1990 年 23 巻 11 号 p. 2580-2585
癌細胞の神経周囲浸潤は膵癌の予後規定因子として重要である.今回, 膵癌の神経親和性の有無を検討する目的で抗神経特異蛋白および抗神経接着分子 (NCAM) を用いて免疫組織学的検討を行った.(対象) 教室における過去5年間の膵癌切除例42例中19例を対象とした.stageはII: 1例, III: 5例, IV13例, で膵内神経浸潤はne0: 3例, ne15例, ne2: 4例, ne3: 7例, であった.S-100蛋白, synapto-physin, substance-P, enkephalin, NSE, NCAM, chromograninの7種の抗体を用い免疫染色を行い, 陽性を1点としスコアー化した.(成績) 膵癌進行度とneの間に相関は認められなかった.抗NSE, chromogranin抗体以外では癌細胞はさまざまな程度に染色された.各症例の染色スコアーと神経浸潤度との間に相関を認めた.以上, 神経浸潤の強い膵癌細胞では, 多数の神経特異抗原を発現し, 神経接着分子で神経を認識し特異的に神経浸潤を起こす可能性が示唆された.