日本臨床外科学会雑誌
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選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
特別寄稿《第85回総会 学会特別企画 総括》
特別寄稿《第85回総会 外保連共催企画 総括》
特別寄稿《第85回総会 総会特別企画11-1 総括》
特別寄稿《第85回総会 総会特別企画11-2 総括》
特別寄稿《第85回総会 総会特別企画11-3 総括》
臨床経験
  • 井上 翔太, 中村 有紀, 横山 卓剛, 石井 保夫
    2024 年 85 巻 3 号 p. 359-364
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    緒言:複数動脈の腎移植は単一動脈の場合と比較すると,合併症や移植腎機能のリスクが高まる可能性がある.方法:当院で施行した生体腎移植166例のうち,複数動脈であったが,分枝を結紮した12例を除く154例を対象として後ろ向きコホート研究を実施した.患者を動脈形成群と単純吻合群に分け,腎機能,術中動脈再吻合,移植腎生着率,患者生存率を比較した.結果:動脈形成群は37例,単純吻合群は117例であった.腎機能の比較では,退院時s-Crは動脈形成群で1.68±0.93mg/dL,単純吻合群で1.36±0.40mg/dLであった(p=0.157).1年後s-Crは動脈形成群で1.52±0.66mg/dL,単純吻合群で1.29±0.38mg/dLであった(p=0.197).術中動脈再吻合はそれぞれ3例,6例であった(p=0.449).1年後移植腎生着率はそれぞれ97.3%,98.3%であった(p=0.175).両群共に1年後患者生存率は100%であった.考察・結論:複数動脈の生体腎移植における動脈形成は安全かつ有効であると考えられた.

症例
  • 西尾 美紀, 小川 利久, 林原 紀明, 辻󠄀 英一, 丹羽 隆善, 藤井 晶子
    2024 年 85 巻 3 号 p. 365-370
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    乳腺腫瘍の組織学的分類には浸潤癌・非浸潤癌・Paget病のほかに,浸潤径1mm以下の微小浸潤癌が分類されている.微小浸潤癌は非浸潤癌に近い良好な予後が報告されているが,稀に遠隔転移をきたすことがある.本症例は,微小浸潤癌の根治手術後に孤立性肺転移をきたした.また,本症例はHER2陽性であったが,腫瘍径1cm以下のHER2陽性乳癌に対して化学療法とトラスツズマブを使用する十分な根拠はないため,本症例も化学療法を行わず経過観察としていた.術後1年後に孤立性肺病変を確認したため,少数転移の治療として病変を摘出した.病理結果は乳癌の肺転移であった.術後に化学療法を含む抗HER2療法を追加し,5年経過の時点で転移再発の兆候はない.文献上,微小浸潤乳癌の孤立性移転に対して少数転移として局所制御目的に摘出手術が施行された報告例は本症例以外には見当たらないため,この度文献的考察を加えて報告する.

  • 海賀 照夫, 中田 泰彦, 勝野 剛太郎, 黒川 友晴, 石倉 智枝里, 有馬 秀隆, 小林 槇雄
    2024 年 85 巻 3 号 p. 371-378
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は71歳,男性.2002年2月,胃癌に対して幽門側胃切除術,D2郭清を施行した.病理診断は,Type 0-IIa,tub2>tub1>Sig,pT1b (SM),INFγ,ly-1,v-0,pN2 (4/40),pPM0,pDM0,pStage IIA(胃癌取扱い規約第14版)であった.近医での経過観察中,術後12年目の血液検査においてALPが高値であったため,2014年5月に当院を再診した.骨シンチグラフィ検査にて転移性多発骨腫瘍の診断となった.骨生検を行ったところ,印環細胞癌を示唆する所見を認めた.明らかな原発巣が存在しないことから,胃癌術後の多発骨転移の診断となった.S-1を用いた化学療法を継続し,3年間は支障なく日常生活を送れていたが,治療開始後3年半経過後より,腰痛が出現するとともに急激に播種性骨髄癌症を発症し,治療開始後3年7カ月で死亡した.胃癌術後長期経過後にも起こりえる骨転移は,症状出現前に診断し治療を開始することが長期予後を得るには必要と思われ,ALP値を継続して測定することが望ましい.

