日本臨床外科学会雑誌
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巻頭言
原著
  • 加藤 悠人, 中川 基人, 室井 貴子, 足立 基代彦, 原 明日香, 林 啓太, 本郷 久美子, 米山 公康, 高野 公徳
    2020 年 81 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    恥骨後式前立腺全摘術(RRP)既往のある患者の鼠径ヘルニア手術では,腹膜前腔の剥離操作に難渋する場合がある.われわれはRRP既往のある患者に対し,腹膜前腔の剥離を要する手術(TAPP法等)を避けてLichtenstein法を選択している.その評価を目的として2011年1月から2017年12月までの鼠径部ヘルニア手術症例のうち,初発・片側・成人男性でIII型を含まない鼠径ヘルニアに対して待機的にLichtenstein法を施行した症例をRRP既往の有無で2群に分けて検討した.対象症例は364人で,RRP既往有りの群は47人,既往無しの群は317人であった.既往有りの群で患者年齢が高く,ヘルニア分類は全例I型であった.両群とも術中合併症を認めず,手術時間,出血量,術後合併症,再発,慢性疼痛の有無に差を認めなかった.われわれの行うLichtenstein法はRRP既往の影響を受けにくい術式であり,RRP既往のある鼠径ヘルニア患者に対する術式決定において有用な選択肢となり得ると考えられた.

  • 増田 崇, 上田 貴威, 平下 禎二郎, 猪股 雅史, 白石 憲男
    2020 年 81 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:大分県外科勤務医へのアンケートから「医師不足を自覚する」要因を検討し,平成22年度の前回アンケート調査結果と比較し,医師不足の改善が得られているか検討する.

    方法:大分県の外科勤務医にアンケート調査を実施した.

    結果:有効回答者数は171名で,回答率は82%であった.131名(76.7%)で医師不足を自覚し,平成22年度の77%と同じで,医師不足の実感は改善していなかった.「医師不足を自覚する」要因を多変量解析すると,「担当入院患者11人以上」,「月間会議数7回以上」,「週間趣味5時間以上」,「学位あり」,「コミュニケーション良好」が関連していた.

    結語:大分県外科勤務医の多くは,未だ医師不足を実感している.特に入院患者を多く担当している外科勤務医ほど,医師不足を自覚している.しかしながら,医師間で良好に情報共有をすることにより医師不足の現状に対応しているように思われた.

臨床経験
  • 渕上 ひろみ, 竹田 奈保子, 数納 祐馬, 飯島 広和, 髙木 睦郎, 佐藤 一彦
    2020 年 81 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:乳癌転移症例の治療では転移巣の生検が推奨されているが1)~5),侵襲性から躊躇されることも多い.今回,画像検査で乳癌肝転移と診断され肝生検を施行した症例について,その臨床的意義を検討した.

    方法:2016年9月以降,画像検査で乳癌肝転移と診断され,肝生検を行った10例を対象とした.

    結果:平均年齢は56歳,乳癌の診断から肝生検までの期間は平均90カ月.3例は肝臓原発の悪性疾患,7例は乳癌肝転移と診断された.乳癌肝転移の7例のうち,3例(43%)で原発巣と肝転移巣の生物学的特性が異なっていた.6例において肝生検結果で治療方針が決定された.肝転移7例の生検後生存期間は平均11カ月.合併症は,疼痛2例,出血1例,発熱1例といずれもGrade1であった.

    結語:超音波ガイド下肝生検は合併症も軽度であり,治療方針決定に有用な手技であると考えられた.

