受け止め】ほか8概念,夫から【共有する意義を持つ相互的夫婦関係】ほか7概念を抽出した。初妊婦と夫の抽出された概念の特徴,共通性および類似性と相違性に着目することで「妊娠の受け止めを共有できる」「相互的な夫婦の関係性を築くことができる」「胎児存在実感を夫婦で共有できる」「親になるイメージが豊かになり夫婦間で共有できる」「親になることへの入院の副作用を緩和することができる」「親になることへの夫婦間格差が解消できる」「親となる負担感が解消できる」の7つの支援の方向性が導き出された。

    結 論

    医学的なハイリスク妊娠となった初妊婦と夫の妊娠期における親準備性の概念は,それぞれの親準備性のテーマ・構成概念の階層化により抽出した要素から見出した。さらに,初妊婦と夫に共通・類似,相違する概念を着目することによって,対象の背景や親になっていく過程に副う7つの支援の方向性を導き出した。今後は,初妊婦と夫の親準備性がこの方向性上にあるか否かを見極めることで,充足されていない支援や情況に副う支援の検討を容易にすると考える。

  • 中田 覚子, 濵 耕子
    2025 年 39 巻 1 号 p. 54-66
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2024/12/17
    ジャーナル フリー

    目 的

    日本人妊婦のQOL尺度50項目版の信頼性および妥当性を検証する。

    対象と方法

    妊婦健康診査目的で来院した日本人妊婦を対象に,2021年10月から2022年3月に,無記名自記式質問紙調査を実施した。主な調査内容は,研究者らが作成した日本人妊婦のQOL尺度50項目版,WHOQOL-26,COVID-19による妊娠生活への影響である。統計分析には,SPSS及びAMOSを使用し,項目分析,探索的因子分析,信頼性係数の算出,因子構造のモデルの適合性の検証,既存尺度と開発尺度における相関分析,既知集団による得点比較を実施した。

    結 果

    541名(有効回答率69.0%)を分析対象とした。平均年齢は31.5±4.9歳,平均妊娠週数は24.6±9.0週であった。項目分析により4項目を削除し,探索的因子分析により因子負荷量0.4未満に該当した9項目を削除した。最終的に9因子37項目で構成され,1因子あたりの質問項目数は2~8項目となった。本尺度全体のCronbach's α係数はα=0.918,各因子はα=0.708~0.902であり,一定の内的一貫性が確認された。因子構造のモデルの適合性を検証した結果,GFI=0.824,AGFI=0.791,CFI=0.859,RMSEA=0.067となり,概ね良好な結果が得られた。基準尺度となるWHOQOL-26との相関はr=0.817を示し,併存的妥当性が確認された。先行研究に基づき,COVID-19による妊娠生活への影響区分における得点比較を行った結果,影響を感じている者は,感じていない者に比べ,QOL得点が低いことが示され,既知集団妥当性が確認された。

    結 論

    日本人妊婦のQOL尺度は,9因子37項目で一定の信頼性および妥当性を有することが確認された。今後,臨床的有用性の検証を行い,より臨床で使用しやすい尺度となるよう検討を続ける。

  • 日本助産学会SRHR & Abortion Care ワーキンググループ 助産師グループ, 徳武 千足, 斎藤 未希, 河内 浩美, 杵淵 ...
    2025 年 39 巻 1 号 p. 67-78
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2024/12/19
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,助産師の人工妊娠中絶に対する態度,認識およびケア時に感じるつらさの実態を探索することである。

    対象と方法

    2022年3月~9月に,全国11都道府県の助産師に対して,対象の背景,人工妊娠中絶ケア経験,架空事例に対する態度,人工妊娠中絶に対する認識やケア時のつらさについて,無記名自記式質問紙を作成し調査した。分析は,χ2検定を用い,有意差を認めた場合には群間比較を行った。

