症例は35歳の男性. 97年1月17日朝, 下腹部痛を来たし救急車で当院に搬送された. 下腹部を中心に腹膜刺激症状を認めた. 虫垂穿孔性腹膜炎を疑い緊急手術を施行した. 回腸末端より約50cm口側に憩室が認められ, 基部で捻転し壊死に陥っていた. 捻転を整復しても色調に変化なく模状切除を行った. 組織学的には小腸真性憩室と診断された. Meckel憩室は卵黄管の遺残であり, 大部分は無症状で経過するが, 時に出血, 穿孔, 憩室炎などを引き起こす. 捻転の合併頻度は3.2%と他の合併症に比較し低率で, 捻転により憩室の壊死を来した症例は, 自験例を含め本邦では11例の報告が認められるのみである. これら捻転壊死をおこす憩室は, 大きさが6cm以上と大きく, また大きさに比較して頸部の狭小を認めることが特徴である. 自験例では憩室が捻転によって壊死に陥り, 腹膜刺激症状を呈したと考えられた.