日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
メシル酸イマチニブ投与中にFournier's gangreneを合併した巨大直腸gastrointestinal stromal tumorの1例
小川 聡石井 祥裕川野 豊一北野 正剛
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2009 年 42 巻 10 号 p. 1609-1614

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抄録

 症例は59歳の男性で,主訴は肛門部痛,便秘.CTで骨盤内に12 cmの腫瘤を認め,経皮的針生検にて直腸gastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)と診断した.メシル酸イマチニブ(400 mg/日)を開始し,2か月後に腫瘍は7 cmに縮小したが,4か月後に臀部痛が出現し入院となった.入院時直腸診では腫瘍側の圧痛以外に異常はなかった.入院4日目のCTで腫瘍は5 cmに縮小していたが,直腸周囲にガス像を認め,直腸GISTの穿通が疑われた.翌日,陰嚢の腫脹と会陰部の圧痛,さらに鼠径部から腹壁に捻髪音を伴う発赤を認め,Fournier's gangreneと診断し,ただちに壊死組織の除去,切開排膿ドレナージ術を施行した.経過は良好で,術後58日目に退院となった.メシル酸イマチニブ投与中にFournier's gangreneを合併した直腸GIST穿通例を経験した.メシル酸イマチニブによる巨大GISTの治療の際はその劇的な治療効果ゆえに消化管穿孔も考慮する必要がある.

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