    結 果

    質問紙は571部回収し,563部を分析対象とした。対象者の年齢は,40代が28.1%,助産師資格取得後年数は21年以上が41.7%と最も多く,分娩介助件数は,201件以上が55.4%と半数以上を占めた。回答時の就業機関は,病院67.5%,診療所14.6%であった。リプロダクティブ・ヘルス/ライツの学習経験は63.1%,人工妊娠中絶ケアの学習経験は74.1%であった。入職1年目から人工妊娠中絶ケアを担当したのは初期中絶が53.6%,中期中絶が36.6%であった。架空事例に対する助産師の態度は,高校生の奔放な性的活動により中絶を繰り返す事例,治療可能な先天奇形が見つかった事例において,女性の決定の受け入れや女性への共感性が低かった。さらに,人工妊娠中絶に対する認識として,「女性の権利/女性と男性両者の権利」が32.5%,「状況によるので何とも言えない」が55.1%であった。また,助産師の96.0%は,人工妊娠中絶ケア時に「つらい」と感じ,その理由は,女性のことを思うつらさが最多で,胎児への思い,助産師自身への思いの順に多かった。

    結 論

    助産師の人工妊娠中絶に対する態度,認識およびケア時に感じるつらさの実態から,日本の人工妊娠中絶ケアの質向上のために,助産師基礎教育の改善と助産師個人の信条が守られるような研修やサポート環境の充実を図る必要性が示唆された。

  • 坂谷 愛季, 小橋川 直美, 江藤 宏美
    2025 年 39 巻 1 号 p. 79-91
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2024/12/17
    ジャーナル フリー

    目 的

    産科で管理される,哺乳力の弱いことが予測される後期早産児,あるいはやや体重の少ない新生児を出産した母親に対して,分娩後早期から搾乳刺激を行うことの効果を明らかにする。

    方 法

    ヒストリカル・コントロール研究を用いて介入の効果を検討した。対象者は36週の早産,または正期産で出生体重が在胎期間別体重の30パーセンタイル未満の児とその母親とした。介入群には分娩当日に1回と産後1日以降に1日4回,直接授乳の前または後に電動搾乳機で搾乳刺激を行った。介入群とコントロール群は傾向スコアを用いて分析し,栄養方法を主母乳と主人工乳に分類し比較分析した。

    結 果

    介入群は40人,コントロール群は64人であった。産後3日の人工乳補充量は介入群の方がコントロール群に比べ38 mL有意に少なかった(95%信頼区間[−67,−10],p=.008)。退院時点の栄養方法が主母乳である割合は,介入群の方がコントロール群に比べ2.88倍であった(95%信頼区間[1.18,7.03],p=.02)。

    結 論

    介入群に対して早期からの搾乳刺激の介入を行ったことで,産後3日の人工乳の補充量が有意に少なかったことが明らかとなった。本研究で対象とした新生児では乳汁を直接授乳で吸い取る力が弱いが,搾乳刺激を行ったことで乳汁の生成を促す作用に影響したことが推察された。

  • 桃井 雅子, 下木 ゆかり, 川上 桂子, 龍 聖子, 佐居 由美
    2025 年 39 巻 1 号 p. 92-101
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/02/06
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,母性看護領域において熟練看護者(助産師および看護師)が「安楽」なケアと考える実践内容を明らかにすることである。

    対象と方法

    母性看護領域のなかでも周産期看護において臨床経験を6~7年以上有する,7名の熟練看護者(看護師2名,助産師5名)を対象に半構成的面接を実施し,質的記述的にデータを分析した。

    結 果

    熟練看護者が「安楽」なケアと考える実践内容の特徴は【周産期を通して専門職者として傍に居ることで「心身の苦痛軽減を図る」】【周産期を通してセルフケアの「意思決定を支援する」】【人間の自然性・日常性を尊重し「環境を整える」】の3コアカテゴリで構成されていた。