症例
  • 齋藤 麻梨恵, 呉 壮香, 長岡 竜太, 岡村 律子, 杉谷 巌
    2020 年 81 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    甲状腺は他臓器と交通がないため,甲状腺内異物の発生は非常に稀である.今回,術前に異物の存在が予想できず,術後に甲状腺内異物を認めた経験をしたため報告する.症例は46歳の男性で,15年前より甲状腺腫瘤を指摘されていた.重症潰瘍性大腸炎のため入院した際に,再度甲状腺腫瘤を指摘された.頸部USで甲状腺右葉に粗大石灰化を伴う辺縁不整な低エコー腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診にて甲状腺乳頭癌と診断した.cT2N0M0の診断にて甲状腺右葉切除,中央領域郭清術を行った.検体に割を入れた際,内部より針様の異物を認めた.病理診断は甲状腺乳頭癌.異物は針生検に使用される器械の内針のような形態をしていた.本人に確認したところ,15年前に甲状腺の針生検を受けたようだった.甲状腺隣接臓器の気管,食道,総頸動脈などに針が穿通する可能性を有する非常に危険な状態であった.術前に甲状腺腫瘍の石灰化と判断した部位が異物を反映していたと考えられた.

  • 児玉 渉, 大田 里香子, 野坂 祐仁, 大野 貴志, 浜崎 尚文, 吹野 俊介
    2020 年 81 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    乳腺葉状腫瘍の発生頻度は乳腺腫瘍の0.5%以下で,好発年齢は40歳台であり10歳台は稀である.われわれは若年発症の急速増大した巨大葉状腫瘍の1手術例を経験した.症例:17歳の女性.2015年4月から左乳房に腫瘤を自覚.急速増大し,同年7月に当科を初診.左乳房下縁からB領域に主座をおく13cm大の平滑弾性軟の腫瘍を認めた.造影CT所見は,左乳房ABD領域に13.5×8.5cmの巨大腫瘤で,境界明瞭・辺縁整,比較的均一に淡く造影された.針生検では線維腺腫と診断.しかし,腫瘍が大きく葉状腫瘍の可能性があり,マージンを1.5cmとる腫瘍摘出術を行った.左乳房下溝部を皮切し,術後乳房の変形は認めなかった.術後病理結果は,良性葉状腫瘍の診断だった.術後4年で再発はない.結語:線維腺腫と葉状腫瘍は鑑別困難な場合があり,若年者の治療に際しては根治性の他に,整容性や将来の授乳機能の温存,精神面にも配慮しなければならない.

  • 井寺 奈美, 後藤 理紗, 本田 弥生, 宮本 博美, 有賀 智之, 堀口 慎一郎
    2020 年 81 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は81歳,女性.左乳輪下に腫瘤を触知し受診.可動性良好だが表面粗造な腫瘤を触知した.マンモグラフィーでは腫瘤をかたどるように形成された粗大石灰化を認めて良性腫瘍を疑ったが,乳腺超音波では1.2cm大の境界明瞭粗造,縦横比の高い血流豊富な腫瘤で悪性も考えた.乳腺MRIではdynamic studyでrapid-plateau patternを示すことから悪性を疑った.細胞診では混合腫瘍あるいは過誤腫などを疑うが良悪性の鑑別は困難であった.組織診では明瞭な骨・軟骨形成を確認し腺筋上皮腫を疑うが,化生癌も否定できない像との診断で,切除生検にて全体像を確認する方針とした.最終診断は,乳腺多形腺腫で,悪性所見は認めなかった.稀な乳腺原発の多形腺腫を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 高田 晃次, 宮下 晶恵, 川尻 成美, 若狹 研一
    2020 年 81 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,乳房温存術後に発生した放射線誘発性血管肉腫を2例経験した.症例1は86歳の女性で,79歳の時に左乳癌にてBp+Axと術後放射線治療を施行した.術後7年目に左前胸部のしこりと出血を主訴に受診し,針生検で再発と診断されたためweekly paclitaxel+bevacizumabを開始した.有害事象で治療継続困難であり,左乳房単純切除術と皮膚広範切除術を施行したが,術後病理学的診断では血管肉腫と診断された.術後1カ月目に局所再発を発症したがBSCの方針となり,再発3カ月後に死亡した.症例2は67歳の女性で,61歳の時に左乳癌にて術前化学療法後にBp+Axと術後放射線治療を施行した.術後6年目,左前胸部に皮疹を認め同部位の皮膚生検にて血管肉腫と診断されたため,左乳房単純切除術と植皮術を施行した.術後1年無再発である.乳癌術後から血管肉腫発生までの期間から,本2症例は放射線誘発性と考えられた.本疾患は予後不良な希少疾患であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 芝木 泰一郎, 池上 淳, 赤羽 弘充, 山田 健司, 稲垣 光裕, 佐藤 啓介
    2020 年 81 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    48歳の女性が右乳腺微小石灰化精査目的に受診.その後所見に変化があり,超音波検査で右A領域に12.7×6.4mmの不整低エコー域が認められ,吸引式乳腺組織生検を施行した結果,乳管内進展を伴う浸潤性乳管癌だった.Stage I乳癌と診断しBp+SNを施行.標本中には6×5 mm大の結節病変が認められ,泡沫細胞やリンパ球の浸潤,線維芽細胞を伴う線維増生などの炎症の組織像が認められるのみで乳癌細胞は認められず,癌遺残なしの診断.生検組織と切除組織の比較では,前者でCD8陽性Tリンパ球の浸潤が見られ,後者で細胞質にER陽性顆粒を有するマクロファージが見られた.治療前生検で消失したとされる癌を『生検消失癌』と呼ぶが乳癌では報告が無い.本症例では生検時既に腫瘍に対する免疫反応が起きており,生検による腫瘍組織の破壊がさらに免疫反応を惹起し,それによる急性炎症が腫瘍消失に寄与した可能性が考えられた.

