日本消化器外科学会雑誌
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3重複癌を合併した膵管内乳頭粘液性腫瘍の1例
西 健矢野 誠司稲尾 瞳子下条 芳秀横山 靖彦川畑 康成平原 典幸板倉 正幸山野井 彰田中 恒夫
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2008 年 41 巻 6 号 p. 653-657

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抄録

膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下, IPMN)は約30%と高率に悪性疾患を合併するとされ, 通常型膵癌の合併も多い. しかし, 多重複癌の報告はまれである. 今回, 我々は3重複癌(子宮体癌, 両側乳癌, 膵癌)を合併したIPMNの1例を経験した. 症例は60歳の女性で, 平成10年に膵頭部IPMNを指摘され, 経過観察されていた.平成13年子宮体癌で子宮全摘術, 平成17年両側乳癌で両側乳房温存手術を受けた. 平成17年9月乳癌術後の放射線治療中, 腹部CTにて膵体部に径2cm大の腫瘤性病変を認めた. MRCP・ERCPでは膵体部腫瘤に一致した主膵管の途絶と尾側膵管の拡張を認め, 膵液細胞診はclass IVであった. IPMNに合併した膵癌と診断し, 膵癌に対して尾側膵亜全摘術を施行, IPMNは良性と判断し経過観察とした. IPMNと診断された場合には, IPMNの悪性化のみならず, 高率に合併する悪性疾患が, 予後を左右する可能性もあるため, これを常に念頭においた経過観察が重要である.

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