2007 年 68 巻 8 号 p. 2077-2081
症例は60歳代, 女性. 発熱, 右季肋部痛を主訴に前医受診し, 急性胆嚢炎, 肝膿瘍を伴う胆嚢癌の診断で入院された. 保存的治療にて炎症所見の改善が認められなかったため, 当科転院された. 造影CTにて胆嚢体部から肝前区域, 内側区域に及ぶ長径7cm大の低吸収域とその周囲に円形の低吸収域を多数認め, さらにその一部にリング状濃染を認めた. 急性胆嚢炎と肝膿瘍を併発した肝浸潤・肝転移を伴う胆嚢癌と考えられた. 広範肝切除を安全に行うために, 経皮経肝的胆嚢ドレナージを施行したが, 炎症所見の改善はみられず, また原因菌も同定されなかった. 保存的治療による炎症所見の改善は困難と判断し, 開腹手術に踏み切った. 肝浸潤・肝転移を伴う胆嚢癌と診断し, 肝右三区域切除を施行した. 切除標本では肝内に膿瘍は存在せず, 組織学的には胆嚢腺扁平上皮癌との診断であった. 術直後より発熱・炎症所見は劇的に改善した.