抄録
症例は53歳の女性で,直腸S状部癌と診断され,2006年3月に低位前方切除術(3群郭清)を施行した.腸管傍リンパ節に3個転移を認め,最終診断はRS,2型,90×60mm,pSE,pN1(3/20),sH0,sP0,cM0,fStage IIIaであった.経口抗癌剤による補助化学療法を半年間実施した.同年10月にCTを実施したところ,左腎臓に境界不明瞭な腫瘤を指摘された.MRIではT1強調画像で等信号,T2強調で低信号を呈する腫瘤として描出され,非典型的ながら腎細胞癌もしくは転移性腫瘤が疑われた.11月に腎摘を施行した.著明な壊死を背景に大小の胞巣を形成し増殖する異型細胞を認め,一部に腺腔形成が見られた.免疫染色検査でCK7陰性,CK20およびCDX2陽性により直腸癌からの転移と診断された.術後半年間FOLFOX6による化学療法を実施した.初回手術から53か月経過し,無再発生存中である.