日本臨床外科学会雑誌
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最新号
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令和3年度学会賞受賞記念講演
  • 丹羽 宏
    2022 年 83 巻 5 号 p. 807-814
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    パンコースト肺癌は肺尖部胸壁に浸潤し,進展すればパンコースト症候群を呈する予後不良な疾患である.従来,術前放射線療法が標準治療とされたが決して良好な成績ではなかった.著者は肺尖部を前方,正中,後方の3つに分類し腫瘍の局在によってアプローチを選択することが重要と考えた.後方から正中を占拠するパンコースト肺癌にはhookアプローチを開発し,前方を占拠する肺癌には前方アプロ―チにて完全切除率の向上に努めた.さらに早くから術前化学放射線療法を導入し治療成績の改善を図った.86例のパンコースト肺癌を経験し全体の5年生存率は48.7%(MST49.6カ月)であった.2000年までの前後期で分けると後期(n=49)の5年生存率は62.3%(MST未達)と前期の31.7%(MST12.7M)より有意に良好であった.腫瘍局在によるアプローチの選択,術前化学放射線療法の導入により劇的に予後を改善することができた.

症例
  • 豊田 尚潔, 鈴木 慶一, 山下 幾太郎, 尾曲 健司, 橋本 健夫, 田村 明彦
    2022 年 83 巻 5 号 p. 815-820
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は69歳,男性.遷延する腹痛と便秘のため当院へ救急搬送され,精査の結果,盲腸癌・大腸閉塞が疑われた.イレウスチューブを挿入して減圧を行った後に全身精査を行ったところ,原発巣の腹壁浸潤に加え,多発リンパ節転移・肝転移・肺転移・骨転移を認めた.原発巣の切除は困難であったため回腸人工肛門を造設し,化学療法を施行の方針とした.RAS変異陽性であったことからmFOLFOX6+bevacizumab療法を開始したところ,治療開始から5カ月経過した11コース目の施行後に本人より難治性口内炎の訴えがあった.口腔外科での診察を受けたところ下顎骨壊死の診断となったため,一時化学療法を中止し,口腔外科にて抜歯と腐骨除去を施行した.顎骨壊死はbevacizumabの有害事象と考えられるが,極めて稀であり本邦における報告はほとんどない.今回われわれは,bevacizumabによる顎骨壊死の症例を経験したので報告する.

  • 浅井 はるか, 森 菜採子, 大月 寛郎, 吉田 雅行
    2022 年 83 巻 5 号 p. 821-826
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    IgG4関連疾患による乳腺腫瘍性病変を経験した.症例は71歳,女性.左眼瞼腫脹を主訴に当院眼科を受診し,MRIで左眼窩腫瘍を指摘され,腫瘍からの生検でIgG4関連疾患と診断された.全身検索のための造影CTで左乳腺内上区域に造影効果を伴う高吸収域を指摘され,当科を紹介初診した.乳房超音波検査(US)では同部位に局所性の斑状低エコー域を認めた.針生検にて高度な形質細胞やリンパ球の浸潤を認め,免疫染色で多数のIgG4陽性細胞を認めたことより,IgG4関連乳腺腫瘍性病変と診断された.ステロイド治療開始後,眼症状の改善と血中IgG値の低下を認めた.乳腺の病変は継時的に縮小を認め,治療開始後4年現在,再燃なく経過している.

