日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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高齢者胃癌に対する外科治療上の問題点と対策
超高齢者(85歳以上) 胃癌切除例の経験から
大谷 吉秀熊井 浩一郎久保田 哲朗大上 正裕林 憲孝石塚 裕人北島 政樹
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1996 年 29 巻 10 号 p. 2028-2032

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抄録

教室で経験した85歳以上の超高齢者胃癌切除例16例, 19病変について臨床病理学的に分析した.男女比は11: 5.術式は幽門側切除11例, 胃全摘3例, 噴門側切除1例, 腹腔鏡下胃局所切除1例で, 手術時間は平均180分, 郭清度はD1以下であった.術後合併症はせん妄や肺合併症の頻度が高かった.術後在院日数は腹腔鏡下手術症例の6日を最短に最長97日 (平均35日) で, 穿孔で発症した2例を除いては全例軽快退院した.術後1年以内の再発死亡は3例であった.超高齢者胃癌といえど, 症例を選択し周術期管理を適切に行えば良好な結果が得られる可能性が示された.しかし, 退院後の他病死の危険性を考慮すると, 高度進行例やactivity of daily living (ADL) 不良例に対しては家族の協力体制などを踏まえながら慎重な対応が求められる.内視鏡治療や腹腔鏡下手術など侵襲の少ない治療法は適応を拡大して実施すべきである.

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