日本泌尿器科学会雑誌
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原著
神経温存前立腺全摘術後の排尿·性機能障害に対するメコバラミンの効果
松下 真史中川 晴夫並木 俊一池田 義弘海法 康裕川守田 直樹伊藤 明宏石戸谷 滋人斎藤 誠一荒井 陽一
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2009 年 100 巻 1 号 p. 7-11

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抄録
(目的)現在,神経温存前立腺全摘術が多く行われているが術後には尿失禁や性機能障害が認められる.メコバラミンは末梢性神経障害に対し使用され,神経回復の促進効果も認められている.今回,我々は神経温存前立腺全摘術後の排尿·性機能障害に対するメコバラミンの効果について検討した.
(対象と方法)対象は神経温存前立腺全摘を施行した患者54例(年齢50~75歳,中央値63歳)に対し,年齢,PSA,神経温存(片側,両側)の3項目を割り付け調整因子としA群:神経温存前立腺全摘+メコバラミンによる治療,B群:神経温存前立腺全摘のみとして両群27例ずつに前向きランダム化比較試験を行った.A群はメコバラミン500μgを1日3回,6カ月間内服させた.UCLA-PCIを用いて術前,術後3,6,12カ月目の排尿·性機能障害を評価した.
(結果)術後3カ月目における排尿機能では有意差は認めないもののメコバラミン投与群で改善している傾向が見られたが,術後12カ月目では両群ともほぼ同様な値となった.性機能については経過期間を通じて有意な差は見られなかった.
(結論)術後において性機能,排尿機能ともに両群間で統計学的有意差を認めなかったが,術後3カ月目においてはメコバラミン投与群の方で排尿機能の改善傾向が観察された.メコバラミンの術後早期の排尿機能回復に対する有用性については大規模なランダムか試験が必要である.
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© 2009 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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