日本助産学会誌
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巻頭言
原著:40周年記念論文若手賞
  • 萩原 柚希, 白石 三恵, 堀口 範奈
    2026 年40 巻2 号 p. 177-191
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    産後早期は,母親・父親ともに産後うつ病のリスクが高い時期である。産後うつ病は家族機能や児の発達に影響するため,家族を包括的に捉えた支援が必要である。その基礎的知見を得るため,本研究は,産後早期の夫婦を対象に,抑うつ症状の有無による心理社会的特徴を比較することを目的とした。

    方 法

    関西圏の2病院と育児関連Webサイトにて募集した生後1–2か月の児を養育する夫婦に,横断研究を実施した。母親はエジンバラ産後うつ病自己評価票が9点以上,父親は8点以上を抑うつ症状ありとし,①抑うつ無群,②母親のみ抑うつ群,③父親のみ抑うつ群,④両者抑うつ群に分類した。心理社会的特徴は,家事・育児分担割合,乳児の父親の育児関与尺度,ソーシャルサポート尺度短縮版,赤ちゃんへの気持ち質問票,夫婦関係満足度尺度等で評価した。家事・育児分担等は夫婦間の認識のずれも評価した。統計解析には多項ロジスティック回帰分析を用いた。

    結 果

    夫婦321組(①237組(73.8%),②32組(10.0%),③41組(12.8%),④11組(3.4%))を分析対象とした。抑うつ無群に比べ,母親のみ抑うつ群では,母親は父親の育児関与が少ないと認識し,その認識には夫婦で相違がみられた。父親のみ抑うつ群では,夫婦ともに父親の育児関与尺度の下位尺度「間接的な不満感」および児への否定的感情が強いと認識し,父親のみソーシャルサポートおよび夫婦関係満足度得点が低かった。両者抑うつ群では,夫婦ともに父親の育児関与尺度の下位尺度「情緒的な関わり」の得点が低かった。母親のみ抑うつ群・両者抑うつ群では,夫婦ともにソーシャルサポートおよび夫婦関係満足度得点が低く,児への否定的感情が強かった。

    結 論

    産後早期の抑うつ症状は,育児分担や対児感情,夫婦関係に対する認識を含む心理社会的特徴と関連し,その特徴は抑うつ症状を有する者が母親か,父親か,両者かにより異なった。妊娠期あるいは産後早期から,夫婦単位で心理社会的特徴を踏まえて支援する重要性が示唆された。

  • 上原 凜花, 神徳 備子, 江藤 宏美
    2026 年40 巻2 号 p. 192-202
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    目 的

    産後1か月と2か月における両親(母親・父親)と児の睡眠実態および概日リズムを観察し,2時点における縦断的な変化を明らかにする。

    対象と方法

    2019年6月~2021年10月をデータ収集時期とし,ローリスク分娩で出生し合併症のない児(第一子)とその両親(母親・父親)の23家族を対象とした。家族3者へ産後1か月と2か月の各時期において3日間のアクチグラフ装着と両親へ睡眠日誌記入を依頼した。調査項目は対象者の基本属性,母子手帳による妊娠・分娩時の情報,アクチグラフから得られる活動量,睡眠日誌による睡眠覚醒に関する活動状況とした。2時点間および両親間の睡眠状況は対応のあるt検定を用いて比較し,児の栄養方法と就床環境によって両親の睡眠を層別に分析した。また,活動量を用いて準自己相関関数を算出し,24時間周期の自己相関係数(振幅)を概日リズムの強さの指標として,両親および児それぞれの概日リズムの推移を探索した。

    結 果

    母親の総睡眠時間および睡眠効率は産後2か月で有意に増加した一方で,父親は2時点の睡眠における有意な変化はみられなかった。しかし,父親も総睡眠時間は平均6時間,睡眠効率は80%台であり,睡眠が良好であるとはいえない結果となった。概日リズムについては,母親は2時点ともに児に似たリズムを示し,父親に比べて振幅が小さく,産後1か月よりも産後2か月の方が振幅が大きくなった。父親については2時点での変化は認められなかった。

