園芸学会雑誌
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高温時の空気湿度と土壌水分がキュウリの葉緑素蛍光発生に及ぼす影響
小田 雅行李 智軍辻 顕光市村 一雄佐々木 英和
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1993 年 62 巻 2 号 p. 399-405

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抄録

キュウリ'南極2号'を異なる水蒸気飽差と土壌水分条件で高温 (46°C) 処理し, 葉緑素蛍光を指標として, 高温によるストレスまたは障害に及ほす空気中および土壌中の水分の影響を検討した。
対照 (25°C) と比較して, 42°および44°Cに2~3時間遭遇させて処理したキュウリの葉緑素蛍光強度は, ほとんど低下しなかったが, 46°Cでは顕著に低下した。しかし, 処理後12日では生育への影響は認められなかった。気温46°Cで処理中の葉温は, 低湿度 (水蒸気飽差4.8±0.5kPa) では気温よりも約5°C低く, 葉緑素蛍光強度は高く保たれた。これに対し, 高湿度 (水蒸気飽差0.3±0.3kPa) では葉温が気温とほぼ同じで, 葉緑素蛍光強度は対照 (25°C)の約5%まで低下したが, 処理後2日間で55%程度まで回復した。しかし, その後の葉緑素蛍光強度の回復はわずかであり, 処理後5日で対照 (25°C) の約70%にとどまった. 処理後12日の生育も, 葉緑素蛍光強度と同様の結果であった.
高温 (46°C) 処理時の土壌の乾燥および湿潤の影響を比較すると, 乾燥区では高温処理開始から3時間後には1時間後と比較して蒸散速度が小さく, 葉温が高くなり, 萎凋が認められて葉緑素蛍光強度が著しく低下した。そして, 蒸散速度は葉緑素蛍光強度と正の相関があった。
以上の結果から, キュウリは, 土壌水分が十分にある場合には, 水蒸気飽差に比例して蒸散速度が増大し,葉温が低下して高温の影響を受けにくくなるが, 土壌水分が不足しやすい乾燥土壌条件で水蒸気飽差が大きいと, 根からの吸水量が蒸散量に及ばなくなり, 植物体に水分ストレスが生じ, 葉温の低下が阻害されて一層大きなストレスまたは障害を受けることが明らかになった。また, 葉緑素蛍光の測定によって光合成能からみた高温ストレスまたは障害を検出できることが明らかになった。

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