日本消化器外科学会雑誌
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胃癌切除によりネフローゼ症候群の寛解を認めた1例
浅岡 忠史松井 成生岩澤 卓木村 豊加納 寿之大西 直東野 健中野 芳明矢野 浩司門田 卓士
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2004 年 37 巻 11 号 p. 1727-1731

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抄録

症例は66歳の男性で, 両下肢の著明な浮腫と食物の通過障害を主訴に来院した. 精査の結果, ネフローゼ症候群 (膜性腎症) を合併した進行胃癌と診断され平成13年9月20日に開腹手術を施行した. その結果, 肝転移および腹膜播種を認めたが, 腫瘍からの出血と通過障害の改善を目的として胃全摘術を施行した. 組織学的所見は中分化型管状腺癌, T4N3P1CY1H1M0 stage IV根治度Cであった. 術後2週目より尿中蛋白は減少し, ネフローゼ症候群の寛解を認めた. 悪性腫瘍に起因するネフローゼ症候群の発生機序としては, 腫瘍抗原と特異な抗体とからなる免疫複合体が糸球体に沈着することによるとされている. 本邦にて胃癌切除によりネフローゼ症候群の軽快を認めたと報告された全17例のうち, 自験例のように明らかな癌の遺残がありながらもネフローゼ症候群の寛解を認めた症例はまれで, 今後の手術適応を考える上で非常に興味深いと思われた.

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