日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
上部空腸憩室穿孔による急性汎発性腹膜炎を起こした1例
小泉 大佐田 尚宏濱田 徹安田 是和
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2009 年 42 巻 8 号 p. 1430-1435

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抄録
 症例は96歳の女性で,3日前から腹痛と便秘を訴え,改善ないため近医を受診した.腹部CTで腹水とfree airを認め,消化管穿孔,急性汎発性腹膜炎の診断で当院紹介となった.非ステロイド性抗炎症薬内服歴,胃十二指腸潰瘍の既往歴はなく,身体検査所見は上腹部に圧痛,筋性防御,反跳痛を認めた.血液検査所見は白血球10,500/μl,CRP 20.4 mg/dlであった.上部消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.胃十二指腸には穿孔部を認めず,Treitz靱帯から30 cm肛門側で腸間膜付着部近傍の憩室穿孔を認めた.穿孔部を含めた空腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査所見は長径15 mmの仮性憩室の穿孔だった.術後4日目に急性心筋梗塞を起こしたが軽快し,18日目に退院した.上部消化管穿孔による腹膜炎はよく経験するが,上部空腸憩室穿孔はまれである.本疾患は緊急手術の絶対適応で,上部消化管穿孔を疑ったときには本疾患の可能性も考慮する必要がある.
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