日本医真菌学会雑誌
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原著
白血病 (MDSを含む) 剖検例における内臓真菌症の疫学
―日本病理剖検輯報 (1990, 1994, 1998, 2002年版) の解析―
久米 光山崎 敏和阿部 美知子田沼 弘之奥平 雅彦岡安 勲
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2006 年 47 巻 1 号 p. 15-24

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抄録

骨髄異形成症候群 (MDS) を含む白血病 (以下, 白血病) 剖検例における内臓真菌症の現況を明らかにする目的から, 日本病理剖検輯報を検索対象として解析した. これらの基礎疾患における内臓真菌症の発現頻度は, 27.9% (435例/1,557例, 1989年), 23.0% (319例/1,388例, 1993年), 22.3% (246例/1,105例, 1997年), 25.1% (260例/1,037例, 2001年) で, 白血病を除く剖検例における発現頻度 (3.4%, 2.7%, 3.5%および3.7%) の6.4倍から8.5倍であった. 白血病の病型別にみた頻度では急性骨髄性白血病, 急性リンパ性白血病およびMDSに高頻度であった (67.6%~75.2%). 白血病のうち, 造血幹細胞移植例における頻度は各々36.7%, 33.9%, 38.0%および32.8%, 移植例のうち移植片対宿主病 (GVHD) を伴った症例における頻度は1989年 (14.3%) を除き36.4~46.2%と, 内臓真菌症の発現頻度はさらに高率であった. 主たる起因真菌はCandida およびAspergillus であったが, 1989年で前者が33.6%, 後者が33.3%とほぼ同等であったが, 2001年では同様に, 16.9%, 54.2%と経年的にアスペルギルス症の割合が増加しており, この傾向は移植例やGVHDを伴った症例でより顕著であった.

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© 2006 日本医真菌学会
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