    結 論

    産後1か月の母親の睡眠状況および概日リズムは大きく崩れているものの,産後2か月には児とともにリズムが明確となる傾向が認められた。父親は2時点ともに安定してリズムが確立していることが確認できた。父親に比べ母親の方が睡眠状況は有意に悪かったが,父親の睡眠時間や睡眠効率も決して良好ではないことが示唆された。

総説
  • 丸山 菜穂子, 豊本 莉恵, 福澤 利江子, 伊藤 賢伸, 岡村 なおみ, 小古山 学, 片岡 弥恵子, 須田 哲史, 園田 正樹, 田谷 ...
    2026 年40 巻2 号 p. 203-216
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    目 的

    産後ケア事業に関する既存研究の網羅的収集と分析を通して,研究で示唆されている事業の課題と今後検討が必要な論点を明らかにする。

    対象と方法

    日本で産後ケア事業の枠組みで実施された研究について,2013年~2025年1月までに日本語または英語で公開された文献を対象にスコーピングレビューを実施した。文献データベースはMEDLINE,CENTRAL,EMBASE,CINAHL,PsycInfo,医中誌Web,JDream Ⅲを用いた。収集された文献について,独立した2名の研究者がタイトルと抄録のスクリーニング,フルテキストスクリーニングを行った。会議録,文献レビュー,商業誌掲載記事,事業の解説や見解にとどまる記事は除外した。分析対象文献から,目的,方法,研究対象者,結果等のデータを抽出し,自治体・事業者・母親の3分類で整理し,記述的に分析した。

    結 果

    5,142件の文献が検索され,重複を除外した3,580件をスクリーニングした結果,44件が対象となった。そのうち原著論文は7件,英語文献が1件であった。介入研究はなく全て観察研究であった。対象者は,自治体7件,事業者6件,母親31件であった。産後ケア事業の課題には「事業実施体制の地域間差」「事業の採算性」「ケアの質とその評価方法の標準化」「安全の確保と多職種・多機関連携」「母親の多様なニーズを考慮した柔軟な対応」があった。各課題について,事業類型別,事業者の施設タイプ別,地域別の実態や関連要因等を分析できる全国規模データは不足していた。またケアの内容や評価方法,安全確保のための対策,連携が必要な職種や内容に関する議論は不足していた。

    結 論

    事業実施体制には,多岐にわたる構造的な課題が存在することが示唆された。実態と課題を的確に把握するためには,多様な自治体・事業者・母親の特質を考慮したデータの収集と評価枠組みの整備が求められる。

原著
  • 椎名 翔子, 竹内 翔子, 篠原 枝里子, 中村 幸代
    2026 年40 巻2 号 p. 217-228
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    [早期公開] 公開日: 2026/06/04
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    新生児をもつ初産婦の睡眠の質の実態および質低下の関連要因について分析し,産後早期に実施可能な睡眠の質改善に向けた支援への示唆を得ることを目的とする。

    対象と方法

    首都圏で分娩を取り扱う病院・診療所において,産後1か月の初産婦164名を対象に無記名自記式質問紙調査を行った。日本語版不眠重症度質問票(ISI-J)を用いて睡眠の質を評価し,睡眠の量的指標や母児の属性,サポート状況といった項目との関連をSpearmanの相関係数,多重ロジスティック回帰分析を用いて分析した。横浜市立大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号F240900039)。