  • 孫 起和, 金岡 祐次, 前田 敦行, 高山 祐一, 高橋 崇真, 宇治 誠人
    2020 年 81 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は72歳の男性で,直腸癌同時性肝転移に対して,術前化学療法としてmFOLFOX6+Panitumumab療法を行った後に腹会陰式直腸切断術,肝拡大左葉切除術および肝後上区域部分切除術を施行した.術後7日目に骨盤死腔内への小腸嵌頓による腸閉塞のため回盲部切除術を施行した.術後6カ月目のCTでは右下腹部に20mm大の単発結節を認め,FDG-PETでも同部位に集積を認めた.腹膜播種再発を疑い手術を行ったところ,回腸結腸吻合部の間膜内に腫瘤を認めたため,吻合部を含めた腸管切除術を施行した.病理組織所見では悪性像は認めず,瘢痕組織に囲まれた膿瘍を伴う,縫合糸を取り囲む多核巨細胞を認め,異物肉芽腫と診断した.回盲部切除術を行った際に間膜を閉鎖した縫合糸による異物反応と考えられた.悪性腫瘍術後に再発との鑑別が困難であった縫合糸による腹腔内異物肉芽腫を経験したため報告する.

  • 森 理, 富林 敦司, 江藤 祥平, 松尾 祐太, 常城 宇生, 牧 秀則, 山下 理子
    2020 年 81 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.咽頭痛・嚥下痛の精査で中咽頭癌と診断されたが,頸胸腹部CT検査で気管背側に2cm大の腫瘤影も指摘され,CTガイド下針生検を施行したところ,60歳時に根治切除を行った胸部食道癌の再発と診断された.PET-CT検査では同腫瘤影に対してFDGの異常集積を認めたが,他部位に転移を示唆するような所見はなかった.中咽頭癌および食道癌局所再発と診断し,中咽頭癌領域を含めた放射線単独療法を総線量60Gy/30Frにて施行した.照射後6カ月で気管背側の腫瘤は消失し,その後も再増大なく完全奏効が得られた.2年が経過したところで咽頭壁の肥厚を認め中咽頭癌の再発と診断され,その後3カ月で死亡した.食道癌が根治切除後5年以上経過して再発することはまれであり,若干の文献的考察を加え報告する.

