日本消化器外科学会雑誌
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感染を契機に破裂した巨大肝嚢胞腺癌の1例
田辺 大朗近藤 圭一郎野田 健治矢野 博久
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2008 年 41 巻 6 号 p. 618-623

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抄録

症例は55歳の女性で, 来院3日前より39℃台の発熱が出現, 歩行も困難な状態となり近医受診, 血圧低下のため当院へ救急搬送された. 腹部超音波検査, CT, MRIにて肝左葉に巨大な嚢胞性腫瘍と腹水を認め, 腹腔内試験穿刺にて黒褐色の排液を認め肝嚢胞の破裂と診断, 同日腹腔ドレナージ術を施行した. 術後も腹腔内洗浄を繰り返し, 排液の細胞診では悪性細胞は認められなかったが, 血中腫瘍マーカーが高値で, 肝嚢胞腺癌を疑い全身状態改善後肝左葉切除術を施行した. 嚢胞は多房性で粘液や膿汁, 凝固した血液が貯留していたが壁在結節は認めなかった. 組織学的には, 異型細胞を認めbile duct cystadenocarcinomaと診断され, 卵巣様間質を有していた. 好中球浸潤があり膿瘍を形成しており感染を契機に破裂したものと考えられた.術後経過は良好で, 第34病日目に退院し, 術後1年2か月再発なく生存中である. 肝嚢胞腺癌の破裂例は極めて珍しく, 文献的考察を加えて報告する.

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