  • 栗原 亜梨沙, 俵矢 香苗, 越 浩美, 柳本 邦雄
    2022 年 83 巻 5 号 p. 827-831
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,女性.5年前に他院で右乳房腫瘤摘出を施行し,乳腺管状腺腫の診断であった.術後経過観察の方針であったが自己中断していた.扁桃周囲膿瘍で当院入院時に施行した胸部単純CTで右乳房腫瘤を認め,当科へ紹介受診となった.前医での術後創部付近に2cm大の表面平滑な腫瘤を触知した.乳房マンモグラフィ検査で右乳房A領域に境界明瞭・平滑,一部境界不明瞭な腫瘤を認め,乳腺超音波検査では同部位に最大径27mmの境界明瞭で,一部明瞭粗造な分葉形腫瘤がみられた.乳房造影MRIでは右乳房にリング状造影効果を呈する腫瘤を認めた.ばね式針生検では乳腺管状腺腫の再発が疑われた.短期間に出現していることや画像所見上より,乳癌の可能性を否定できず外科的切除を施行した.術後病理組織学的検査の結果,乳腺管状腺腫の局所再発と診断した.今回,摘出術後に局所再発した閉経後乳腺管状腺腫の1例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.

  • 岡﨑 舞, 坂東 裕子, 寺崎 梓, 澤 文, 原 尚人
    2022 年 83 巻 5 号 p. 832-837
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は58歳,女性.16年前に前医で右浸潤性小葉癌に対して右乳房全切除術+腋窩リンパ節郭清を施行された.手術病理結果は浸潤性小葉癌,pT2N1(2/19)M0,pStage IIB,ER陽性,PgR陽性,HER2 score1であった.術後補助療法として内分泌療法(anastrozole)が4年間行われた.術後6年目に右下腹部痛が出現し虫垂炎を疑われ,虫垂切除術を施行された際に腹腔内に播種結節を多数認めた.浸潤性小葉癌の胃転移・腹膜播種と診断され,当院を受診した.治療はtamoxifen+leuprorelinを9年3カ月間,anastrozole+palbociclibを7カ月投与し,現在も継続中である.浸潤性小葉癌の胃転移,腹膜播種は予後不良であることが多く,本症例のように再発後10年以上の長期生存を得た症例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 小林 稔弘, 坂根 純奈, 平松 昌子, 川口 佳奈子, 恒松 一郎, 渡邉 千尋
    2022 年 83 巻 5 号 p. 838-843
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    被包型乳頭癌(EPC)は2012年WHO分類で新規に分類されたpapillary lesions IBのまれな悪性病変である.当院で経験したEPC8例を報告する.年齢中央値66.5歳.主訴は腫瘤4例,腫瘤観察中3例,他疾患検査中1例.マンモグラフィーは全例カテゴリー3以上.超音波で混合性6例,充実性2例.腫瘤径は平均5.1cm.7例の針生検は全例悪性.乳房切除術4例,部分切除術4例.病理で浸潤あり4例.ホルモン陽性6例,HER2は浸潤例全て陰性.Ki-67は浸潤例3例で14%以上であった.部分切除例に放射線,ホルモン陽性5例に内分泌,1例に化学療法を行った.

    EPCは高齢傾向で,浸潤例でも浸潤癌に分類されるものよりは予後良好とされるが,自験例では40歳台も3人おり必ずしも高齢傾向とは言えず,急速増大例が目立つことや,増殖活性も浸潤例での高値も見られ,予後に留意すべき症例があることも示唆された.

  • 武内 寛, 森 和彦, 杉谷 純, 河野 義春, 田代 浄, 竹谷 剛
    2022 年 83 巻 5 号 p. 844-848
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は69歳の女性.上行大動脈置換の既往がある.今回,下行大動脈瘤に生じた下縦隔の大動脈食道瘻に対し,胸腹部大動脈置換に加え,食道切除二期再建を実施した.第一期手術では右半側臥位・左開胸開腹による胸腹部大動脈置換,食道亜全摘,大網充填,頸部食道瘻造設,胃瘻造設を施行した.大網皮弁作成においては,後日の胃管再建のために右胃大網動静脈を胃側に温存し,左胃大網動静脈をpedicleとする大網皮弁を食道裂孔経由で胸腔内に挙上した.第二期手術では大網皮弁のPedicleである左胃大網動静脈を損傷しないよう,同動静脈を胃壁に沿って処理したうえ胃管を受動し,胸壁前経路で挙上再建した.術後は縫合不全を合併し経過がやや遷延したが,重篤化することなく自宅退院が可能であった.左胃大網動静脈をpedicleとする大網皮弁作成は,後縦隔への大網充填と二期的な胃管による食道再建を両立させる有用な方法であると考えられた.

