2011 年 44 巻 10 号 p. 1247-1255
症例は68歳の男性で,食道癌で右開胸・開腹胸腹部食道亜全摘,3領域リンパ節郭清,胸骨後結腸再建術を施行した.術後9日目に突然腹痛と頻呼吸が出現した.腹部CTで門脈ガス血症と腸管気腫を認め,緊急手術を施行した.Treitz靭帯より20cmから120cmの空腸,盲腸から90cm口側に及ぶ回腸に血流障害を認め,同部を切除した.腸管吻合は施行せず,人工肛門を作成し手術を終了した.再手術後4日目のCTでは門脈ガスは消失し,腸管壊死の所見も認めなかった.再手術後12日目に腸管吻合を伴う人工肛門閉鎖術を施行し,救命しえた.門脈ガス血症は腸管壊死やイレウスなどに合併する比較的まれな病態であり,腸管壊死に伴う例の予後は不良と報告されている.今回,我々は食道癌術直後に門脈ガス血症を呈した非閉塞性腸管虚血症例を救命しえたので文献的考察を加えて報告する.