    結 論

    熟練看護者は,専門的な知と技そして姿勢・態度を具え周産期を通して女性と家族の傍に居り,先を見据えながら心身の苦痛の軽減を図る等,周産期において継続的に「安楽」なケアと考える看護実践を創出する様相が示唆された。また,女性と子ども,家族の有する“人間の自然性”と,“個別性”のある日常生活を尊重することで,本来持てる力すなわちセルフケア力や意思決定する力が発揮されるように支援し,ひいては心身の安楽に至ることを意図した熟練ならではの卓越したケアであることが示唆された。

  • 永井 紅音, 荒木 奈緒
    2025 年 39 巻 1 号 p. 102-111
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    目 的

    分娩介助実習における助産師学生の自己効力感を高めるための臨床指導者の教育の実践を明らかにすることである。

    方 法

    クリニカルラダーⅢレベルの認証を受けた分娩介助実習指導経験のある臨床指導者に半構造的面接を行い,KJ法を用いて分析した。

    結 果

    分娩介助実習における助産師学生の自己効力感を高めるための臨床指導者の教育の実践は,8個に集約された。分娩介助実習における助産師学生の自己効力感を高めるため,臨床指導者は教員や助産師学生から【学生が実施できる産婦のケアを判断するため学生について情報を得る】を行い,【学生が産婦のケアをするためにケア実施前からケア実施後まで必要な判断を継続的に行う】を行っていた。この判断を元に【達成可能な行動目標を学生が設定できるよう導く】,【学生が産婦のケアを実施する前にまず臨床指導者がケアを実施して見せる】,【可能な限り学生に産婦のケアを実施させる】,【学生がケアを実施してできたことを明らかにし気づかせるため「振り返り」を行う】を行っていた。これらの教育の実践は円環的構造となり,【学生が産婦のケアをするためにケア実施前からケア実施後まで必要な判断を継続的に行う】とそれぞれフィードバックしていた。その一方,助産師学生が実際に産婦のケアを経験し学ぶため,【産婦との関係性を構築する】を行っていた。さらに,【学生を一人の人間として認め,学生にとって助産師を目指して良かったと思える実習となるよう関わる】という臨床指導者の信念が分娩介助実習における助産師学生の自己効力感を高めるための教育の実践全体に影響を与えていた。

    結 論

    臨床指導者は学生の自己効力感を高めるため,後輩助産師育成への信念を持ち,刻々と変化する分娩経過の中で必要な判断を継続的かつ瞬時に行いながら,学生が実施可能な産婦のケアを見極め,可能な限り学生に実施させ,実施できたことを気づかせる教育を実践していた。

  • 問本 弘美, 大川 聡子, 三木 明子
    2025 年 39 巻 1 号 p. 112-125
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/02/08
    ジャーナル フリー

    目 的

    夫・パートナーと同居するDV被害女性から自発的な相談がない,もしくは支援に対する本人のニーズが高くない状況における,自ら助けを求めないDV被害女性を支援するための助産師の実践を明らかにする。

    対象と方法

    研究参加者は,周産期のDV被害者支援を研究している医療施設の助産師,もしくは,DVに関し組織的な取り組みを行っている医療施設で働き,DVの視点を持った実践を行う助産師とした。方法は質的記述的研究デザインを用い,オンラインにて半構成的面接を実施した。得られたデータをコード化しカテゴリーを作成した。神戸女子大学及び神戸常盤大学の倫理委員会の承認を得て実施した。

    結 果

    研究参加者は,3つの医療施設に勤務する助産師7名であった。自ら助けを求めない周産期のDV被害女性とその家族の特徴は,【対応すべき問題としてDVに向き合えない】【家庭のバランスを壊すような介入は拒否する】【閉鎖的な家庭内で子どもが危険にさらされている】の3カテゴリーであった。自ら助けを求めないDV被害女性を支援するための助産師の実践として,以下の6カテゴリーを抽出した。助産師は,女性からの自発的な相談がなくとも【気になるサインをもとに情報を積み重ねる】ようにし,【マタニティケアを通し何度も踏み込んで話を聞く】ことで夫婦関係について把握し,【DVを自覚しSOSを出す女性の力を高める】と共に,【夫婦が安全に育児できるか判断する】ようにしていた。そして,【ケアのバトンを地域へ確実につなぐ】ことに加え,【退院後もつながり続ける院内の体制をつくる】ようにしていた。

