Journal of Pesticide Science
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炭酸水素ナトリウムのカンキツ貯蔵病害防除効果について
有本 裕本間 保男見里 朝正
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1977 年 2 巻 2 号 p. 163-167

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抄録

炭酸水素ナトリウムのカンキツ貯蔵病害に対する効果を付傷接種および普通貯蔵において検討し, 以下のような結果を得た.
果実を0.25Mの炭酸水素ナトリウム溶液中に浸漬したのち付傷し, P. digitatum の胞子を接種した場合, 本菌による緑カビ病はまったく発生しなかった. thiophanate の700ppm溶液に浸漬した場合には, 21%の果実に緑カビ病の発生がみられた. また, 果実に付傷したのち薬液に浸漬し, 接種した場合, 炭酸水素ナトリウム区では緑カビ病はまったく発病しなかったが, thiophanate 区では11%の果実に緑カビ病が発生した. 果実に付傷後, 接種し, 24時間湿室に保ち感染させたのち, 薬液に浸漬した場合, 炭酸水素ナトリウム区では緑カビ病の発生が68%抑制された. thiophanate 区では18%の抑制であった. また, 炭酸水素ナトリウムは thiophanate には及ばなかったが, P. itaricum による青カビ病の発生をも抑制した. さらに, 5週間にわたる常温貯蔵において, 炭酸水素ナトリウムは緑カビ病の発生をほとんど完全に抑制した. thiophanate 区では約25%, 無処理区では約50%の果実に緑カビ病が発生した. 炭酸水素ナトリウムは緑カビ病以外の貯蔵病害 (軸腐れ病, 黒腐れ病など) の発生をも抑制し, thiophanate 区よりもまさった.

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© 日本農薬学会
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