目的:当院の子宮頸がん検診における子宮頸部細胞診 ASC-H の割合は,ASC 全体の 13%と高い.それを改善する方法を検討するため,組織診実施時に細胞診 ASC-H と判定した症例の経過中での組織診を照合し,当院の ASC-H 判定の現状を調査した.
方法:国際医療福祉大学三田病院で子宮頸部細胞診と同日採取の組織生検(同日生検)を実施し,細胞診判定 ASC-H で組織診の追跡をした 47 例を対象に,同日生検,経過中最も強い組織診断(最高病変)および最終の病理診断(最終診断)の組織診断別の割合を,ASC-H の判定根拠とした異型細胞の未熟化生細胞,中~深層型扁平上皮細胞,萎縮扁平上皮細胞別に検討した.
成績:同日生検 → 最高病変 → 最終診断の CIN2 以上の割合は,未熟化生細胞異型群 14.3% → 71.4% → 42.9%,中~深層型扁平上皮細胞異型群 65.4% → 92.3% → 76.9%,萎縮扁平上皮細胞異型群 85.7% → 85.7% → 85.7%であった.
結論:今回の検討症例では,ASC-H の判定根拠となった異型細胞の種類によりその後の経過や転帰に違いがあることがわかり,検診標本でも異型細胞別に検討を行うことは一考に値する.
背景:腎細胞癌との鑑別を要した腎盂原発肉腫様尿路上皮癌(sarcomatoid urothelial carcinoma:SUC)の 1 例を経験したので報告する.
症例:70 歳代,男性.CT 検査にて左腎上極に 61 mm 大の腫瘤,リンパ節転移,多発骨転移および多発肺転移を認め,左腎盂癌が疑われた.喀痰細胞診では転移性腎細胞癌と診断され,後日,自然尿が提出された.細胞像は類円形核で明瞭な核小体を有する大型の腫瘍細胞が散見された.ほとんどが好酸性の細胞質を有する形質細胞様細胞であり,一部で紡錘形核を示す肉腫様細胞を認めた.組織像では広範な肉腫様腫瘍細胞の増生がみられた.一部では高異型度尿路上皮癌や形質細胞様の像がみられた.免疫組織化学的検索では,p63,CD10,Vimentin,CK 7 が陽性,PAX-8 陰性であった.腎盂原発 SUC と診断された.
結論:喀痰細胞診にて腎細胞癌との鑑別を要する症例であったが,p63 や PAX-8 の免疫組織化学染色所見や典型的腎細胞癌成分を欠くことより,腎盂原発 SUC と診断された.
背景:リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)は,平滑筋様細胞(LAM 細胞)が肺や体軸リンパ節で増殖し,肺で多発性の囊胞を発生させる,非常にまれな疾患である.今回われわれは,リンパ脈管筋腫症の 1 例を経験したので報告する.
症例:患者は 20 歳代,女性.腹部膨満感と朝のみに出現する胸痛を訴えた.胸腹部 CT・MRI にて,両側胸水と腹水の貯留,後腹膜の囊胞形成が認められた.また,肺に数 mm 程度の小囊胞を多数認めた.腹・胸水および後腹膜の囊胞状病変内容液の細胞診検査を実施し,細胞像とセルブロックを用いた免疫組織化学染色により LAM 細胞を同定した.後腹膜リンパ節針生検でも LAM 細胞が確認され,臨床所見と併せて LAM の診断に至った.
結論:特徴的な画像所見を呈する患者の場合,胸水や腹水中の LAM 細胞クラスターを同定することで LAM の診断が可能である.侵襲的な組織検査を回避しうるため,本疾患の細胞所見や診断に必要な免疫組織化学染色に精通することが重要である.
背景:卵巣 yolk sac tumor(YST)由来の細胞が腹水に出現することはまれである.今回われわれはメイギムザ(MG)染色で脂肪顆粒様空胞を認めたので報告する.
症例:40 歳代,女性.左卵巣腫瘍,腹水を指摘,当院婦人科へ紹介受診となった.画像検査で左卵巣の充実性腫瘤(卵巣癌ⅢC 期疑い)より審査腹腔鏡(大網部分切除術)を実施,術中腹水細胞診も提出された.大網検体の病理組織像と血清α-fetoprotein 高値より卵巣 YST の確定診断となった.腹水細胞診の MG 染色で脂肪顆粒様空胞が細胞質や核に多数認められた.
結論:腹水細胞診の MG 染色で脂肪顆粒様空胞を観察した際に卵巣 YST を考える必要がある.
背景:囊胞腺癌は囊胞形成と乳頭状増殖を特徴とするまれな唾液腺悪性上皮性腫瘍である.今回,顎下腺原発囊胞腺癌の症例を経験したので報告する.
症例:60 歳代,男性.2 年前に右顎下部の腫脹を自覚.近医にて囊胞性病変経過観察中であったが,緩やかに増大傾向を示すため当院紹介受診となった.穿刺吸引細胞診検査にて腺癌が疑われ,右顎下腺摘出術にて囊胞腺癌と診断した.細胞診では不規則重積性を示す乳頭状上皮集塊が散在性に出現していた.細胞質はレース状で一部空胞を有しており,核は偏在し,不整形で核小体腫大を認めた.
結論:唾液腺囊胞性病変において腺癌を疑う所見が得られた際には囊胞腺癌も鑑別疾患に挙げることが重要である.