  • 竹山 治, 韓 秀炫, 久保田 恵子, 浅生 義人, 田中 満
    2020 年 81 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は74歳,女性.2カ月前に下行結腸憩室炎の加療歴がある.前日からの左下腹部痛,嘔吐があり当院を受診.腹部CTにて下行結腸の炎症所見および十二指腸に胆石を認め,下行結腸憩室炎,胆石イレウスの診断で入院.絶食にて保存的加療を行い胆石は自然に下行結腸に達したため食事を開始したが,腹痛・発熱を生じ,CTにて下行結腸の胆石付近の穿孔が疑われたため緊急手術を施行した.下行結腸は炎症性に肥厚,硬化しており,後腹膜より授動すると穿孔部位より便汁の流出が見られた.下行結腸切除術,回腸人工肛門造設術を施行した.摘出標本で下行結腸壁に胆石の嵌頓による潰瘍および穿孔,その肛門側に憩室炎による壁肥厚,内腔の狭窄を認め,憩室炎による狭窄部に胆石が嵌頓したことが穿孔の原因と考えられた.下行結腸憩室炎に胆石イレウスによる穿孔を合併した,まれな症例を経験した.

  • 坂本 純一, 永 滋教, 海津 貴史, 田島 弘, 隈元 雄介, 渡邊 昌彦
    2020 年 81 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は67歳の男性で,S7領域の2個の肝細胞癌に対して腹腔鏡下肝拡大後区域切除術を施行した.途中,右肝静脈末梢枝を損傷したが圧迫止血をしながら肝切離を続けていたところ,突然SpO2が86%まで低下するとともに収縮期血圧も80mmHg台まで低下した.EtCO2が25mmHgに低下し,PaCO2が95.4mmHgと上昇して双方に乖離を認めたことから,気腹ガスによる炭酸ガス塞栓と診断した.直ちに手術を中断し,全身状態が安定した後に完全鏡視下からhand-assisted laparoscopic surgery(HALS)に移行して手術を完遂した.腹腔鏡下肝切除中に炭酸ガス塞栓が生じた際,炭酸ガス流入部として肝静脈損傷部が明らかで効果的な用手圧迫が期待できる場合,HALS移行は有効な選択肢となり得ると考えられた.

  • 藤井 正和, 安保 義恭, 加藤 健太郎, 高田 実, 中村 文隆
    2020 年 81 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は44歳の女性.腹部膨満感の精査のCTで15cm大の左副腎腫瘍を認めた.手術にて摘出し副腎皮質癌Stage IIと診断した.術後1年で肝・肺転移再発しMitotane投与を開始した.肝転移の増大に対し術後3年で肝後区域切除を行った.その1年後には残肝に多発再発した.多血性腫瘍であったため肝動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)を行うと,1箇所を残して他の病変は消失した.残存病変に肝部分切除を行い肝転移の寛解を得た.初回術後5年5カ月経過し,新規の肝転移はなく肺転移もMitotaneの継続投与で増大がない.副腎皮質癌肝転移の治療にTAEが有効という報告がある一方で,単独では局所制御が困難な場合も多い.経過を慎重に判断し適切な段階で外科切除を追加することで,長期生存を得られる可能性があると考えられた.

