日本臨床細胞学会雑誌
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子宮付属器に発生した悪性腹膜中皮腫の1例
平井 康夫福田 耕一藤本 郁野山内 一弘荷見 勝彦増淵 一正坂本 穆彦都竹 正文平田 守男稲葉 憲之高見沢 裕吉
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1986 年 25 巻 6 号 p. 1080-1085

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抄録

50歳, 女性の子宮付属器に発生した悪性腹膜中皮腫を経験したので, 細胞所見, 組織所見について報告する. 患者は卵巣癌を疑われ開腹手術をうけた. 超手拳大の腫瘍が付属器に限局してみられ, 単純子宮全摘術, 両付属器切除, 大網部分切除術が施行された. 腫瘍の捺印細胞診では, 上皮性の結合を示すやや小型の腫瘍細胞と, 散在性に出現する非上皮性形態を示す大型の腫瘍細胞が混在して認められ中胚葉性混合腫瘍を思わせた. 術前の腹水細胞診でも紡錘形の胞体をもつ異型細胞をごく少数認めたが, 確診はできなかった. 組織学的には, 付属器の漿膜面に限局して, 管状, 乳頭状ないし髄様構造をもつ腫瘍が認められたがはっきりした非上皮性部分はなく, 限局性, 上皮型の悪性腹膜申皮腫と診断された. PAS染色陰性, Alcian blue染色で一部陽性となり, これはhyaluronidase処理で消失した. 電顕では細胞の管腔面や細胞間隙腔に細長い微絨毛が多数認められた. 免疫組織化学的に各種腫瘍マーカーの染色を試みたが, ヒトケラチン蛋白, epithelialmembrane antigen, CA125で陽性所見が得られ, carcinoembryonic antigen (CEA) は陰性であった.

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