  • 内藤 慶, 高屋敷 吏, 高野 重紹, 鈴木 大亮, 酒井 望, 大塚 将之
    2024 年 85 巻 3 号 p. 379-384
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は46歳の女性で,上腹部痛を主訴に当院を紹介受診した.CTで肝門部に周囲の臓器を圧排する150mm大の巨大腫瘍を認め,精査の結果,十二指腸GISTと診断した.外科的治療を考慮したが手術先行ではR0切除が困難と予想されたため,術前化学療法としてイマチニブ投与の方針とした.イマチニブ投与により腫瘍は著明に縮小し,投与24カ月目に膵頭十二指腸切除術によりR0切除を施行しえた.現在術後54カ月生存中である.GISTの治療の原則は根治的外科切除であり,R0切除不能な十二指腸GISTの治療戦略としては,切除率向上を目的としたイマチニブによるdownsizing chemotherapyが有用な可能性がある.

  • 西上 耕平, 福永 亮朗, 市村 龍之助, 真名瀬 博人
    2024 年 85 巻 3 号 p. 385-389
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は73歳,女性.上腹部痛を主訴に近医を受診.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸2nd portionに半周性の2型病変を認め,生検の結果,印環細胞癌との診断であり当院を紹介受診.全身精査の結果,手術適応と判断され,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した(術後病理検査にて印環細胞癌>粘液癌>低分化型腺癌を認めた).術後半年のフォローCTでは,再発所見は認められなかったが,術後7カ月目頃から食欲不振,頸部・背部・腰部・大腿部痛が出現するようになり,当科外来を受診.血液検査にてLDH 2,350U/Lと異常高値を認め,骨髄穿刺生検を施行したところ低分化型腺癌を主体とする癌細胞の増殖を認め,十二指腸癌による骨髄癌腫症と診断された.このため,mFOLFOX6療法を行ったところ奏効し一時的にADLの改善を認めたが,その後腫瘍が再増悪し永眠した.十二指腸癌の骨髄癌腫症は極めて稀な病態であり,文献的考察を加え報告する.

  • 景山 創, 菱田 光洋, 鳥居 康二, 中山 裕史, 小林 裕幸
    2024 年 85 巻 3 号 p. 390-393
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,男性.胆嚢癌にて拡大右肝切除術+肝外胆管切除術を行い,胆管空腸吻合を結腸後のRoux-en-Y再建にて行った.術後8カ月目に腹痛・嘔吐・食欲低下を認め,入院.CTにて小腸の捻じれによる不全イレウスを疑い,手術となった.開腹すると,腸管の癒着はほとんど認めず,挙上空腸間膜と結腸間膜の間隙(Petersen's defect)をヘルニア門として,Y脚吻合部以降の小腸のほとんどが,ヘルニア門をくぐっている状態であった.小腸の明らかな血流障害や閉塞は認めなかったが,小腸の捻じれにより内容物が流れづらい状態になっていた.ヘルニア門から小腸を引き出し,ヘルニア門を縫合閉鎖し,手術を終了した.胆道系手術時のRoux-en-Y再建後の内ヘルニアに関する報告は少なく,今回,文献的考察を含めて報告する.

  • 南 健介, 廣田 昌紀, 長岡 慧, 中塚 梨絵, 真貝 竜史, 間狩 洋一
    2024 年 85 巻 3 号 p. 394-398
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    内ヘルニアの中でも傍下行結腸窩ヘルニアは非常に稀な疾患である.腸閉塞を呈した1例を経験したため報告する.症例は腹部手術歴のない54歳の女性.腹痛を主訴に受診した.造影CTでは,下行結腸外側の小腸に通過障害を認め,腸閉塞と診断した.イレウス管を挿入し保存的治療を開始したが,第3病日に腹痛が増悪した.単純CTで腹水が出現し,絞扼性腸閉塞が疑われ手術を行った.腹腔鏡下で観察すると,下行結腸背側の内ヘルニアに小腸が嵌入していた.傍下行結腸窩ヘルニア嵌頓と診断し,腹腔鏡下で小腸を牽引して嵌頓解除し,ヘルニア門を開放して手術を終了した.術後経過は良好で,術後7日で退院となった.後方視的に腹部CTを確認すると,下行結腸の外背側に小腸が嵌入してclosed loopを形成する,傍下行結腸窩ヘルニアに特徴的な画像所見を確認できた.