  • 三島 顕人, 佐藤 太祐, 松川 啓義, 塩崎 滋弘
    2020 年 81 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,女性,3年前に右肺下葉臓側胸膜に発生した腫瘍に対し胸腔鏡補助下右肺中葉・底区切除術が施行された.病理組織学所見より孤立性線維腫(solitary fibrous tumor;以下,SFTと略記)と診断され,術後1年毎のCT撮像による経過観察となっていた.背部痛を主訴に当院を受診し,腹部超音波検査を施行したところ胆嚢頸部から体部に91×30mmの腫瘤を認めた.造影CTでは腫瘍に明らかな造影効果は認めなかった.MRIでは腫瘍はT1強調像で均一な低信号,T2強調像で不均一な高信号,拡散強調像では拡散低下は認めなかった.胆嚢腫瘍の診断で開腹胆嚢摘出術を施行した.切除標本の肉眼所見では,胆嚢内部は暗赤色ゼリー状腫瘤で満たされており,胆嚢体部胆嚢床側から連続する有茎性腫瘍を認めた.腫瘍は胆嚢壁内より発生し粘膜側へ突出しており,腫瘍の多くは変性・壊死に陥っていた.病理組織学所見では,紡錘形細胞が胆嚢壁深部から束状密に増殖して腫瘤を形成しており,免疫染色でStat6(+)の所見からSFTと診断された.胆嚢に発生するSFTの報告は本邦初であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 平井 公也, 本間 祐樹, 藪下 泰宏, 熊本 宜文, 松山 隆生, 遠藤 格
    2020 年 81 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    患者は49歳,男性.急激な上腹部痛を主訴に前医を受診し,CTで膵頭部に動脈相で中心部が濃染される直径2cm大の低濃度腫瘤を指摘された.超音波内視鏡検査では内部に6mm大の無エコー域を伴う20mm大の低エコー腫瘤として描出され,Dopplerで無エコー域と病変近傍の上腸間膜静脈に拍動波を認めた.血管造影検査で前上膵十二指腸動脈領域に網目状の血管増生と上腸間膜静脈へのシャント,下膵十二指腸動脈領域に動脈瘤を認めた.以上から動脈瘤を伴った膵動静脈奇形と診断され,手術目的に当院へ転院となった.動脈瘤が増大傾向であったことから,準緊急で膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査で,膵動静脈奇形とその異常血管の破綻による仮性動脈瘤と診断した.膵動静脈奇形は消化管動静脈奇形の0.9%と比較的稀な疾患である.今回われわれは,仮性動脈瘤を伴う膵動静脈奇形の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

  • 新田 亜由美, 金 浩敏, 今里 光伸, 金 鏞国, 位藤 俊一
    2020 年 81 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は77歳,女性.検診で便潜血陽性のため下部消化管内視鏡検査を施行したところ下行結腸に10mm大のII a+II c病変を認め,当科紹介となった.

    術前の全身検索目的の胸腹部造影CTにて,3年前と比較して脾臓に増大・増加する多発腫瘤を認めた.FDG-PET CTでは脾臓に高度集積を指摘され,可溶性IL-2レセプターの軽度高値を認め,脾原発悪性リンパ腫が疑われたために腹腔鏡下下行結腸部分切除術・脾臓摘出術を同時に行う方針とした.病理組織学的検査の結果,脾臓はサルコイドーシスと診断された.現在まで4年間再発なく経過している.

  • 塩澤 徹也, 直井 大志, 利府 数馬, 関口 忠司
    2020 年 81 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は63歳,女性.右下腹部痛と腹壁瘢痕ヘルニア膨隆部の皮膚発赤,発熱が出現したため当院を受診した.下腹部正中に巨大な腹壁瘢痕ヘルニアを認め,その下端に皮膚発赤と圧痛を認めた.腹部造影CTでは,ヘルニア嚢内へ終末回腸から横行結腸にかけて脱出を認め,回盲部に接する下腹部腹壁に長径約7cmの膿瘍を認めた.局所麻酔下に膿瘍ドレナージを行い症状は改善したが,腸管皮膚瘻を呈しドレーンより少量の腸液排泄が持続した.二期的に回腸部分切除を伴う瘻孔切除,components separation法(以下CS法)による腹壁瘢痕ヘルニア修復術を行った.病理学的所見から,腹壁瘢痕ヘルニアに回腸憩室穿通による腹壁膿瘍が併発したことが考えられた.手術部位に感染を伴ったヘルニア修復術では,メッシュなどの人工物は術後感染の観点から使用できないため,CS法によるヘルニア修復術が有用である.