  • 平山 杏, 松野 将宏, 角岡 信男
    2022 年 83 巻 5 号 p. 849-853
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    完全内臓逆位は1万人に1-2人の頻度で見られる稀な先天性疾患であり,完全内臓逆位に併存した肺癌の手術報告は少ない.今回われわれは,完全内臓逆位に併存した左上葉肺癌に対して10年以上前に左上葉切除術が施行された患者において,右上葉肺癌が発生し,これに対して右上葉切除術を施行することとなった1例を経験した.

    過去の報告例では,完全内臓逆位症例において両側の肺葉切除術が施行された報告例は認められず,同一症例で両側胸腔内および肺門構造を観察できた貴重な症例であると思われる.これまでの完全内臓逆位が併存する肺癌に対する手術加療の報告例にて挙げられている気管挿管時の注意点や,手術操作における問題点を再度確認しつつ,本症例において得られた知見を共有することで,今後同様な症例を経験する医師の一助となることを期待して,若干の文献的考察とともに報告する.

  • 岡 凌也, 大谷 剛, 坂本 美咲, 竹原 裕子, 奥谷 大介, 片岡 正文
    2022 年 83 巻 5 号 p. 854-859
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は74歳,男性.5年前に交通外傷による右肋骨骨折,右血気胸の既往があった.今回,貧血と腫瘍マーカー上昇の精査のため下部消化管内視鏡検査を施行したところ,左胸腹部痛が出現した.CTにて左横隔膜ヘルニアと脱出した結腸の嵌頓を認めたため,緊急手術を行った.開腹で手術を開始し腸管を還納したが,術野展開の困難さから胸腔鏡補助下に横隔膜縫縮によるヘルニア修復を行った.横隔膜ヘルニアは外傷による横隔膜損傷などを原因として発症するが,高エネルギー外傷で多臓器損傷を合併している場合には見落とされることも多い.遅発性に脱出臓器が閉塞することや,本症例のように下部消化管内視鏡検査によって嵌頓する可能性があり,基本的な治療は手術である.今回,下部消化管内視鏡検査を起因として左横隔膜ヘルニア嵌頓をきたした症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 小林 巌, 衣笠 章一, 川嶋 太郎, 門馬 浩行, 石川 泰, 高瀬 至郎
    2022 年 83 巻 5 号 p. 860-865
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    患者は68歳,男性.胸部下部食道癌(cStage III)に対し術前化学療法後,胸腔鏡下胸部食道亜全摘・胃管後縦隔経路再建を施行した.術後,多量の左胸水が貯留し胸水中のtriglyceride(以下TG)が高値を示したため,左乳糜胸水と診断した.保存的加療を開始したが奏効せず,漏出部位診断と塞栓効果を期待し鼠径リンパ節穿刺によるリンパ管造影を施行した.造影では,膵上縁付近で左上腹部にリピオドールの漏出部位が確認され,開腹による腹部リンパ管結紮術を施行した.再手術後,胸水量は減少し治癒しえた.食道癌術後の乳糜漏で保存的治療が奏効せずに再手術を考慮する際,腹部からの漏出も念頭に置き,正確な診断と適切な治療のためにリンパ管造影も考慮すべきである.