    結 論

    夫との同居継続は子ども虐待のリスクが高い状況であるにも関わらず,女性自身はDVを問題と捉えず,家庭に介入されることを拒否していた。そのため,夫婦の関係性のアセスメント,DVを自覚し自分からSOSを出せるように促す関わり,そして,確実に支援をつなぎ安全に育児するための,院内の多職種・多部門及び地域の保健師や児童福祉部門との連携が,助産師の実践として重要である。

  • 浦西 美空, 白石 三恵, 堀口 範奈
    2025 年 39 巻 1 号 p. 126-138
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/02/08
    ジャーナル フリー
    電子付録

    目 的

    米国で開発された35項目5因子構造のPaternal Involvement with Infants Scaleをもとに,日本語版乳児の父親の育児関与尺度(PIWIS-J)を作成し,その信頼性と妥当性を検証することを目的とした。

    対象と方法

    関西圏にある病院1施設と育児情報を提供するWebサイトで,2023年7–12月に乳児をもつ父親を対象に研究参加者を募集した。対象者に質問紙調査を行った後,一部の対象者には,信頼性検証のために2週間後にPIWIS-Jの再調査を行った。信頼性の検証では,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:ICC)とCronbach's α係数を算出した。構成概念妥当性を検証するために,探索的因子分析を行った。基準関連妥当性には,短縮版ソーシャルサポート尺度(Multidimensional Scale of Perceived Social Support:MSPSS短縮版),コペアレンティング関係尺度(Japanese version of the Coparenting Relationship Scale:CRS-J)を用い,PIWIS-Jとの相関係数を算出した。

    結 果

    分析対象は,妥当性検証177名,信頼性検証72名であった。探索的因子分析により,PIWIS-Jは29項目4因子構造であることが示された。尺度全体のICCは0.80,Cronbach's α係数は0.90であった。基準関連妥当性の検証の結果,PIWIS-JとMSPSS短縮版,CRS-Jとの相関係数は,それぞれ0.28,0.28であった。

    結 論

    乳児を養育する父親において,29項目4因子のPIWIS-Jの信頼性と妥当性が確認された。PIWIS-Jは,乳児の養育における父親の育児関与状況の調査のみならず,父親の育児関与が母親,乳児の健康状態に及ぼす影響を検討する際に有用であると期待される。

  • 松原 愛海, 小澤 未緒, 山田 桃子, 米澤 かおり, 春名 めぐみ
    2025 年 39 巻 1 号 p. 139-145
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/02/28
    ジャーナル フリー

    目 的

    Neonatal Infant Pain Scale(NIPS)の日本語版の信頼性と妥当性を検証する。

    対象と方法

    翻訳と逆翻訳を経て日本語版を作成した後,医療用粘着剤剥離中の新生児・乳児の様子を調査者がNIPSで評価した。また,医療用粘着剤剥離の様子を撮影したビデオを調査者とは異なる観察者が見て,医療用粘着剤剥離前中後の3時点の新生児・乳児の様子をNIPSで評価した。構成概念妥当性の評価のために,3時点のNIPSの総得点をFriedman検定で比較した。評価者間信頼性については,医療用粘着剤剥離中の調査者とビデオ観察者のNIPSの総得点の級内相関係数を算出し検討した。また,3時点のNIPSのCronbach's alphaと項目間相関,修正済み項目合計相関を算出して内的整合性を確認した。

