2009 年 70 巻 9 号 p. 2844-2848
患者は51歳,男性.心窩部痛を主訴に救急受診した.心窩部に圧痛を認めたが,反跳痛や筋性防御を認めなかった.心窩部痛が増悪するため単純CTを撮影した.横隔膜下と膀胱直腸窩に血性腹水を認めたため,MDCTによる造影CTを撮影した.CT angiographyを再構成したところ,左胃大網動脈に9mm大の動脈瘤を認めた.この破裂による腹腔内出血と診断し,診断治療目的に血管造影を施行した.動脈瘤への流入動脈を同定し,流入動脈の前後をコイルで挟み込むように塞栓した.その後貧血の進行・腹部症状なく経過し,再度撮影した造影CTで動脈瘤は描出されないため退院となった.術後2カ月目に行った造影CTで,動脈瘤は器質化されていた.
左胃大網動脈瘤破裂に対しCT angiographyが診断に有用であり,動脈塞栓術のみで治療を行った症例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.