日本消化器外科学会雑誌
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膵頭十二指腸切除後遅発性膵液漏に合併した血栓性血小板減少性紫斑病の1例
野見 武男庄 雅之西沼 亮中島 祥介
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2007 年 40 巻 12 号 p. 1927-1932

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抄録

遅発性膵液漏を契機として発症したと考えられる血栓性血小板減少性紫斑病 (thrombotic thrombocytopenic purpura; 以下, TTP) の1例を経験したので報告する. 症例は60歳代の男性で, 膵管内乳頭粘液性腺癌に対し膵頭十二指腸切除術施行50日後に, 発熱と腹痛を主訴に当科再診. 腹部CTにて膵空腸吻合部近傍に液体成分の貯留を認め, 膵液漏の診断にて緊急入院となり, ドレナージ術を施行. 保存的に軽快しつつあったが, 入院1か月後に38℃台の発熱と動揺性意識障害が出現. 血液検査にて血小板減少, 貧血, 腎機能障害を認めた. また, ADAMTS13活性は46%と軽度の低下を認め, 臨床症状, 検査結果よりTTPと診断し, 血漿交換等の集中管理を行い, 発症より90日後に軽快退院した. 術後発症のTTPについてはいまだ不明な点も多いが, 治療が遅れると重篤な経過をたどることも多いため, 迅速な診断と適切な治療が重要である.

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