    結 果

    3時点のNIPSの総得点には明らかな差があり(χ2=48.04,df=2,p<.001),医療用粘着剤剥離時の総得点が高く,構成概念妥当性が確認された。調査者とビデオ観察者の級内相関係数はr=0.72(p<.001)で評価者間信頼性を確認した。医療用粘着剤剥離前,剥離中,剥離後のNIPSのCronbach's alphaはそれぞれ0.95,0.86,0.94で内的整合性を確認した。項目間相関の相関係数の範囲は剥離前が0.60–1.00,剥離中が0.39–0.79,剥離後が0.65–0.94であった。修正済み項目合計相関は剥離前が0.71–0.92,剥離中が0.61–0.80,剥離後が0.72–0.88であった。

    結 論

    日本国内のNICUでよく使用されているNIPS日本語版の信頼性と妥当性を確認することができた。今後NICUでの使用に加えて,産科の新生児室を含め,新生児に関わる多くの場面で広く使用されることが期待できる。

  • 木村(佐藤) 瑠菜, 藤田 愛, 手塚 美春, 鈴木 美春
    2025 年 39 巻 1 号 p. 146-153
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/03/08
    ジャーナル フリー

    目 的

    肥満妊婦や妊娠中の過度な体重増加に繋がる食行動を知ることは,妊娠中の体重管理に寄与できる可能性がある。本研究は,非妊時肥満体型の妊婦の食行動の特徴,および妊娠中に過度な体重増加をきたした妊婦の食行動の特徴を明らかにする。

    対象と方法

    正期産,単胎分娩後の褥婦238人に,過度な体重増加をきたす妊娠中の食行動質問票24項目(DBQ)に回答してもらった。DBQは【体重増加に対する認識のずれと後悔】【よく噛まず早く食べるくせ】【外食や中食における味の嗜好の偏り】【食べ物がなくなることへの心配】【目の前にある果物やお菓子を食べるくせ】【食事を残すことへの抵抗感】で構成される5段階尺度である。非妊時BMIは,やせ,普通,1度肥満,2度肥満の4群に,妊娠中の総体重増加量は,日本産婦人科学会が推奨する「体重増加量の目安」以上の体重増加を,推奨以上群,それ以外を推奨以下群の2群に区分した。分析は,DBQとの関連はStudent's t検定,一元配置分散分析ならびに多重比較を行った。

    結 果

    有効回答218部(99.0%)であった。1度肥満群と2度肥満群では,【体重増加に対する認識のずれと後悔】の得点がやせ群や普通群に比べ有意に高く(1度肥満群vs.やせ群,p < 0.01;2度肥満群vs.やせ群 p < 0.01),加えて2度肥満群では【よく噛まず早く食べるくせ】,【外食や中食における味の嗜好の偏り】,【食事を残すことへの抵抗感】が他の群に比べ有意に高かった(p < 0.01)。推奨以上群の食行動の特徴では,【体重増加に対する認識のずれと後悔】【食事を残すことへの抵抗感】の得点が有意に高かった(p < 0.0001;p < 0.001)。

    結 論

    肥満妊婦や過度な体重増加となる妊婦の食行動の特徴が明らかになった。特に,2度肥満の妊婦はよく噛まず早く食べるくせや外食での味の嗜好の偏りもみられた。以上より,妊娠中の食行動の特徴をアセスメントすることが,適切な体重増加の指導につながることが示唆された。

  • 金子 敦子, 片岡 弥恵子
    2025 年 39 巻 1 号 p. 154-165
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/04/11
    ジャーナル フリー

    目 的

    母親のみの産後ケア事業の利用は,国が勧めているにもかかわらず普及していない。本研究の目的は,母親のみの産後ケア事業利用の受け入れに関する促進・阻害要因を明らかにすることである。

