胃周囲静脈に腫瘍塞栓を認めた胃癌症例について臨床病理学的検討を行った. 当院にて, 1986年より1997年までの12年間の胃癌手術症例のうち, 胃周囲静脈に腫瘍塞栓を認めた症例は10例 (0.7%) であった. 腫瘍塞栓は, 左胃静脈: 2例, 右胃大網静脈: 2例, 下部食道周囲静脈: 1例, 脾静脈: 4例, 右胃大網静脈→上腸間膜静脈: 1例であった. 特徴として, 腫瘍径の大きい症例が多く (平均10.2cm), 肉眼型は3型が5例で, 深達度はすべてse以上であった. 組織型は分化型が6例と多く, 間質は中間型: 5例, INFα: 6例で, 著明な脈管侵襲を認めた症例が多かった. 他臓器合併切除を9例に行い, 10例中9例は根治度Bの切除が可能であった. 予後は他病死が2例, 1例が肝転移のため胃癌死し, 残り7例は再発なく生存中で, 5年以上生存例も4例認めた. 腫瘍塞栓を有する症例でも, 切除により予後の改善が期待できる症例もある.