日本医真菌学会雑誌
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Terbinafineのケラチン親和性に関する検討
内田 勝久山口 英世
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キーワード: ケラチン, 薬物動態
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1993 年 34 巻 2 号 p. 207-212

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抄録

新規アリルアミン系抗真菌剤terbinafineの皮膚角質層における薬物動態に関する研究の一環として, 薬剤のケラチン吸着性およびケラチンに吸着された薬剤の遊離性についてin vitro実験系を用いて検討した. 活性型薬剤の定量は, Trichophyton mentagrophytesを試験菌とする寒天ウエル法を用いた生物学的検定法により行った. Terbinafineのケラチン吸着は, 反応液のpHによる影響を受け, pH7.0よりpH5.0で幾分高い吸着率を示した. しかし, 吸着率はそれ以上に反応液中の薬剤とケラチンの重量比に強く依存し, 中性域でこの比が1: 100, 1: 1,000および1: 10,000の場合, それぞれ約48, 73, 88%の値を示した. 一旦ケラチンに吸着した薬剤もその後の洗浄操作によって容易に遊出され, 薬剤約80μgを吸着したケラチン100mgを5mlのpH7.0または5.0の緩衝液で20回洗浄することによりほぼ100%の薬剤活性が洗浄液から回収された. 以上の結果から, terbinafineはケラチンに対して比較的吸着されやすいがその結合はゆるやかであることが示され, したがって表在性真菌症の病巣部位でもある表皮角質層は局所投与されたterbinafineの良好なレザバーとして働き, 活性型薬剤を効率よく組織内に放出する可能性が示唆された.

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