  • 須賀 悠介, 松本 尊嗣, 永井 元樹, 野村 幸博
    2022 年 83 巻 5 号 p. 866-870
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    74歳,女性.心窩部痛を契機に施行された血液検査で閉塞性黄疸の診断となり,当院内科を紹介受診した.造影CTにて膵頭十二指腸の脱出を伴う傍食道裂孔ヘルニアを認め,脱出に伴い肝十二指腸間膜が牽引され総胆管が食道裂孔により圧迫され閉塞していた.減黄のために経皮経肝胆管ドレナージを留置した後に,待機的に手術を行った.手術は腹腔鏡下に十二指腸と膵頭部を腹腔内に整復し,食道裂孔の縫合閉鎖とメッシュによる補強を行った.Toupet法による噴門形成術も追加した.術後経過は良好で第6病日に自宅退院し,術後3年経過した現在まで食道裂孔ヘルニアの再発や逆流性食道炎,嚥下障害,肝機能障害の出現を認めていない.

  • 貝羽 義浩, 八巻 英郎, 山谷 英之, 三浦 佑一, 高山 純
    2022 年 83 巻 5 号 p. 871-874
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は59歳,女性.健診で胃の異常を指摘され,前医を受診した.上部内視鏡検査で,胃体下部大彎に30mm大のIIc病変を認め,生検でgroup V (por+sig)のため手術目的に当科を紹介され,入院となった.手術は腹腔鏡下幽門側胃切除,D1郭清を行った.小網切離時に,肝胃間膜内に肝外側区域に流入する太い静脈を認めた.この静脈は胃小彎の血流を集め,肝胃間膜内を走行し,肝付着部に流入しており,いわゆる左門脈と考えられた.術後肝機能に異常は認められず,経過は良好で第13病日に退院した.左門脈は,まれな静脈の破格である.手術中に遭遇する肝に流入する太い静脈は,術中切離時に躊躇することが考えられる.腹腔鏡下胃切除を行う機会が増えてきており,円滑な手術遂行のために左門脈の知識は重要であると考えられた.

  • 山田 知弘, 森 俊明, 薮崎 紀充, 石山 聡治, 廣田 政志, 横井 一樹, 石岡 久佳, 中西 速夫
    2022 年 83 巻 5 号 p. 875-882
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は初診時67歳の男性で,胃もたれ感を主訴に受診した.上部消化管内視鏡検査で噴門部付近の不整な隆起性病変を指摘され,生検で低分化腺癌と診断された.胃全摘術,D2郭清を行った.病理組織学的所見から大細胞型胃内分泌細胞癌,pStage IIbと診断された.術後補助化学療法として,カルボプラチンとイリノテカン併用療法を施行した.術後2年で孤立性脳転移を認め,サイバーナイフによる定位放射線治療を施行した.その後も脳転移への治療を繰り返し施行した.術後3年10カ月ごろ,正常圧水頭症を併発したため,腰椎くも膜下腔-腹腔シャント術を施行した.術後4年2カ月で原病死した.経過中リンパ節および他臓器への転移は認められなかった.大細胞型胃内分泌細胞癌の孤立性脳転移という非常に稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 後藤 健太郎, 畑 啓昭, 花田 圭太, 松末 亮, 成田 匡大, 山口 高史
    2022 年 83 巻 5 号 p. 883-890
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    76歳,男性.23歳時に胃潰瘍のため幽門側胃切除術(Billroth-II法,Braun吻合)を施行された.腹痛を主訴に受診し,腸重積の診断で緊急開腹手術を施行した.Braun吻合部から肛側の腸管が逆行性に重積していた.用手整復後に腸管虚血所見がないこと,腫瘍などの器質的疾患がないことを確認し,手術を終了した.2年後に腸重積再発をきたし,緊急手術を行った.術中所見では前回手術所見と同様の逆行性腸重積で,用手整復後に腸管を観察すると明らかな腸管虚血所見はなく,腸管は明確な逆蠕動を起こしていた.再発予防のため嵌入していた腸管を腹壁に固定した.以後再発はない.過去の報告では,本症例以外にも胃切除後腸重積の再発例を認め,腸重積の発生にはペースメーカー異常などの機能的な要因が関与することから,胃切除後の腸重積では単純な整復だけではなく,重積の原因に応じて再発予防手技の付加も考慮すべきである.