  • 増井 友恵, 愛洲 尚哉, 竹下 一生, 矢永 勝彦, 大屋 正文, 恒吉 正澄, 長谷川 傑
    2024 年 85 巻 3 号 p. 399-404
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    無症候性の虫垂腫瘍の疑いに対して腹腔鏡下回盲部切除術を行い,術後の病理組織学的検査で特発性虫垂重積の診断を得た1例を経験したので報告する.症例は73歳の男性で,検診の下部消化管内視鏡検査にて虫垂腫瘍を疑われ紹介となった.下部消化管内視鏡検査では,虫垂開口部に発赤調の粘膜隆起を認めた.造影CTでは盲腸内腔へ突出する腫瘤性病変として描出され,虫垂腫瘍が疑われた.盲腸切除では断端陽性になる可能性があるため,腹腔鏡下回盲部切除術を行った.摘出標本の肉眼的所見では,虫垂開口部から発赤した粘膜がポリープ様に隆起しており,鉗子で内腔を確認したが挿入困難であった.病理組織学的診断では,虫垂粘膜が重積により反転し,ポリープ様の隆起を呈していた.隆起の内部には特異的炎症所見や悪性所見は認めず,特発性虫垂重積と診断した.虫垂の腫瘤性病変の鑑別疾患として,特発性虫垂重積も挙げる必要があると考えられた.

  • 加藤 潤紀, 小林 建司, 齊藤 健志, 中島 亮, 廣川 高久, 山本 稔
    2024 年 85 巻 3 号 p. 405-409
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は48歳,女性.健診にて便潜血陽性を指摘されて精査を実施した結果,骨盤内に腫瘍を認めたため卵巣腫瘍の疑いで当院産婦人科へ紹介となった.当院でCTおよびMRIを実施し,直腸右側に近接する9cm大の境界明瞭な腫瘍を認めた.卵巣腫瘍と診断し,腹腔鏡下に手術を実施した.腫瘍は直腸右側の腸間膜内に認め,直腸合併切除が必要と判断した.造影CT・MRIおよび下部消化管内視鏡検査の結果から類表皮嚢腫疑いの診断で,後日改めて当科で腹腔鏡下直腸低位前方切除術を施行した.術後の病理検査では成熟嚢胞性奇形腫の診断であった.腸間膜内に発生する成熟奇形腫は大変珍しい良性疾患であるが,悪性転化することもある.本疾患の根治的治療として外科的切除が必要と考えられる.

  • 幕谷 悠介, 加藤 寛章, 牛嶋 北斗, 家根 由典, 川村 純一郎, 上田 和毅
    2024 年 85 巻 3 号 p. 410-414
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は89歳,女性.直腸癌(cT3N0M0,cStage IIa)に対し,ロボット支援Hartmann手術を施行した.術後6日目にイレウスを発症し,左上腹部にゴルフボール大の隆起を認めたため,単純CTを施行したところ左上腹部の8mmポートサイト腹壁に小腸の嵌入を認め,ポートサイトヘルニアと診断した.用手還納できず,同日緊急手術を施行した.左上腹部のポート創を開創したところ,嵌入した小腸とヘルニア門を同定した.小腸の色調は良好であったため,小腸を腹腔内に還納し,創部は0-PDS(PDS II:ZB776, ETHICON®)で筋膜と腹膜を縫合閉鎖した.術後経過は良好で,術後11日目に退院となった.ポートサイトヘルニアは腹腔鏡手術特有の合併症であるが,ロボット支援手術における8mmダビンチポートサイトを閉鎖すべきかについての明確なエビデンスはない.今回,ロボット支援Hartmann手術後に8mmポートサイトヘルニアを発症した症例を経験したので報告する.

  • 福田 開人, 日吉 雅也, 川崎 普司, 佐藤 広高, 京田 有介
    2024 年 85 巻 3 号 p. 415-419
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,女性.検診で便潜血陽性が指摘され当院を受診した.診断は上行結腸癌cT1bN0M0 Stage I,上部直腸癌cT3N0M1a (PUL) Stage IVaであった.他院で膀胱脱,子宮脱に対してメッシュを用いた腹腔鏡下仙骨腟固定術を行った既往があり,直腸病変に対する手術操作の際には癒着が予想されていた.今回,われわれは腹腔鏡下仙骨腟固定術後に直腸癌を発症した症例に,腹腔鏡下低位前方切除術を安全に行うことができたので報告する.

  • 岸 和希, 浅岡 忠史, 大橋 朋史, 三賀森 学, 古川 健太, 辻 洋美, 倉重 真沙子, 水島 恒和
    2024 年 85 巻 3 号 p. 420-425
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は73歳,男性.慢性関節リウマチ加療中に造影CTで肝門部から膵頭部背側へと広がる6cm大の腫瘤を指摘された.EUS-FNAを施行するも確定診断が得られず,腹腔鏡下に腫瘍摘出術を施行した.術中所見では腫瘍は腫大した肝十二指腸間膜リンパ節で,病理組織では結節硬化型Hodgkinリンパ腫の像を呈していたが,メトトレキサート投与中であったことからメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患と診断された.術後はメトトレキサートを中止し,リンパ腫の治療は行わず経過観察しているが,25カ月間無再発生存中である.

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編集後記
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