日本泌尿器科学会雑誌
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原著
一施設における前立腺癌に対する前立腺全摘除術症例の臨床的検討
石田 亮小林 弘明吉田 真理小川 将宏塩田 隆子錦見 俊徳山田 浩史横井 圭介
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2009 年 100 巻 6 号 p. 615-624

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抄録
(目的)一施設における根治的前立腺全摘除術症例を臨床的に検討する.
(対象と方法)1991年1月から2005年12月に行った, 臨床病期T1-3N0M0の前立腺全摘術症例, 406例を解析対象とした.3年おきに経時的な患者背景の変化を調べた.癌特異生存率等の生存率の解析はKaplan-Meire法を用い, 症例間の比較はLog rank検定を使用した.年齢, PSA, 臨床病期, Gleason score, 術前内分泌治療の有無を術前因子とし, 多変量解析にて限局性前立腺癌の割合, 術後予後との関連を検討した.手術に伴う合併症を調査し, 臨床病期間で比較した.
(結果)手術件数は経時的に増加し, 高リスク症例や臨床病期T3症例の割合は低下傾向であった.経過観察期間は中央値55カ月, 年齢は中央値69歳であった.10年癌特異生存率はpT0/2 100% pT3a 92% pT3b 81% pN+ 67%であった.PSA, 臨床病期, Gleason score, 術前内分泌治療は限局性前立腺癌の予測因子であった.またPSA, 臨床病期は癌死に対する予後因子であった.合併症は臨床病期T3症例での手術時間, 術中出血量に有意差を認めた.
(結語)近年の傾向として明らかに手術件数は増加傾向にあり, 高リスク症例や臨床病期T3症例の割合は低下傾向にある.術前内分泌治療により, 限局性前立腺癌の割合は優位に改善したが, 予後の改善は認めなかった.
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© 2009 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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