    対象と方法

    研究デザインは質的記述的研究とした。研究対象者は東京都の産後ケア事業委託施設の施設長または産科・産婦人科の看護管理者で,母親のみの産後ケア事業利用者を受け入れた経験がある6名であった。データ収集は半構造化インタビューで実施した。得られたデータは,Consolidate Framework for Implementation Research:CFIRに基づき分析した。

    結 果

    研究対象者6名の所属施設はすべて助産所であった。CFIRの4領域と10の構成概念で9つの促進要因と7つの阻害要因を抽出した。イノベーションの特性の促進要因は《助成金がでるため他の支援方法より利用者の経済的な負担が小さい》ことなどで,阻害要因は《母親のみの産後ケア事業利用が自治体の利用基準に合致していない》ことなどであった。外的セッティングの促進要因は《日頃から自治体と密に連携を図る》こと,阻害要因は《産後に児と過ごすことができない母親を多職種で支援するシステムが構築されていない》ことなどであった。内的セッティングの促進要因は《母親たちの多様なニーズを尊重してケアを提供する》ことなどであった。個人特性の促進要因は,産後ケア事業委託施設の助産師に《産後ケア事業関連法案や施策の主旨を理解して自治体と交渉する力がある》こと,阻害要因は《支援の際に何をしてよいかわからないなどの感情が生じる》ことなどであった。

    結 論

    CFIRの4領域と10の構成概念で9つの促進要因と7つの阻害要因が抽出された。本研究で抽出されなかったCFIRの構成概念の促進・阻害要因を明らかにすることや,助産師以外のステークホルダーの視点を調査することが今後の課題である。

  • 谷崎 望, 田中 浩二, 丸山 佳奈, 塩崎 ゆかり, 乙﨑 亜希子
    2025 年 39 巻 1 号 p. 166-176
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

    目 的

    周産期のグリーフケアにおける「そばにいる」という助産実践の意味を明らかにする。

    対象と方法

    産科病棟の経験が5年以上の助産師に,「そばにいる」1場面を想起してもらい,非構成的面接を実施した。得られたデータは,Bennerの解釈学的現象学的アプローチを用いて分析した。

    結 果

    研究参加者は,8名の助産師で,経験年数は6~24年であった。周産期のグリーフケアにおける「そばにいる」という助産実践の意味として,4つのテーマが導き出された。1)【ありのままを壊さない】「そばにいる」意味は,子どもを亡くした母親のありのままを受け入れることであった。助産師は,母親の思いを聴き出すことを目的とせず,見えない感情の波にともに漂うことを大切にしていた。その在り方は,母親のいる景色に溶け込み,自らの存在感を消すような姿勢であった。2)【溢れ出る感情を守る】助産師が母親の「そばにいる」ことによって,互いに通じ合う関係が築かれていた。その意味は,母親の内にある感情を表出する場をつくり,助産師が母親の溢れ出る感情をすべて受け止め続けることであった。3)【命への敬意とはじまりの共有】助産師にとって,新しい命を産む母親や生まれてくる子どもの命は,生死に関わらず尊いものであった。亡くなったとしても未来へ繋がる大切な命であり,助産師は,このメッセージを柔らかい態度で「そばにいる」ことで伝えたいと願っていた。4)【亡くなった子が確かにいた証を残す】周産期喪失では,母親の悲しみは社会的に理解され難いものであった。助産師は,母親の「そばにいる」ことを通してその情景や感情を記憶に刻み,亡くなった子どもの存在を保証していた。そのことは,母親の悲嘆プロセスに重要な意味を持っていた。

    結 論

    周産期のグリーフケアにおける「そばにいる」という助産実践は,ありのままの母親と大切な命が存在したという事実を守り,母親の未来へ繋がる意味を持っていると考えられた。

資料
  • 磯 律子, 疋田 直子, 水畑 喜代子, 礒山 あけみ
    2025 年 39 巻 1 号 p. 177-188
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2024/10/29
    ジャーナル フリー

