日本消化器外科学会雑誌
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摘脾後に広範な門脈血栓症をきたした特発性門脈圧亢進症の1例
甲斐 信博池永 健浦 一秀田中 公朗松元 定次瀬川 徹元島 幸一角田 司土屋 凉一井沢 邦英
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1990 年 23 巻 11 号 p. 2663-2667

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抄録

症例は35歳の女性の特発性門脈圧亢進症で, 脾腫, 食道胃静脈瘤, 汎血球減少症を伴っていた.術前に肝内門脈右枝に血栓を認めたが, 摘脾術施行後急速に増大し, 門脈本幹および上腸間膜静脈にまで及んだ.門脈血栓症によると思われる臨床症状として発熱, 腹痛を認めた.ウロキナーゼ1日24万単位の末梢からの投与による線溶療法が奏効し, 症状は改善した.超音波検査上, 血栓はiso~hyperechoicに描出されたが, 新鮮な血栓の場合, 超音波で描出できない可能性があると考えられた.一方, 超音波ドップラー法による門脈血流の評価では, 血栓の増大に伴い, 門脈本幹の最大流速の低下, 血流量の減少が認められたが, 線溶療法が奏効することにより, 血流状態の改善が確認された.
本症例の門脈血栓の早期診断および経過観察には超音波検査法が非常に有用であった.

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