  • 三田 和芳, 羽田 匡宏, 加藤 洋介, 尾山 佳永子, 小竹 優範, 原 拓央
    2022 年 83 巻 5 号 p. 891-897
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は39歳,女性.下腹部痛で受診し,腹部造影CTにて右側腹部に7cm大の単胞性嚢胞性病変を認め,嚢胞壁の造影効果を伴い,腸管膜に発生した嚢胞性腫瘍と診断した.血液検査ではCEA・CA19-9の上昇を認めた.腸管との連続性が否定できず,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.腫瘍と子宮・両側付属器との接点はなく,病理検査で嚢胞壁と腸管との連絡も認めなかった.嚢胞壁内側が中等度の核異型を伴う背の低い単層性の円柱上皮からなっていた.免疫組織学的にはCK7陽性,CK20陽性,CDX2陰性であり,回盲部腸管膜原発の粘液性嚢胞腺腫と診断した.また,CEA・CA19-9陽性であった.術後経過は良好で症状も消失し,腫瘍マーカーも低下した.術後半年で再発も認めていない.腸管膜原発の粘液性嚢胞腺腫は稀であり報告する.

  • 宮地 孟, 根本 洋, 山田 正俊, 針金 幸平, 去川 秀樹, 宮前 拓
    2022 年 83 巻 5 号 p. 898-902
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は79歳,男性.腹痛と発熱を主訴に来院し,CTで虫垂の腫大と回結腸動脈周囲リンパ節の腫大を認めた.急性虫垂炎と診断したが,炎症反応と腹部所見が軽度であったため,抗菌薬治療後の手術を予定した.1カ月後のCTで虫垂とリンパ節に変化はなく,虫垂癌を想定し腹腔鏡下回盲部切除術D3郭清を行い,最終的に虫垂原発MALTリンパ腫(Lugano分類II2期)と診断した.現在,術後経過観察中であるが,再発の所見は認めない.MALTリンパ腫は慢性炎症を背景に発症する低悪性度の悪性リンパ腫として知られる.消化管では胃に多くみられ,虫垂は邦文・英文で14例の報告と稀である.貴重な症例と考え報告した.

  • 柴田 信博, 中嶋 啓雄, 坂井 昇道, 西澤 恭子
    2022 年 83 巻 5 号 p. 903-907
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は,背部痛で他院受診中であった72歳の男性.背部痛が増強してきたため,当院へ緊急紹介受診した.救急外来での造影CTで,第4・5腰椎間腔の化膿性脊椎椎間板炎(vertebral pyogenic spondylodiscitis:以下VPSD),全周性の下行結腸癌,慢性解離性腹部大動脈瘤(Stanford B型)と診断された.また,来院時の動脈血培養検査で緑膿菌が検出され,大腸癌からの血行感染によるVPSDと診断した.絶食とベッド上での安静,疼痛制御,降圧剤による血圧適正制御,抗菌薬経静脈投与を行いながら,入院20病日に完全血管内手術,26病日に経肛門的イレウス管挿入による緊急減圧を行い,三期分割手術を行った.大腸癌に対しては治癒切除が行われ,VPSDは後遺症を残すことなく抗菌薬治療で治癒した.患者は治療後1年経過した現在,無再発生存中で通常の社会生活を送っている.VPSDと緑膿菌々血症を呈した大腸癌のまれな1例を報告し,感染機序について文献的考察を行った.