    目 的

    国内外で公表された妊産婦への足浴の効果に関する既存の知見を整理し,足浴の効果についての示唆を得ることである。

    対象と方法

    2023年12月に医学中央雑誌Web版,PubMed,CINAHLで,「妊婦」「産婦」「妊産婦」「足浴」「foot bath」「pregnant woman」「pregnancy women」をキーワードとする11文献(日本語8件,英語3件)を分析対象とした。研究デザイン,対象,介入方法,介入の評価方法,効果に関する情報を抽出した。

    結 果

    妊婦を対象とした文献が6件,産婦を対象とした文献が5件であった。足浴方法は,40°C前後で15分間前後,水深15 cm,三陰交が浸かる程度と表記されている文献が主流であった。妊婦への足浴の効果は,【肩こり】【不眠】【腰痛】といったマイナートラブルの軽減,リラクセーション効果(気持ち良さや不安軽減などの主観的,心理的効果)であった。産婦への効果は【陣痛回数の増加】【陣痛間隔の短縮】【陣痛持続時間の延長】【リラクセーション】【産痛緩和】であった。

    結 論

    妊婦への足浴の効果は,リラクセーション効果,妊娠期のマイナートラブル軽減の可能性が示され,産婦にはリラクセーション効果,分娩促進効果と産痛緩和効果の可能性が示された。しかし,効果の評価が主観的な指標に偏っていることや研究デザインがランダム化比較試験RCT(randomized controlled trial)ではないことから明確な結果は得られていない。さらなるエビデンスの集積が必要である。

  • 相川 祐里, 芳川 玲子, 片岡 弥恵子
    2025 年 39 巻 1 号 p. 189-201
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,周産期のメンタルケアを担う助産師を対象に,支援者への支援として心理師をスーパーバイザーとしたグループスーパービジョン(以下GSV)の実行可能性を,フィジビリティスタディにて質的に評価することである。

    対象と方法

    本研究のGSVでは,スーパーバイジーは,訪問看護ステーションに所属し,産前産後にメンタルヘルス不調をきたした女性に対し継続的な支援を行っている助産師とした。またスーパーバイザーの心理師は,医療領域で助産師と協働した経験のある心理師とした。GSVは,1回30分の事前顔合わせ会の後,1回90分のGSV計3回で構成した。実行可能性の評価は,本研究におけるGSVの目標の達成状況,受容性,実施可能性,実用性に関する半構造化インタビューを,インタビューガイドにそって助産師および心理師に実施した。研究者のGSV参加観察データも補助的に活用し,質的記述的に検討した。聖路加国際大学研究倫理審査の承認を得て実施した(23-A029)。

    結 果

    研究参加者は,スーパーバイジーの助産師が1施設から2名,スーパーバイザーの心理師は1名であった。助産師はGSVに参加し,①周産期メンタルケアに関する知識とスキルを理解し臨床で活かせ,②心理的安全感を得て困難感が軽減し,③グループの凝集性は増加し,GSVは適切であると評価した。受容性についても概ね良好で,開始前は馴染みのないスーパービジョンという構造に緊張を感じたものの,回数を重ねるにつれて抵抗感は軽減していた。実施可能性,実用性については,助産師ならびに心理師共に顔合わせ会,GSV3回全てに参加できた。心理師についても,同様の傾向が示された。

    結 論

    GSVは実行可能性が高く,周産期におけるメンタルケアを担う助産師への支援方法のひとつとなる可能性が示された。今後は対象数の拡大や,スーパーバイザーを担う心理師の質統一をどう図るかについて再検討する必要がある。

  • 岩渕 彩菜, 竹内 翔子, 篠原 枝里子, 中村 幸代
    2025 年 39 巻 1 号 p. 202-212
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/04/05
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,病院に勤務する助産師による外国人褥婦に対する出産退院後から1ヶ月健診までの生活に向けた支援の実態を明らかにすることである。

