2011 年 44 巻 3 号 p. 273-281
症例は47歳の女性で,腹痛,発熱を主訴に前医受診,炎症反応およびアミラーゼ上昇と,CTにて左横隔膜下膿瘍,膵頭部嚢胞性病変,膵体尾部の浮腫を認めた.急性膵炎軽快後,膵頭部病変の精査目的に当科紹介となった.MRCP・ERCPでは主膵管の狭窄および腫瘍との交通は認めなかった.粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm),膵管内粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm)であった場合の悪性の可能性を考慮して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.5cm大の腫瘍は薄い嚢胞壁の多房性病変で,病理組織学的には単層の立方上皮からなり異型性は認めず,膵漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm;以下,SCNと略記)と診断した.膵炎発症で発見されたmacrocystic typeのSCNはまれであり文献的考察を加え報告する.