    結 果

    有効回答が得られた146名を分析対象とした(回収率89.0%,有効回答率100%)。結果,対象者の68.1%はISI-Jの重症度が「不眠前段階」以上であり,そのうち「不眠前段階」が48.0%と最も多かった。ISI-Jの項目の中で平均得点が最も高かった項目は「睡眠への満足度」2.62点(±0.84点)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,母乳栄養は混合・ミルク栄養に比べて睡眠の質を高め(OR:0.37,95%CI:0.14-0.99,p<0.05),不良な精神的健康状態の自覚は睡眠の質を低下させる(OR:2.45,95%CI:1.23-4.87,p<0.05)ことが示された。

    結 論

    新生児をもつ初産婦の睡眠の質低下は顕著であり,不眠症の病的水準と同程度の不眠症状を自覚している母親が多いことが示された。睡眠の質低下には,睡眠パターンに対する不満が反映され,母乳栄養でないことと不良な精神的健康状態の自覚の関連が大きいと考えられた。新生児をもつ初産婦に対して広く睡眠の質低下を予防する支援を行う必要性があり,夜間の睡眠パターン改善に向けた家族のサポート体制の整備,早期母乳育児確立,睡眠の質と精神的健康状態の相加的な向上を支援することが睡眠の質改善に有効である可能性が示唆された。

  • 安達 望江, 和泉 美枝, 眞鍋 えみ子
    2026 年40 巻2 号 p. 229-238
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    [早期公開] 公開日: 2026/07/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    妊娠中期から後期の移動機能・筋肉量・握力の変化を明らかにする。

    対象と方法

    妊婦健康診査を受診した50名に非妊時と妊娠中の運動等を自記式質問紙にて尋ねた。移動機能は2ステップテスト,ロコモ5質問紙(高得点ほど移動機能は低い)で評価し,筋肉量は上肢・下肢筋肉量,骨格筋量指数(Skeletal muscle mass index:SMI),握力を測定した。分析はウィルコクソン符号付順位和検定,マン・ホイットニーのU検定を行った。倫理的配慮は,同志社女子大学の倫理審査委員会にて承認を得た(承認番号:2018-14)。

    結 果

    分析対象者36名の年齢は30.9±5.4歳,中期の週数20.5週,後期33.5週,調査間隔13.0週であった。移動機能では,2ステップ値は中期1.24,後期1.20と有意差はなかったが,ロコモ5得点は中期3.0点よりも後期4.0点が有意に高得点であった(p <.01)。主観的,客観的評価指標で結果は異なったが,後期の方が移動機能の低下を自覚していた。上肢筋肉量は中期3.46 kg,後期3.85 kg,下肢は中期11.15 kg,後期11.63 kgと後期の方が有意に増加し(共にp <.01),さらにSMIは中期5.75 kg/m2よりも後期6.15 kg/m2の方が有意に高値であった(p <.01)。握力は中期24.7 kg,後期25.6 kgと有意差はなかった。後期の運動実施の有無別のロコモ5得点は,非運動群5.0点よりも運動群2.0点の方が有意に高かった(p <.01)。

    結 論

    妊娠の進行により筋肉量は増加し,握力は変化がなく,移動機能は低下したと自覚していた。筋肉量が増えたのは,体重増加による日常生活動作での筋負荷の増大によるものと考える。移動機能の評価指標による結果の相違は,腹部増大による日常生活の困難感がロコモ5の評価に影響していると考える。また,妊娠中の運動が移動機能の維持・向上につながる可能性が示唆された。

  • 石村 美由紀
    2026 年40 巻2 号 p. 239-250
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    不妊専門相談センターにおいて不妊支援に携わる看護職者が捉える行政の不妊支援の意義を明らかにし,今後の行政の不妊支援のあり方を検討することを目的とする。

    対象と方法

    不妊専門相談センターにおいて不妊支援に3年以上携わる看護職者9名に半構造化面接を行った。インタビュー内容は「不妊専門相談センターにおける不妊支援の現状」「携わる中で看護職者自身が抱いた感情・意識,行動等」とし,「行政の不妊支援の意義」として語られた部分を抽出し,質的記述的に分析した。

