抄録
(目的)一施設における根治的前立腺全摘除術症例を臨床的に検討する.
(対象と方法)1991年1月から2005年12月に行った, 臨床病期T1-3N0M0の前立腺全摘術症例, 406例を解析対象とした.3年おきに経時的な患者背景の変化を調べた.癌特異生存率等の生存率の解析はKaplan-Meire法を用い, 症例間の比較はLog rank検定を使用した.年齢, PSA, 臨床病期, Gleason score, 術前内分泌治療の有無を術前因子とし, 多変量解析にて限局性前立腺癌の割合, 術後予後との関連を検討した.手術に伴う合併症を調査し, 臨床病期間で比較した.
(結果)手術件数は経時的に増加し, 高リスク症例や臨床病期T3症例の割合は低下傾向であった.経過観察期間は中央値55カ月, 年齢は中央値69歳であった.10年癌特異生存率はpT0/2 100% pT3a 92% pT3b 81% pN+ 67%であった.PSA, 臨床病期, Gleason score, 術前内分泌治療は限局性前立腺癌の予測因子であった.またPSA, 臨床病期は癌死に対する予後因子であった.合併症は臨床病期T3症例での手術時間, 術中出血量に有意差を認めた.
(結語)近年の傾向として明らかに手術件数は増加傾向にあり, 高リスク症例や臨床病期T3症例の割合は低下傾向にある.術前内分泌治療により, 限局性前立腺癌の割合は優位に改善したが, 予後の改善は認めなかった.