    対象と方法

    病院に勤務する臨床経験年数3年以上の助産師151名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。主な質問内容は「外国人褥婦に対する出産退院後から1ヶ月健診までの生活に向けた支援の実態」および「外国人褥婦に支援を実施する上で困難に感じた内容」であった。分析では記述統計量の算出を行い,助産師臨床経験年数による比較にはMann-WhitneyのU検定を適用した。本研究は横浜市立大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号F230800033)。

    結 果

    有効回答のあった126名を分析対象とした(回収率89.4%,有効回答率93.3%)。外国人褥婦に対する出産退院後から1ヶ月健診までの生活に向けた支援として,80%以上の助産師が実践していた内容は,「退院後のサポート環境に関する情報収集」,「通訳機・通訳アプリの使用」,「文化・宗教を尊重した授乳指導」等であった。一方,「言語的コミュニケーション」,「家族やキーパーソンを巻き込んだ支援」は,80%以上の助産師が困難に感じていた。さらに臨床経験11年以上の助産師は10年以下の助産師と比べ,「相手の文化・宗教を尊重した清潔ケア」,「相手の文化・宗教を尊重した食事指導」,「母子保健制度利用の確認や知識提供」等の4項目を有意に実践していた。

    結 論

    助産師による外国人褥婦に対する出産退院後から1ヶ月健診までの生活に向けた支援について,コミュニケーションの工夫や退院後についての情報収集,文化・宗教を尊重した育児指導の内容が多かった一方,困難に感じている助産師も多く,多言語に対応したパンフレット等の活用や対応した外国人褥婦のケア経験を共有する機会を設ける必要性が示唆された。さらに,外国人褥婦に対する助産師全体の支援の質向上のために,助産師臨床経験年数がより長い助産師による支援や経験の共有を行うことの必要性が示唆された。

  • 山下 恵
    2025 年 39 巻 1 号 p. 213-225
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    [早期公開] 公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

    目 的

    背部温罨法が産褥早期における女性のストレスと乳房に及ぼす影響を明らかにする。

    対象と方法

    対象は,母児ともに妊娠・分娩・産褥経過に明らかに影響を及ぼす異常がなく,経腟分娩をし,産褥0日または産褥1日から母児同室が可能な母乳哺育を希望する初産婦22名とした。産褥1日から産褥4日まで毎日,可能な限り同一時間帯の午前中に1回15分間の背部温罨法を実施した。検体採取等は温罨法前後と午後(15~18時を目安)に行った。ストレスは,唾液検体からコルチゾールとヒトヘルペスウイルス6型・7型(以下,HHV6・HHV7)および「1:不快」から「9:快」までの9段階リッカート尺度(以下,快-不快)を用い,乳房緊満感と乳房痛はVisual Analog Scaleを用いて評価した。

    結果・考察

    ストレスでは,産褥1~4日のすべての産褥日数で温罨法前と比較して温罨法後に有意に快となった(p<.01)。また,HHV6において産褥1日の温罨法前後にのみ有意差を認め(p=.016),温罨法後にストレスが緩和されたことが示された。しかし,コルチゾールとHHV7,産褥1日の温罨法前後以外のHHV6においては温罨法前後および産褥日数によるに変化(午後値)に有意差を認めず,背部温罨法のストレス緩和効果を明らかにするまでには至らなかった。乳房緊満感および乳房痛では,午後のVAS中央値は産褥日数が経過するにつれて上昇し,乳房緊満感と乳房痛が強くなっていた。しかし,乳房緊満感,乳房痛ともにすべての産褥日数において温罨法前後のVAS中央値に有意差を認めなかったことから,産褥日数による乳房緊満感および乳房痛の増強は生理的な変化であると推察され,背部温罨法は,乳房緊満感と乳房痛に影響を及ぼさないと考えられた。

    結 論

    産褥早期の褥婦に対する背部温罨法は,乳房緊満感および乳房痛に明らかな影響を及ぼすことなく,対象を快の状態に導くことが示された。

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