    結 果

    不妊専門相談センターにおいて不妊支援に携わる看護職者の視点から,行政の不妊支援の意義として,〈中立の立場で展開される不妊支援〉〈医療機関で解決困難な悩みの解決〉などで構成されたカテゴリー【医療機関の不妊支援を補うことができる】,〈誰にも相談できない悩みを相談できる第三者的機関〉などで構成されたカテゴリー【心理的支援を提供できる】,〈正確な情報を提供できる公的機関〉などで構成されたカテゴリー【不妊に関する幅広い相談に対応できる】の3つが抽出された。

    結 論

    行政が設置する不妊専門相談センターにおける不妊支援は,医療機関における不妊治療を中心とした不妊支援と連携することで,医療機関のみでは対応しきれない心理的・社会的側面への支援を補完できる可能性がある。不妊に悩む人々が中立的かつ安心して相談できる行政の不妊支援は重要な役割を担っていることが示唆された。さらに,不妊専門相談センターは,不妊治療の意思決定支援,終結期の支援,子どものいない人生を選択する人々の支援など,ライフステージに応じて包括的に不妊支援を展開できる可能性を有していた。今後は,行政・医療・地域が連携し,不妊に関する心理的・社会的支援を切れ目なく提供できる仕組みづくりが必要である。

  • 星 貴江, 杉下 佳文
    2026 年40 巻2 号 p. 251-262
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル フリー

    目 的

    助産師基礎教育に必要となる硬膜外麻酔分娩に関する教育内容および教育到達目標について専門家の意見を集約することである。

    対象と方法

    デルファイ法を用いた量的記述的研究デザイン。全国の助産師養成課程の教育代表者216名に対して,文献からまとめた前提条件3項目,硬膜外麻酔分娩の概要18項目,助産ケア19項目,多職種連携2項目の計42項目の教育内容について質問紙を作成し「必要」と解答した者の割合を同意率とし,到達目標を含めデルファイ法を用いて収斂した。本研究は郵送法にて行い,ラウンド数は3回とし探索的な調査であることから同意率は51%とし,さらに感度分析として60%・70%でも再判定した。

    結 果

    216名のうち第1回目調査では65名(30.1%),第2回目調査では52名(24%),第3回調査では43名(19.9%)の協力が得られた。硬膜外麻酔分娩に関する助産師基礎教育内容は計42項目(前提条件3項目,教育内容39項目)のうち,採択基準(同意率51%以上)を満たした項目は35項目であった。感度分析として同意率の閾値を60%以上に設定した場合,採択基準を満たした項目は35項目(前提条件3項目,教育内容32項目)であり,70%以上では32項目(前提条件3項目,教育内容29項目)であった。

    教育到達目標については,各教育内容項目に対して到達目標を「理解できる」とすることの可否を評価し,全項目で採択基準(同意率51%以上)を満たした。

    結 論

    硬膜外麻酔分娩に関する教育内容35項目,教育到達目標は全項目で「理解できる」が採択基準(同意率51%以上)を満たした。助産師基礎教育で硬膜外麻酔分娩を扱うにあたり,前提条件として「産痛のメカニズム」,「自然分娩の知識」や「自然性を尊重する助産師の理念」についての知識が重要であることが示された。さらに,臨地実習における経験機会は地域差や施設の症例により左右される可能性があるが,基礎教育では共通して到達させるべき核として35項目が位置づけられる可能性が示唆された。加えて,同意率が低かった項目は不要であることを意味するのではなく,標準化が難しい内容として,卒後教育や施設内教育での取り扱いも含めて位置づけることが示唆された。

  • 海野 多栄子, 嶋田 安希子, 小神野 雅子
    2026 年40 巻2 号 p. 263-274
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    本研究はCoronavirus disease 2019(COVID-19)流行期に教育を受けた新人助産師を対象に,分娩期ケア実践における困難感を抽出し,助産師基礎教育の課題を検討することである。

