日本消化器外科学会雑誌
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ネフローゼ症候群合併進行胃癌の1手術例
井手 貴雄佐藤 清治田中 雅之北島 吉彦中房 祐司宮崎 耕治
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2005 年 38 巻 5 号 p. 490-495

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抄録

症例は63歳の女性で, 感冒様症状, 両下肢の浮腫を主訴に近医を受診した. ネフローゼ症候群 (膜性腎症) と診断され, 同時に貧血の精査目的で行われた上部消化管内視鏡検査にて胃体上部小彎に1型進行癌を指摘されたため, 当科紹介入院となった. 入院時血清アルブミン1.8mg/dl と低値であり, 尿蛋白は3.4g/day であった. アルブミン製剤, fresh frozen plasma (以下, FFPと略記) を連日投与したが, 血清アルブミンは2.7mg/dl以上には上昇せず, 3週間投与を継続した状態で胃全摘術を施行した. 術後も引き続きアルブミン製剤, FFPの投与を行い経過は良好であった. また, 術後1か月目頃より次第に尿蛋白は減少, 血清アルブミン値は上昇しネフローゼ症候の軽快を認めた. ネフローゼ症候群を伴った胃癌症例は周術期管理が重要だが, 切除により本症例のようにネフローゼ症候の改善を認めることもあり, 文献的考察を加えて検討した.

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