2003 年 36 巻 12 号 p. 1671-1676
症例は76歳の女性. 腹痛, 背部痛を主訴に近医受診. 腹部腫瘤を指摘され当院紹介入院. CTにて解離性大動脈瘤と多発性腹部内臓動脈瘤と診断. 入院中に多量の吐下血をきたしショック状態となった. 緊急開腹術施行. 原因は膵十二指腸動脈瘤の十二指腸への破裂であった. 前上膵十二指腸動脈の結紮, 動脈瘤を切開し内腔より前下膵十二指腸動脈の縫合止血, 十二指腸壁の穿通部の縫合閉鎖, 動脈瘤内腔への大網充填を行い, 良好な結果を得た. 本症例は破裂をきたす前に内臓動脈瘤の存在と部位が明らかであったことや入院中であったことから迅速な対応により救命し得た. 一般的にはその診断は困難なことが多い. 突然の腹痛や吐下血に際し, 腹部内臓動脈瘤破裂を念頭に置くべきである.