日本臨床外科学会雑誌
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症例
Abdominal cocoonを原因とした絞扼性イレウスの1例
井上 悠介藤田 文彦宮崎 健介望月 聡之虎島 泰洋木下 直江兼松 隆之
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キーワード: abdominal cocoon
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2010 年 71 巻 11 号 p. 2868-2871

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抄録

はじめに:abdominal cocoon(AC)とは,小腸をはじめとする腹腔内臓器が,繭状の繊維性の被膜に包まれる疾患である.今回,われわれはACが原因で絞扼性イレウスを生じた1例を経験した.症例:73歳,男性.HTLV-I(Human T-lymphotropic VirusI)関連脊髄症(HAM),腹腔鏡下胆嚢摘出術の既往あり.突然の腹痛により発症し,イレウスの診断で当院へ紹介となった.腹部造影CTで,小腸間膜の回転様の変化と小腸の血流障害を認め,内ヘルニアによる絞扼性イレウスの診断で,緊急手術となった.手術所見では,横行結腸間膜後葉から,下行結腸間膜,後腹膜,小腸間膜に連続する袋状となった腹状構造を形成しており,その中に小腸が嵌頓して血流障害を生じていた.手術では壊死を生じた小腸を部分切除し,さらに腹状構造物も開放させ,可及的に切除し手術を終了した.術後経過は良好であった.考察:ACは原因不明の比較的稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 2010 日本臨床外科学会
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