  • 大江 崇史, 北角 泰人, 谷浦 隆仁, 杉本 真一, 佐藤 仁俊
    2022 年 83 巻 5 号 p. 908-912
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は81歳の女性で,5年前に他院で経肛門的直腸脱手術を施行されるも,直腸脱は持続していた.今回,排便時に腸管脱出と出血があり,徐々に腹痛,嘔吐も出現してきたことから,当院救急外来を受診した.肛門から小腸が脱出し,その2カ所で断裂を呈していたため,緊急手術を施行した.脱出した小腸を切除し,口側と肛門側断端を脱出した直腸の内腔へ還納した.直腸脱は嵌頓しており,還納困難であった.肛門は狭く,他院での手術はThiersch法と思われた.会陰部に切開を加え,縫縮された肛門輪を切開することで直腸脱を還納した.続いて開腹したところ,腹腔内に便による汚染はなく,直腸前壁に径3cm大の穿孔があり,同部位に小腸が嵌入していた.吻合は機能的端端吻合とした.直腸は穿孔部を含めて切除し,単孔式人工肛門を造設した.術後,RBC2単位を輸血した.また,骨盤膿瘍に対してCTガイド下ドレナージを施行し,第40病日に退院した.

  • 瀬尾 雄樹, 西 雄介, 杉浦 清昭, 岸田 憲弘, 戸倉 英之, 高橋 孝行, 清水 和彦
    2022 年 83 巻 5 号 p. 913-918
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は69歳,男性.S状結腸癌に対して腹腔鏡下S状結腸切除術,D3リンパ節郭清を施行した.その切除検体の病理組織検査の結果,253番のリンパ節に少数の異型細胞を認め,免疫染色でneuroendocrine tumor(以下,NET)の転移と診断された.そのため,NETの原発腫瘍検索目的に大腸内視鏡検査を施行したところ,S状結腸切除後の吻合部よりも肛門側に5mm大の粘膜下隆起を認め,組織検査でNETと診断された.CTでは明らかな遠隔転移の所見を認めず,直腸NETの根治切除目的に腹腔鏡下超低位前方切除術を施行した.病理組織検査の結果,8mm以下の粘膜下腫瘍を23個認め,免疫染色ではクロモグラニン,シナプトフィジンがいずれも陽性であり,多中心性のNET(G2)と診断した.また,所属リンパ節は15個中11個がNETの転移陽性であった.術後3年無再発にて外来で経過観察中である.

  • 吉村 知紘, 横山 省三, 藤田 洋一, 松村 修一
    2022 年 83 巻 5 号 p. 919-924
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    人工肛門閉鎖後にbacterial translocation(BT)によるものと考えられる敗血症を生じた1例を報告する.症例は71歳,男性.下部直腸癌に対して腹腔鏡下超低位前方切除術および回腸人工肛門造設術を施行した.2カ月後に,回腸人工肛門閉鎖,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術後3日目より食事を再開した.術後6日目に敗血症性ショックを発症した.精査を行ったが,明らかな熱源は特定できなかったため,BTによる敗血症性ショックと考えた.抗菌薬やγグロブリン製剤,血漿製剤の投与により治療開始後4日に改善した.人工肛門閉鎖後にBTによるものと考えられる敗血症性ショックを生じた症例を経験した.人工肛門閉鎖後に敗血症を認めた場合,縫合不全,尿路感染など他の原因が排除できる時には,BTも考慮する必要があると考えられる.

  • 室田 昂良, 山名 一平, 大石 純, 谷 博樹, 大谷 博, 長谷川 傑
    2022 年 83 巻 5 号 p. 925-930
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,男性.肛門痛を主訴に近医を受診し,肛門部腫瘤を指摘され当院へ紹介受診となった.肛門縁12時方向から会陰にかけて60×25mm大の硬結を伴う皮膚腫瘤を認め,CTでは造影効果のある充実性腫瘤像を呈していた.生検でMichaelis-Gutmann body(以下MG小体)を有する組織球の集簇を認めマラコプラキアの診断となり,腫瘤辺縁を切離ラインとし,切除した.術後7カ月後に右鼠径部の腫瘤を主訴に再受診し,CTで前回の肛門部に類似した充実性腫瘤像を認めた.腫瘤は自壊し排膿を認め,確定診断とQOL改善の目的で右鼠径部腫瘤摘出術を行った.病理組織検査でAB-PAS染色および鉄染色で陽性所見を示すMG小体を多数認め,マラコプラキア再発の診断に至った.本疾患が肛門部に発症すること自体が稀であり,これまでに本邦で異所性再発した報告は無い.今回,鼠径部に異所性再発した肛門マラコプラキアの症例を経験したので報告する.