  • 関本 晃, 宮﨑 真一郎, 林 忠毅, 西脇 由朗
    2020 年 81 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,男性.嘔吐と左鼠径部痛で外来受診.左鼠径部から陰嚢にかけて著明な膨隆と同部位の圧痛を認めた.CTで左陰嚢内にS状結腸が嵌頓しており,陰嚢内に遊離ガスと糞便の貯留を認めた.腹腔内に遊離ガスや腹水は認めず.左鼠径ヘルニア嵌頓によるヘルニア嚢内でのS状結腸穿孔と診断し,緊急手術を行った.開腹するとS状結腸が左外鼠径ヘルニア嚢内に嵌頓しており,還納するとヘルニア嚢内にあったS状結腸の腸間膜付着部に穿孔を認めた.穿孔部には腫瘍や憩室,虚血壊死の所見は認めなかった.Hartmann手術およびヘルニア嚢切除縫縮術を行った.術後にうっ血性心不全と麻痺性イレウスを発症したが保存的治療で軽快し,術後40日目に退院した. S状結腸が嵌頓した状態で,嘔吐により腹圧が急激に上昇し,ヘルニア嚢内と腹腔内で圧差が生じて穿孔に至ったと考えられた.鼠径ヘルニア嚢内でS状結腸穿孔をきたした稀な手術例を経験したので報告する.

  • 小林 智輝, 水野 伸一, 杉田 静紀, 河南 晴久, 丸山 修平, 玉内 登志雄
    2020 年 81 巻 1 号 p. 106-114
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例1は75歳,男性.両側鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を施行し,術後1年10カ月目に右鼠径部の疼痛と発熱を主訴に来院.CTで右鼠径部に膿瘍を認め,メッシュ関連膿瘍と診断しメッシュ除去とドレナージ術を施行した.術中にタッカーが2個遺残したことが原因と思われる難治性の術後遺残膿瘍が生じたが,抗菌療法により約2カ月で保存的に改善した.症例2は幼少期に右鼠径ヘルニアの手術歴がある55歳の男性で,右鼠径部痛を主訴に来院.CTで鼠径ヘルニアの再発と小腸の嵌頓を認めた.嵌頓腸管の血流は問題なくその場で整復し,後日腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を施行した.術後2カ月目に発熱を主訴に来院し,CTで右鼠径部に膿瘍を認めメッシュ関連膿瘍と診断しタッカーを含めたメッシュ除去とドレナージ術を施行した.ヘルニア術後のメッシュ感染を認めた場合には難治性となることが多く,人工物を遺残なく摘出する必要がある.

  • 佐藤 宏彦, 石川 大地, 豊田 剛, 鷹村 和人, 三浦 連人
    2020 年 81 巻 1 号 p. 115-120
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は69歳,男性.57歳と64歳時に右鼠径部ヘルニア修復術の既往あり.半年前から右鼠径部の膨隆を認め,当科を受診した.鼠径部除圧下腹臥位CT検査で右下腹壁動静脈の内側から膀胱の右前壁の脱出を認め,膀胱ヘルニアと診断し,TAPP法を施行した.手術所見では前回挿入されたUPPが右内鼠径輪に展開され,右下腹壁動静脈内側に陥凹を認め,日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア分類ではRec II-3,膀胱ヘルニア分類ではparaperitoneal type(腹膜側型)であった.Bard®3D MaxTM Light Mesh(L size)を用いて修復した.術後6カ月の現在,再発なく経過している.膀胱ヘルニアに対しTAPP法施行例の報告は17例と少ない.膀胱損傷の回避には術前診断と術中の膀胱下腹筋膜を意識した腹膜前腔剥離が重要である.今回,われわれはUPP法術後の再々発鼠径部膀胱ヘルニアに対し,TAPP法で修復した1例を経験したので報告する.

会報
日本臨床外科学会会則
日本臨床外科学会内規
日本臨床外科学会支部に関する規定
日本臨床外科学会臨床研究の利益相反に関する指針
第80巻総目次,筆頭著者名および総索引用語
編集後記
日本臨床外科学会役員等氏名
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