    方 法

    研究参加者のリクルートは,所属大学のホームページ,地域の看護協会,および総合病院でチラシ掲示・配布を行った。調査期間は2024年7月~2025年3月までで,新人助産師14名を対象に半構造化面接を行った。対面もしくはオンラインとし,回数は1回のみで60分程度とし,分娩期ケア実践に関する困難感について尋ねた。分析方法は内容分析の方法論を利用した。本研究は,京都光華女子大学研究倫理委員会の承認を受けて行われた(承認番号:24-05)。

    結 果

    新人助産師の分娩期ケア実践は,【社会的ハイリスクを含む対象理解に対する困難感】【無痛分娩や異常時対応の知識不足による困難感】【無痛分娩や異常時の臨床判断の不安,戸惑い,困難】【無痛分娩や異常時を含めた実践遂行上の戸惑い,困難】【COVID-19の影響で家族を含む心理社会的支援の困難】【医師も含めたチーム連携の困難】の6カテゴリに集約された。新人助産師は,無痛分娩の症例が増加しているが,助産師基礎教育で無痛分娩の管理や援助を学ぶ機会が限られていた。その結果,基礎知識や臨床判断の習得に困難を抱えていた。また,COVID-19の影響により家族の立ち会い分娩などの実習に制約があった。そのため,就職後の分娩時にはじめて家族と関わる場面に直面し,戸惑いを経験していた。

    結 論

    新人助産師は無痛分娩症例の増加およびCOVID-19の影響による困難感だけではなく,対象理解・知識・判断・チーム連携に関する複合的な困難も抱えていた。そのため,今の時代に即した分娩期ケアに対応できる統合的教育の整備が急務である。

  • 福田 陽子, 永松 美雪, 高守 史子, 川口 淳
    2026 年40 巻2 号 p. 275-285
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    産後1年以内の女性を対象として,自殺念慮を抱く可能性に関連する要因を測定する尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討する。

    対象と方法

    助産師を対象とした質的研究や文献検討に基づき,質問項目案を作成した。その後,専門家による内容妥当性を検討した後,プレテストと2回の予備調査を実施し,計27項目の尺度原案となった。23市区町村にて1247名に質問紙を配布し,信頼性と妥当性を検討した。

    結 果

    435部を分析対象とした。探索的因子分析の結果【母親としての不安と自責】【子どもとの関係から生じる情緒的疲弊】【自己肯定感へ影響するこれまでの生活と出産・育児】【パートナーとの希薄な関係】【閉ざされた育児による周囲からの孤立】【現状から逃れるための模索】の27項目6因子となった。再テスト法では,254部を分析対象とし,ICC=.87(95% CI[.83-.90],p<.001),相関係数r=.86(p<.001)から安定性が確認された。またCronbachのα係数は,.91であり,内的整合性が認められ,信頼性が確認された。確認的因子分析により適合度が認められ,既知グループ法では精神科受診歴と自傷行為の有無による検討によって有意差が認められた(p<.001)。また,基準関連妥当性では,EPDSとの相関係数は,r=.62(p<.001),孤独感尺度との相関係数は,r=.54(p<.001)であり,中等度以上の関連を認め,妥当性が確認された。

    結 論

    産後女性の自殺念慮を抱く可能性要因尺度は,27項目6因子から構成され,信頼性と妥当性が確認された。産後女性に関わる支援者が,明確な自殺念慮が顕在化する前段階において,産後女性の心理的背景を包括的に理解するための指標として位置づけられる。女性の状況や支援の方向性を検討でき自殺の事前予防の発展に貢献できると考える。

資料
  • 冨田 英里子
    2026 年40 巻2 号 p. 286-295
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    [早期公開] 公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    目 的