  • 伊藤 貴明, 新井 利幸, 植村 則久, 塚原 哲夫, 山下 浩正, 雨宮 剛
    2022 年 83 巻 5 号 p. 931-936
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)はCOVID-19ワクチン接種の稀な合併症として報告されている.

    症例は50歳,女性.2回のCOVID-19ワクチン接種の2週間後に過多月経で近医を受診し,血小板減少を指摘され当院を紹介.血小板数1,000/μL,網状赤血球数は増加し,赤血球数は減少.骨髄検査では巨核球は軽度増加のみが指摘された.Helicobacter pylori感染を認めなかった.造影CTでは脾腫や側副血行路を認めなかった.ITPと診断しステロイド治療(デキサメサゾン大量療法40mg/dayおよびプレドニゾロン25mg/day)を実施したが,血小板数は2,000/μL,5,000/μLで効果が認められず,脾臓摘出の方針とした.術前にガンマグロブリン(20g/day 5日間)とトロンボポエチンが投与されたが血小板数が23,000/μLであったため,血小板輸血後に腹腔鏡下脾臓摘出術を実施し,術中・術後合併症なく経過した.術後2カ月で血小板数は75,000/μLで安定した.

    COVID-19ワクチン接種後のITPに対し,脾臓摘出術が有効であった1例を経験したので報告する.

  • 中平 理恵, 田村 一富
    2022 年 83 巻 5 号 p. 937-940
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    超音波凝固切開装置は超音波振動により凝固と切開が同時に行える手術器具で,腹腔鏡手術で多用されている.その欠点は先端に大きな力がかかるため,使用状況によっては先端振動部分の破断が生じることである.

    今回われわれは,腹腔鏡下子宮筋腫核出術において子宮後壁筋層を切開している際に,超音波凝固切開装置がエラーモードになり使用できなくなった.先端振動部分の一部の破断が確認され,体内外を探索したが破片を発見できなかった.術中透視を使用してかろうじて発見し,体外に摘出することができた.術後の調査で,破断部に一致して破断前にできたと思われる小さな損傷が指摘され,本事例の原因と考えられた.本事例から考えられる超音波凝固切開装置の使用上の注意点と脱落した破片を回収する際の工夫を,考察を加えて報告する.

  • 市野 平之伸, 岡田 禎人, 太平 周作, 田口 泰郎, 酒徳 弥生, 奥田 賢司
    2022 年 83 巻 5 号 p. 941-945
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は73歳,女性.嘔吐と腹痛を主訴に受診.腹部造影CTで小腸の拡張と左卵巣腫大と腹膜,腸間膜に多発する結節を認めた.PET/CTで左卵巣や多発結節に集積を認めたが,膵臓への集積は認めなかった.左卵巣癌の腹膜転移による腸閉塞の診断で手術を施行した.術中所見は,左卵巣腫大と大網・腹膜・腸間膜に多発結節を認めた.Treitz靱帯付近の空腸腸間膜と回腸の漿膜に結節を認めた.子宮両側付属器,大網を摘出し,結節を認めた空腸と回腸をそれぞれ切除し吻合した.病理検査で結節のすべてから膵組織由来の腺癌を認めた.両側卵巣に原発性卵巣癌と膵組織由来腺癌の播種の衝突を認めた.最終診断は,腹膜播種と転移を伴う異所性膵癌と原発性卵巣癌の重複癌とした.医学中央雑誌で「異所性膵癌」かつ「重複癌」で検索したところ,報告は1例のみであった.非常に稀な異所性膵癌に両側卵巣癌を伴った重複癌を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

  • 松本 恭平, 上野 昌樹, 速水 晋也, 宮本 篤, 川井 学, 山上 裕機
    2022 年 83 巻 5 号 p. 946-951
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    大網に発生する炎症性肉芽腫をBraun腫瘤と呼び,異物を核とした炎症反応によることが多い.術前検査にて,単発腹膜再発と診断し切除を施行したが,病理診断ではBraun腫瘤であった1例を報告する.

