日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
経上皮性に連続性のないPagetoid spreadを呈した肛門管癌の1例
山岸 庸太岡田 祐二石川 雅一水野 章片野 晃一
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2010 年 43 巻 4 号 p. 448-453

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抄録

 症例は78歳の女性で,肛門周囲の掻痒感を主訴に皮膚科を受診した.肛門皮膚に同心円状(8×9 cm)でびらんを伴う隆起性病変を認め,皮膚生検にてPaget病と診断した.その後の精査にて直腸(Rb)にIsp型腫瘍を認め,生検にて高分化型腺癌,最終的にはPagetoid spreadを伴った肛門管癌との術前診断を得た.5 cmの健常皮膚を切除するために,有茎腹直筋皮弁を用いた会陰部再建術を付加した腹会陰式直腸切断術(D2)を施行した.病理組織学的検査所見はIsp型,sm2,ly2,v0,n1,stage IIIa,肛門周囲の皮膚病変部と肛門管腫瘍との間には約6 mmのびらんと約3 mmの再生非腫瘍性扁平上皮が介在し,粘膜面における異型細胞の連続性を認めなかった.よって,高分化腺癌が肛門周囲皮膚真皮にリンパ管侵襲を示し,さらに表皮内へ向かってPagetoid spreadを呈したものと推定した.このような,Paget細胞の進展形式は検索しえたかぎりでは自験例のみであった.

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