園芸学会雑誌
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イチゴ果実の糖・有機酸の含量・組成およびその収穫期間を通じた安定性と食味官能評価との関係
曽根 一純望月 龍也野口 裕司
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2000 年 69 巻 6 号 p. 736-743

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抄録

イチゴの国内品種29点と外国品種14点を用い促成および露地栽培における糖・有機酸の含量・組成を調査し, 食味官能評点と糖・有機酸の含量・組成ならびにこれらの収穫期間を通じた変動係数との関係を検討した.1) 食味官能評点の優れる品種群は, 劣る品種群と比較して全糖含量, 糖酸比およびSuc/有機酸比率が有意に高く, 全有機酸含量が有意に低かった.また, 食味官能評点の変動係数が小さい品種群は, 高い品種群と比較して糖・有機酸の含量・組成に違いはみられなかったが, 全糖含量, Suc比率, Glu比率および収穫期間を通じたCit比率の変動係数が有意に小さかった.2) 食味官能評点はSuc/有機酸比率およびCit比率の変動係数を説明変数とする重回帰式により比較的良く説明され, 糖酸比, 特にSuc含量が高く, 有機酸組成の収穫期間を通じた安定性の高い品種ほど食味評価が優れると考えられた.また, 食味官能評点の変動係数はGlu比率の変動係数, 全糖含量の変動係数およびCit比率の変動係数を説明変数とする重回帰式により比較的よく説明され, 全糖含量および糖・有機酸の組成の安定性が高い品種ほど収穫期間を通じた安定性は優れる傾向がみられた.3) これらのことから, 食味が優れ, なおかつ収穫期間を通じた食味評価の安定性の高い品種を選抜するためには, 糖酸比, 特にSuc比率が高く, 全糖含量および糖・有機酸の組成の収穫期間を通じた安定性が高い系統を選抜していくことが有効と考えられた.

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