    症例は74歳,女性.横行結腸癌・肝S6転移の術後で,定期検査のFDG-PET/CTで新規肝S4転移と横行結腸吻合部近傍にFDG集積を伴う一部陥凹した結節像が同定された.新規肝転移・単発腹膜再発の診断にて,腹腔鏡下肝S4切除・腹膜結節摘出を施行した.腹膜結節の病理組織学的所見では内部に縫合糸を認め,それを取り囲むように炎症細胞が浸潤したBraun腫瘤の診断であった.

    Braun腫瘤は過去に悪性疾患の手術歴がある場合,腹膜・リンパ節再発との鑑別を要するが,困難であることが多い.FDGの集積を認めたとしても,発生部位と過去の手術部位との関連性の有無・異物を核とするような結節の形態であるかどうかを考慮して,Braun腫瘤の可能性も考えておく必要性がある.

  • 土佐 明誠, 安次富 駿介, 柴田 信博, 中嶋 啓雄, 坂井 昇道, 西澤 恭子
    2022 年 83 巻 5 号 p. 952-956
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は,呼吸困難のため救急車搬送された57歳の女性.来院時,室内気吸入時の動脈血酸素分圧が46.1mmHgと急性呼吸不全の状態であった.胸腹部CT画像で大量の右胸水,巨大な子宮筋腫と腹水があり,pseudo-Meigs症候群と診断した.この症例は,試験開腹所見,子宮付属器摘出術,血清CA125値の推移,腹水セルブロックによる細胞診断から原発性腹膜癌(PPC:II期)による胸水貯留と診断訂正された.子宮摘出後,腹膜癌治療ガイドラインに従い全身化学療法を継続中であり,24カ月後の現在,CA125値は正常域を維持しており,完全寛解中である.II期のPPCは,化学療法によく反応し治癒の可能性もあるが,画像診断には限界がある.CA125高値の巨大子宮筋腫では,視触診による腹膜散布状の白色結節の有無についての,専門医による術中審査が必要である.

  • 川上 拓哉, 橋本 和晃, 丸山 祐一郎, 冨﨑 真一, 井原 司
    2022 年 83 巻 5 号 p. 957-962
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は51歳,男性.2020年10月,右鼠径部膨隆と疼痛で近医を受診し,右鼠径ヘルニアの疑いで当院へ紹介となった.当院でのCTでは右外鼠径ヘルニアを認め,虫垂がヘルニア嚢内に脱出しており,Amyand's herniaと診断された.手術は全身麻酔下に仰臥位にて腹腔鏡下に虫垂切除とtrans-abdominal pre-peritoneal repair;TAPPを一期的に施行した.術後半年経過しているが,合併症やヘルニア再発なく経過している.

    本邦でのAmyand's herniaのヘルニア修復法は9割以上が鼠径切開法であるが,近年では腹腔鏡アプローチで先行して腹腔内観察を行い,虫垂,ヘルニアの処置を決定するとの報告も見られる.現在までに腹腔鏡下に虫垂切除とTAPPによるヘルニア修復を同時に行った症例は,自験例を除いて本邦で1例,国外で1例のみであった.今回われわれは,Amyand's herniaに対して腹腔鏡下虫垂切除とTAPPを同時に施行し良好な結果を得た.このような報告例は少なく,若干の文献的考察を加えて報告する.

国内外科研修報告
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