目 的
本研究は,レセプトデータを用いて乳腺炎重症化予防ケア・指導料の算定実態を明らかにし,その課題を検討することを目的とする。
方 法
2019年10月~2020年9月のレセプトデータを用い,ICD-10コード[N61](乳房の炎症性障害)と診断された乳腺炎患者の,乳腺炎重症化予防ケア・指導料の算定状況,診療実日数,乳腺膿瘍切開術の算定状況を分析した。統計解析にはt検定とχ2検定を用いた。
結 果
総数は12,976人,平均年齢33.8(SD 7.1)歳であった。乳腺炎重症化予防ケア・指導料の初回算定は28.5%(3,698人)で,そのうち,29.6%に2回目以降の算定があった。診療実日数の平均は乳腺炎重症化予防ケア・指導料算定群が2.6(SD 2.4)日,非算定群が3.6(SD 5.4)日であり,算定群の方が有意に短かった(t(12,974)=−13.62,p<.001,d=−0.21,95%CI[−1.07, −0.80])。乳腺膿瘍切開術算定群(227人)の診療実日数の平均は,13.0(SD 12.1)日で,非算定群の平均3.1(SD 4.1)日より有意に長かった(t(12,974)=−12.2,p<.001,d=2.3,95%CL[−11.4, −8.2])。また,乳腺炎重症化予防ケア・指導料の初回算定群は,非算定群に比べて乳腺膿瘍切開術の算定が有意に少なかった(χ2=43.95,p<.01)。
結 論
乳腺炎患者の診療実日数の平均は4日以内であり,現行4回の乳腺炎重症化予防ケア・指導料の算定回数は妥当と考えられた。また,本診療報酬の算定により,診療実日数の有意な短縮が確認され,重症化予防に寄与する可能性が示唆された。一方,診療報酬算定基準や助産所が保険医療機関でないことが乳腺炎重症化予防ケア・指導料の算定につながっていない可能性がある。さらに,乳腺膿瘍切開が必要となるような重症症例への対応は,診療実日数平均が13.0日ということから現行の診療報酬では不十分であることが示唆された。
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