    助産師の乳がん早期発見につながる乳房ケアの実践状況と実践に関連する背景を明らかにする。

    対象と方法

    近畿2府5県の病院と助産所の助産師923名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,基本属性として,年齢,経験年数,乳がんに関する教育を受けた経験,就業場所(計4項目)と,乳がん早期発見につながる実践(以下,実践)として,「乳房ケア中に乳がんを疑った経験がある」,「乳がんに関する相談を受けたことがある」,「乳房ケア中に乳がん早期発見のアセスメントしている」,「BSEの指導をしている」,「Breast Awarenessの教育をしている」,「乳がんの啓発をしている」(計6項目)を「はい」か「いいえ」で尋ね,それぞれの実践しない理由についても回答を求めた。また,実践に関連する背景を明らかにするために,基本属性と実践において,χ2検定を実施した。

    結 果

    有効回答は,361名(39.1%)であった。実践は,「乳がんに関する相談を受けたことがある」214名(59.3%)が最も多く,次いで「乳がんの啓発をしている」188名(52.7%)であった。最も少なかったのは,「Breast Awarenessの教育をしている」61名(17.3%),次いで「BSEの指導をしている」106名(29.7%)であった。実践しない理由は,「乳がんという視点がない」「機会がない」が多かった。実践に関連する背景として,40歳以上,経験年数10年以上,就業場所が助産所,乳がんに関する教育を受けているが,実践している人が有意に多かった。

    結 論

    助産師の実践は,充分とは言い難い現状であった。特に,年齢や経験年数の低い助産師の乳房ケアに関する教育の重要性が示唆された。乳房の疾患も視野に入れたフィジカルイグザミネーションの向上など,乳がん早期発見などの幅広い視野を養う教育が必要であると考える。

  • 大和田 裕美
    2026 年40 巻2 号 p. 296-308
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    [早期公開] 公開日: 2026/06/24
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    本研究の目的は,妊婦健康診査(以下,妊婦健診)で助産師が行う超音波検査場面における妊婦と助産師との相互行為がどのようにして成り立っているのかを,エスノメソドロジーおよび会話分析を手がかりに明らかにすることである。

    対象と方法

    研究デザインは,エスノメソドロジーおよび会話分析を基盤とした相互行為分析である。5年以上の臨床経験を有し妊婦健診における超音波検査を実施している助産師とそのケアを受ける妊婦を対象に,妊婦健診場面の録画・録音を行った。音声データは全て書き起こし,エスノメソドロジーおよび会話分析の手法を参考に分析を行った。

    結 果

    妊娠39週の初産婦に対する妊婦健診の超音波検査1場面について分析した。超音波検査は,妊婦と助産師が互いの姿勢や視線の向き,身体の動きにより,今何に志向しているかを示し合うことにより開始された。助産師がモニター画面を妊婦へ向ける動作は,妊婦と助産師とがともに胎児の超音波画像を見ることを可能にしていた。モニター画面に胎児画像が示されると,助産師だけでなく妊婦も言語や身体を用いて胎児の見え方を示し,妊婦と助産師がともに胎児画像を見ることでなされる相互行為によって,胎児画像が識別されることが明らかになった。こうした相互行為によって,モニター画面に映る胎児画像の物理的状態だけでなく,自ら腕を曲げ顔を隠して恥ずかしがる人間らしさも識別され,胎児を「ひと」として見る理解が共有されていた。

    結 論

    妊婦健診での超音波検査場面における妊婦と助産師の相互行為の分析から,超音波検査における妊婦と助産師の相互行為は,モニター画面に映し出された胎児画像をともに見ることにより,妊婦と助産師とが,その非対称性をこえて,胎児を「ひと」として理解し,その理解を共有する実践であることが示された。

  • 梅本 かおり, 近藤 由理香, 山本 智美, 瀬戸 愛, 斎藤 りさ, 砥石 和子, 西山 悦子, 安藤 美香, 櫻井 明美, 小檜山 敦子
    2026 年40 巻2 号 p. 309-318
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    本研究は,東京都内における宿泊型産後ケアの現状を明らかにすることを目的とした。

    対象と方法

    2023年5月から6月に日本医療機能評価機構産科医療補償制度のホームページに掲載されている東京都内の加入分娩施設及び東京都助産師会に所属する助産所の宿泊型産後ケア管理責任者を対象に質問紙調査を実施した。量的データは頻度と割合を算出し,質的データ(自由記述)については内容分析を行った。

    結 果

    調査に回答が得られたのは96施設であり,うち宿泊型産後ケアを実施している施設は52施設であった。宿泊型産後ケアを実施した理由は,「行政からの要望」「空床利用のため」が多かった。宿泊型産後ケアの利用条件は「母子ともに医療処置が必要ない」「自施設で出産した方のみ」が多く,利用条件の月齢は4か月までが多かった。施設が把握している宿泊型産後ケアを受ける利用者の理由は,「育児に不安がある」「家族などから支援が受けられない」「(睡眠不足などから)しっかりとした休息目的」であった。宿泊型産後ケアを実施している施設での宿泊型産後ケアにおける問題や課題は,【行政による運営方法の違い】【産後ケアの質を担保することの困難性】であった。宿泊型産後ケアを始めて良かった点は,【宿泊型産後ケアを必要とする利用者への支援の実施】【助産実践能力の向上】【経営面での利益】であった。

    結 論

    宿泊型産後ケアを受け入れるにあたっては,産後ケアの質を確保するための環境設備に伴う経済的負担やマンパワー不足の問題がある。一方,宿泊型産後ケアを始めて良かった点として産科病棟の空床を利用することで経営面での利益があり,利用者のニーズに応じた支援の提供ができることは助産師のモチベーションの維持・向上につながる。

  • 山﨑 郁香, 藤田 小矢香, 井上 千晶
    2026 年40 巻2 号 p. 319-327
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目 的

    妊娠時やせ体型女性の妊娠の価値観と体重管理における行動変容の過程を明らかにすること。

    対象と方法

    対象者は非妊娠時やせ体型で妊娠経過中も至適体重増加量に満たなかった初産婦1名とした。分娩より半年経過後にインタビューガイドを用いて半構成的面接を行った。得られたデータを逐語録化し,コード化した。その後相違点,共通点に沿って分類しサブカテゴリー・カテゴリー化した。カテゴリーを時間軸に沿って並べ複線径路・等至性モデルを用いて質的に分析した。

    結 果

    非妊娠時やせ体型女性の分娩までの主観的体験の経路から,2つの必須通過点と2つの分岐点が示された。やせ妊婦は【赤ちゃんの存在を実感し赤ちゃんを思いやる】気持ちが根底にあり,【胎動を感じることで産む自覚を持つ】ことを妊娠の価値観として大切にしていた。また【体重管理を含めた体づくりをして万全の状態で安産を目指す】ために体重管理に努めていた。妊婦は非妊娠時から【妊娠中は体重管理が厳しいものだ】と意識し,【体重管理は妊娠後に始める】ことで,妊娠中期には【安産とメンタル維持のために目標体重を10 kg前後とする】設定をしていた。【安産のために自分で決めた目標体重を守る】気持ちで体重管理を行っていた。また助産師による指導は新たな価値観として【体重管理にこだわらない】に繋がっていた。妊娠前からの妊娠の価値観は分娩に向けた体重管理における行動変容に影響していた。

    結 語

    非妊娠時やせ妊婦は妊娠前から体重管理は厳しいという思いを持っていた。安産を目指し自身で決定した目標体重は推定体重増加量を下回っていた。体重管理の根底に安産と胎児をいたわり主体的に分娩に向き合う気持ちがあった。妊娠の価値観は体重管理における行動変容に影響していることが明らかとなった。やせ妊婦の体重管理の目標設定時期を妊娠のできるだけ早期に設定し,妊娠の価値観を大切にした支援が必要である。

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